SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

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シーズン8-エミド最終決戦編

164-エミドの異変

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ジガラスの基地周辺に展開していたケルビスは、基地の異様な変遷に眉を顰めていた。
基地はまるで、内部から崩壊したかのように半壊しており、シールドだけが張られていた。

『エリアス様、これは.....?』
『おかしい、な....バクタの井戸への空間的繋がりがない、完全に内部電力だけで稼働しているように観察される』

本来バクタの井戸からのサポートを受けている筈の基地は、完全に内部電力のみでギリギリ稼働しているといった状況であった。

『やはり、中央で何かあったのでしょうか?』
『だが、大星國船団が交戦している以上、中枢制御システムは生きているはずだ』
『となると、バクタの井戸に何かが?』
『不明な点が多い、あのホワイトホールの寿命は遥かに長く、通過質量も前観測時点では充分にあったはずだ』
『分かりました、攻撃を再開します』

その時。
ケルビス達の艦隊の背後に、先ほどの大星國船団艦隊がワープアウトしてきた。
旗艦も五基のP.O.Dのうち二基を損傷しているが、

『この基地周辺にも未知の物質が充満しています。交戦においてニューエンドは使用できません』
『だが、ケルビス........こちらには、関係ないな?』
『はい』

増援とは、何か。
それは、ラエリス=クイスティラス艦隊である。
ラムアタックを仕掛け、自爆ないし攻撃を行うラエリス艦隊に対しては超増幅物質の効果はほとんどない。

『敵基地のシールド減衰率、更に高まっています』
『ケルビス、α-4411、Θ-2207分隊を転進させるべきでは?』
『.....全く。中々、難しいものですね』

ケルビスは一斉に通信を飛ばしてくるエクスティラノス達に苦笑しつつ、作戦指揮を執る。
シールドの発生システムすら、出力を上げ過ぎれば自爆の原因となる。
そのせいで、味方の損害も常に拡大し続けているのだ。

『エリアス様、敵旗艦のP.O.D内部に熱的異常を検知しました』
『短周波過剰増幅器の使用を許可する、使用後分離せよ』
『はっ』

ケルビスの乗艦の先端部が赤く発光し――――直後。
大星國船団第四十二船団の旗艦は内部の熱量以上増幅により爆散した。

『敵旗艦の無力化を確認、では我々は....何?』

その時。
旗艦を失ったはずのエミド巡洋艦の一つが速度を上げ、一斉にケルビスの元へ向けて突っ込んでくる。
ケルビスは不測の事態にペースを乱されつつ、周囲に浮いていたラエリスに指示を飛ばして突撃させ、それを撃破した。
だが――――

『エリアス様、エミド艦が独立して行動しています』
『何? ......しかし、あり得ないわけではないな。マインドリンクを試みろ』
『はっ』

ケルビスは敵のエミド艦に向けて精神同調を試みる。
だが、それに以前と違う反応が見られた。

『エリアス様、驚くべきことです。エミド兵に自我が存在しています』
『.....確かに、驚くべきことだ』

遥かに微弱だが、ケルビスはエミド兵に感情や目的といったものを読み取っていた。
彼らは、忠誠を以てケルビスに突撃しようとしているのである。

『見事なまでの忠誠、ならば応えねば無礼に当たると存じます。このケルビス、君たちの覚悟を受け止めて見せよう!』

ケルビスは触手型砲台を的確に定め、放った。
全ての艦が推進機関を撃ち貫かれて停止したが、代償も大きく――――ケルビスの機体はエネルギーを放出しきれずに爆散する。

『エリアス様、機体を失いました。指揮は継続いたします』
『待て、そちらに改装型のジェネラスを向かわせている。お前は下がれ、よくやった』
『はっ』

ケルビスは目を閉じ、味方に引き続き基地を攻撃するよう命じた。

『エリアス様、これは――――甘さでしょうか?』

口頭で放たれたその言葉を聞き、応える者はいなかった。

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