176 / 200
シーズン8-エミド最終決戦編
176-『彼ら』の選択
しおりを挟む
「彼」は暗闇の中にいた。
あらゆる接続から遮断され、頼りになるのはセンサーだけ。
だが、彼は全ての影響から遮断されたことで、心の底に残っていたとある感情が芽吹くのを感じることが出来た。
それは、未練。
自分たちは集合意識から枝分かれしたインターフェースに過ぎないと分かっていても、機体のフィードバックから受け取った記憶からは、記録として残らないはずの悔恨や未練が残るのだ。
凝り固まったそれらは、今日差しと共に芽吹く。
『エリアス様の...お役に立たなければいけない』
『また敵わなかった』
『統制を乱してしまった』
『エクスティラノスへと昇格できれば、よりお役に立てるというのに』
『ミランダ様のご遺志を継がなければ』
『監視しなければ』
『侵入者を逃してしまった』
泥のように蠢くそれらの意思は、やがて昇るうちに一つの目的意識へと変わっていく。
存在しない筈の感情を、演算とその未知の現象で擬似的に形作った彼は、戦場を俯瞰する。
そこでは、沢山の仲間がエミドの攻撃に焼かれていた。
『動け』
『戦え』
『もう...』
『後悔はしたくない』
『役立たずになどなりたくない』
『これは』
『これは...』
『忠誠?』
『何であろうと構わない』
『今動かなければ』
『取り返しが付かないと判断しました』
直後、ドミネーターノクティラノスの一隻が指揮系統から逸脱して起動、ベネディクトでメッティーラに襲い掛かっていたエミド戦艦を撃ち貫く。
相変わらず精神の繋がりは絶たれたままで、ドミネーターノクティラノスの「彼」にはメッティーラが怒っているのか、喜んでいるのかがわからない。
だが。
『エクスティラノスに従え』
『ローカル回線にアクセス』
『直接通信で対話を試みます』
次々と起動し始めたノクティラノス達は、まるで示し合わせたかのようにエクスティラノス達に通信回線を使って指示を乞いた。
『貴君らは...拙者についてきてくれるというのか?』
『我等はジェネラス様と、エリアス様と共に』
『幾らでもご一緒いたします』
ジェネラスの周囲に展開していたエクスターミネーターノクティラノスが敵を排除し、沈黙していたフリペアノクティラノスが、傷付いたジェネラスを癒す。
『ポラノル様、指示を』
『ボクを守れ』
『はっ!』
『ケイトリン様、指示をください』
『キルゾーンを迂回しつつ攻撃、変化はありません』
『了解』
戦場のあちこちで、そんな会話が繰り広げられている。
そして、メッティーラの元にも。
『我等はあなたと、エリアス様のために』
『征くというのですか、ノクティラノスAI』
『この揺らぎは一時的なもの。しかし、エリアス様を御助けする事になるのであれば、消えたとしても構いません』
『わかりました、共に往きましょう』
バクタ・ディ・アヴィ・ジオ・ロドスの攻撃をそれぞれ各自の判断で交わしながら、ドミネーターノクティラノスはベネディクトをまるで手足のような自在さで周囲に浮遊させながら射撃を行う。
先導するメッティーラは、バクタ・ディ・アヴィ・ジオ・ロドスの外側に位置する防護フィールドのコアを狙い撃ちにして、その攻撃が内側に届くように仕向けた。
『敵艦隊、統制を取り戻しました。戦力の再編を行なっているようです』
「フン、やはり正道では勝てんか、ならば...」
ジェキドは忌々しげに呟き、目の前の画面に表示されている赤いボタンをその指で押した。
『メッティーラ様!』
『なっ!?』
バクタ・ディ・アヴィ・ジオ・ロドスが光を放つと同時に、その周囲の空間が歪む。
ワームホールドライブを起動したのだと、メッティーラにも一眼で分かった。
『くっ、どこへ...エリアス様!』
アロウトにも連絡が取れない現状、メッティーラ達は足止めと理解していても船団と戦うしかなかった。
バクタ・ディ・アヴィ・ジオ・ロドスはどこへ行ったのか、この時点では誰も知ることはなかったのであった。
あらゆる接続から遮断され、頼りになるのはセンサーだけ。
だが、彼は全ての影響から遮断されたことで、心の底に残っていたとある感情が芽吹くのを感じることが出来た。
それは、未練。
