SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

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シーズン8-エミド最終決戦編

166-嵐の海

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『くっ!!』

ワームホール内に突入したケルビス達は、凄まじい衝撃を受けて一瞬煽られる。
直ぐにスラスターを噴射して態勢を立て直す。

『どうした? 状況報告!』
『星系全域に強力な電離熱核嵐プラズマストームを確認、酷い状況です』

ケルビスは姿勢制御に苦心しているアサルトノクティラノスを見つつ、発生源を確かめる。
赤色巨星が、星系の中央で煌めいており、その中央から荷電粒子の波動が放たれている。

『航行に支障なし、ただし、電離層の影響でレーザー系統の兵器が少し減衰します』
『ミサイル兵器はどうか?』
『機能しないかと。重力制御でも、荷電粒子の壁にぶつかった際に吹き飛ばされます』

まるで大嵐の中を航海する帆船のように、艦隊はプラズマ嵐に揉まれていた。
この状況では隊列を維持できないと考えたケルビスは、

『付近のアステロイドベルトに退避し、状況を把握します』
『承知した。ケイトリン艦隊はワームホール前で退避せよ』

ケルビスは指定座標にノクティラノスを先行させ、自分もワープした。

『酷い環境です、追跡センサーに障害発生』
『例のエネルギー増幅物質は?』
『散布されていたとして、この宇宙嵐の内部では低密度になるまで攪拌されてしまいます』
『成程、シーシャ、装甲への予想されるダメージは?』
『シールドが消失した場合、アサルトノクティラノスの装甲は4分22秒で表面コーティングが消失、熱衝撃耐性を喪失し、次の10分以内に装甲が融解します』

厳しい状況であった。
だが、敵は嵐だけではない。

『――――先行したアサルトノクティラノスから緊急打電、アステロイドベルトに敵が潜んでいる、との事です』
『ケルビス、宙域に到達すると同時に警戒態勢を取れ』
『はっ』

ケルビスがアステロイドベルトに到着すると、そこは嵐の凪――――台風の目とも言うべき静寂に包まれていた。
そして、アサルトノクティラノスの一機が破壊されており――――その先には、ボロボロになったエミド戦艦が八隻浮いていた。
その周囲には、同じくシールドが消失しかかっているエミド巡洋艦が四十余隻。

『さて........この状況。少し不利だね』

ケルビスは呟く。
アサルトノクティラノスの総数は二十、あまり広範囲に広がれない状況でP.O.Dは脅威であった。
それ故に。

『全艦、あの巨大な岩石を破壊せよ』

嵐を受け止めるイオンフィールドを展開している岩石塊を、ケルビスは破壊させる。
そして、ほぼ同時にフィールドが消失し――――Ve’zとエミド艦隊はプラズマ嵐に襲われた。
嵐に巻き込まれた損傷アサルトノクティラノスの一隻が、荷電粒子の圧力に耐え切れずに押し流され、別のアステロイドベルトに衝突した。

『荷電嵐が交錯している。アサルトノクティラノスはこれよりフリームーブに指定する、各自敵性目標を攻撃しつつ、作戦宙域外に放り出されないように気を付けたまえ』

ジガラスでは固定火器は使えなかったが、今度は逆だ。
自律型セントリードローンのダウンレイは、凄まじい嵐によって放出した瞬間に吹き飛ばされる。
よって、テンタクルレイでの攻撃となる。
しかし、

『敵のシールドにダメージが入りません、恐らく射程が不足しています』
『だが、不用意に接近すれば敵の間合いに入るだろう?』
『その通りです』

ですから――――
そうは言わずに、ケルビスはニューエンドを即時充填、放つ。
朱火色の光線が、四隻を纏めて貫いた。

『全艦、射程が減衰している現状接近は正しい選択肢ではない。各艦、アルカンシエルにて迎撃せよ』

普段は使う事のない兵器を使用し、それを連射する事で、戦況は一気にVe’zの有利に働いた。
エミドのP.O.Dは、高濃度の電離嵐によってエネルギー拘束場が安定せず、射程を出す事が出来ていなかった。
だが、Ve’zの持つ簡易決戦兵器であれば、減衰しながらも直撃、シールドを貫通して内部まで直撃させられるのだ。

『ケルビス、戦闘終了後暫く待機せよ。対策装備を輸送している』
『はっ』

消化試合となった戦場で、ケルビスは主の対策の早さと、行動の速さに感激していた。
敵がどのように動こうとも、主だけは揺らがない。
勿論、唯一の人間である主は、どんなに強化しようとも自分達AIには及ばない。
だとしても。

『主は私達を見捨てはしない、見捨ててくれないのだよ。お前たちの主は、お前たちに何を命じたかな?』

その慈愛こそが、ケルビスという人間を見下す遥かに高次元の知性を持つAIが、造反防止といういくらでも対策のできる愚策を破らずとも裏切らない理由であった。
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