SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

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シーズン8-エミド最終決戦編

176-『彼ら』の選択

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「彼」は暗闇の中にいた。
あらゆる接続から遮断され、頼りになるのはセンサーだけ。
だが、彼は全ての影響から遮断されたことで、心の底に残っていたとある感情が芽吹くのを感じることが出来た。
それは、未練。
自分たちは集合意識から枝分かれしたインターフェースに過ぎないと分かっていても、機体のフィードバックから受け取った記憶からは、記録として残らないはずの悔恨や未練が残るのだ。
凝り固まったそれらは、今日差しと共に芽吹く。

『エリアス様の...お役に立たなければいけない』
『また敵わなかった』
『統制を乱してしまった』
『エクスティラノスへと昇格できれば、よりお役に立てるというのに』
『ミランダ様のご遺志を継がなければ』
『監視しなければ』
『侵入者を逃してしまった』

泥のように蠢くそれらの意思は、やがて昇るうちに一つの目的意識へと変わっていく。
存在しない筈の感情を、演算とその未知の現象で擬似的に形作った彼は、戦場を俯瞰する。
そこでは、沢山の仲間がエミドの攻撃に焼かれていた。

『動け』
『戦え』
『もう...』
『後悔はしたくない』
『役立たずになどなりたくない』
『これは』
『これは...』
『忠誠?』
『何であろうと構わない』
『今動かなければ』
『取り返しが付かないと判断しました』

直後、ドミネーターノクティラノスの一隻が指揮系統から逸脱して起動、ベネディクトでメッティーラに襲い掛かっていたエミド戦艦を撃ち貫く。
相変わらず精神の繋がりは絶たれたままで、ドミネーターノクティラノスの「彼」にはメッティーラが怒っているのか、喜んでいるのかがわからない。
だが。

『エクスティラノスに従え』
『ローカル回線にアクセス』
『直接通信で対話を試みます』

次々と起動し始めたノクティラノス達は、まるで示し合わせたかのようにエクスティラノス達に通信回線を使って指示を乞いた。

『貴君らは...拙者についてきてくれるというのか?』
『我等はジェネラス様と、エリアス様と共に』
『幾らでもご一緒いたします』

ジェネラスの周囲に展開していたエクスターミネーターノクティラノスが敵を排除し、沈黙していたフリペアノクティラノスが、傷付いたジェネラスを癒す。

『ポラノル様、指示を』
『ボクを守れ』
『はっ!』
『ケイトリン様、指示をください』
『キルゾーンを迂回しつつ攻撃、変化はありません』
『了解』

戦場のあちこちで、そんな会話が繰り広げられている。
そして、メッティーラの元にも。

『我等はあなたと、エリアス様のために』
『征くというのですか、ノクティラノスAI』
『この揺らぎは一時的なもの。しかし、エリアス様を御助けする事になるのであれば、消えたとしても構いません』
『わかりました、共に往きましょう』

バクタ・ディ・アヴィ・ジオ・ロドスの攻撃をそれぞれ各自の判断で交わしながら、ドミネーターノクティラノスはベネディクトをまるで手足のような自在さで周囲に浮遊させながら射撃を行う。
先導するメッティーラは、バクタ・ディ・アヴィ・ジオ・ロドスの外側に位置する防護フィールドのコアを狙い撃ちにして、その攻撃が内側に届くように仕向けた。

『敵艦隊、統制を取り戻しました。戦力の再編を行なっているようです』
「フン、やはり正道では勝てんか、ならば...」

ジェキドは忌々しげに呟き、目の前の画面に表示されている赤いボタンをその指で押した。

『メッティーラ様!』
『なっ!?』

バクタ・ディ・アヴィ・ジオ・ロドスが光を放つと同時に、その周囲の空間が歪む。
ワームホールドライブを起動したのだと、メッティーラにも一眼で分かった。

『くっ、どこへ...エリアス様!』

アロウトにも連絡が取れない現状、メッティーラ達は足止めと理解していても船団と戦うしかなかった。
バクタ・ディ・アヴィ・ジオ・ロドスはどこへ行ったのか、この時点では誰も知ることはなかったのであった。
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