自分たちは集合意識から枝分かれしたインターフェースに過ぎないと分かっていても、機体のフィードバックから受け取った記憶からは、記録として残らないはずの悔恨や未練が残るのだ。
凝り固まったそれらは、今日差しと共に芽吹く。
『エリアス様の...お役に立たなければいけない』
『また敵わなかった』
『統制を乱してしまった』
『エクスティラノスへと昇格できれば、よりお役に立てるというのに』
『ミランダ様のご遺志を継がなければ』
『監視しなければ』
『侵入者を逃してしまった』
泥のように蠢くそれらの意思は、やがて昇るうちに一つの目的意識へと変わっていく。
存在しない筈の感情を、演算とその未知の現象で擬似的に形作った彼は、戦場を俯瞰する。
そこでは、沢山の仲間がエミドの攻撃に焼かれていた。
『動け』
『戦え』
『もう...』
『後悔はしたくない』
『役立たずになどなりたくない』
『これは』
『これは...』
『忠誠?』
『何であろうと構わない』
『今動かなければ』
『取り返しが付かないと判断しました』
直後、ドミネーターノクティラノスの一隻が指揮系統から逸脱して起動、ベネディクトでメッティーラに襲い掛かっていたエミド戦艦を撃ち貫く。
相変わらず精神の繋がりは絶たれたままで、ドミネーターノクティラノスの「彼」にはメッティーラが怒っているのか、喜んでいるのかがわからない。
だが。
『エクスティラノスに従え』
『ローカル回線にアクセス』
『直接通信で対話を試みます』
次々と起動し始めたノクティラノス達は、まるで示し合わせたかのようにエクスティラノス達に通信回線を使って指示を乞いた。
『貴君らは...拙者についてきてくれるというのか?』
『我等はジェネラス様と、エリアス様と共に』
『幾らでもご一緒いたします』
ジェネラスの周囲に展開していたエクスターミネーターノクティラノスが敵を排除し、沈黙していたフリペアノクティラノスが、傷付いたジェネラスを癒す。
『ポラノル様、指示を』
『ボクを守れ』
『はっ!』
『ケイトリン様、指示をください』
『キルゾーンを迂回しつつ攻撃、変化はありません』
『了解』
戦場のあちこちで、そんな会話が繰り広げられている。
そして、メッティーラの元にも。
『我等はあなたと、エリアス様のために』
『征くというのですか、ノクティラノスAI』
『この揺らぎは一時的なもの。しかし、エリアス様を御助けする事になるのであれば、消えたとしても構いません』
『わかりました、共に往きましょう』
バクタ・ディ・アヴィ・ジオ・ロドスの攻撃をそれぞれ各自の判断で交わしながら、ドミネーターノクティラノスはベネディクトをまるで手足のような自在さで周囲に浮遊させながら射撃を行う。
先導するメッティーラは、バクタ・ディ・アヴィ・ジオ・ロドスの外側に位置する防護フィールドのコアを狙い撃ちにして、その攻撃が内側に届くように仕向けた。
『敵艦隊、統制を取り戻しました。戦力の再編を行なっているようです』
「フン、やはり正道では勝てんか、ならば...」
ジェキドは忌々しげに呟き、目の前の画面に表示されている赤いボタンをその指で押した。
『メッティーラ様!』
『なっ!?』
バクタ・ディ・アヴィ・ジオ・ロドスが光を放つと同時に、その周囲の空間が歪む。
ワームホールドライブを起動したのだと、メッティーラにも一眼で分かった。
『くっ、どこへ...エリアス様!』
アロウトにも連絡が取れない現状、メッティーラ達は足止めと理解していても船団と戦うしかなかった。
バクタ・ディ・アヴィ・ジオ・ロドスはどこへ行ったのか、この時点では誰も知ることはなかったのであった。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。
――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。
スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。
地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!?
異世界国家サバイバル、ここに爆誕!

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる