SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

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シーズン8-エミド最終決戦編

161-彼方へと

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TRINITY.を歴史の闇に葬ってから一週間が経った。
僕は惑星フィオを訪れ、その地に降り立つ。

「おまちしておりました」
「驚いたな。もう人語を解するレベルにまで成長したのか」
「こちらへ」

数人に案内され、僕はアルケーシアの遺跡へと降りる。
地下にある遺跡の奥まで進むと、ニトが出迎えた。

「おや、エリアス殿。吾輩にいかな用事であるか?」
「何故メッセンジャーに対応しない? 用事があるから伝えたというのに、返事が来ないようだから赴いた」

ニトとそのクローンたちをアロウトへ迎え入れるとの話だったのに、返事が来ないから直接出向く羽目になった。
ここの座標を知っている者は限られる上、下手な者はグレゴルが通さない。

「返事が必要なものだったとは、大変すまない」
「なるべく応えてくれ。さあ、アロウトへ向かうぞ」

僕は彼女に手を差し出した。
彼女はその手を取る。
直後、テレポートの装置が起動し、僕とニトはアロウトの中央庭園に転送される。

「ここが...エリアス殿らの住まう場所か?」
「そうだ」

僕は庭園を少し探索し、目的の人物を見つけた。
エリスは、アディナと共にベンチで眠っていた。
悪いと思いつつ、僕は彼女を揺り起こした。

「んん...えりあす...何かあった?」
「僕の子供達を連れてきた」
「ああ...その子がリーダーなのね」
「理解が早いな」
「いいわよ、今更いくら増えたって...エリアスが私のために怒ってくれたのは、知ってるもの」

怒ったわけではない。
ただ、不快だっただけだ。
エリスの友人とも呼べない者たちを使い、愚かにもVe‘zを脅迫したのだ。
不快、不快、不快。
エリスをいびっていた彼女らはこちらで捕らえ、殺してくれとまでも言わなくなるまで苦しめてTRINITY.の愚か者達と同じ場所へ送ってやった。
当然の報いだ。

「吾輩を認めるというのか?」
「そうよ、私とエリアスの子供...それでいいんでしょう?」
「う、うむ」

エリスはそう言うと、再び目を閉じて眠り始めた。
僕は彼女が風邪をひかないよう、庭園の温度調整を少し引き上げた。
そして、ニトの手を取る。

「今日、僕がお前を呼んだのは、ただエリスに挨拶させるだけではない。」
「ああ、分かっているとも」

僕は目を覚まさないアディナを同行者に加え、玉座の前へとテレポートした。

「アディナ、起きろ」
「...はい」

アディナは目を覚ます。
そして僕は、同時に画面を起動して二人にそれを示した。
エミドのワームホール空間の接続ルートである。
ワームホールを自在に操作できる僕らだが、現実空間からあまりに隔絶されているワームホール...つまり、ワームホールからワームホールを渡らなければ到達できない空間には干渉出来ない。
つまり、一番効率的に攻略できるルートを探る必要があるのだ。

「ニト、奴らのデータベースへアクセスはできたか?」
「言語体系は同じなのだが、吾輩の遺伝子情報では解除出来ぬ。やはり分岐した文明なのだろう」
「そうか...」

彼女の因縁であればせめて手加減を、と思ったが。
それも不要なようであるため、僕は一切の手を抜かないことを決定した。
同時に、バクタラートを攻略、アルケーシアへの道を開くことも。

「よし、エミドワームホールへのアクセス開始!」
『承知しました、エリアス様』

ケルビスがどこかから拾ってきた兵器、『異次元転換砲』。
何でも、Ve’zでもエミドでもアルケーシア技術でもない方式で製造されているらしく、表面に印字されていたのがその名前だ。

「これより、エミドワームホールへの侵攻を開始する。異次元転換砲にて内部の基地に直接攻撃を行い、その後ワームホールに突入する」
『了解!』

今回の指揮官はケルビス。
コンバットノクティラノスを200引き連れ、エリワンステップからの次元層的距離が近似している無名の空間から異次元転換砲を発射、ワームホールとワームホールの間の虚無の空間に回廊を形成し、そこにワームホールを作って維持する。

『放射開始!』

直後。
Ve’zの基地から放たれた直線の閃光が、何もないはずの場所に激突する。
そして、そのまま空間を貫通してワームホール......というよりは、次元の穴を作り出した。

「今だ、ケルビス。ワームホールジェネレーターを起動せよ。座標指定を間違えるな」
『了解』

既に異次元転換砲は敵の基地座標に到達している。
威力自体は陽電子衝撃砲のような、旧世代の兵器程度だ。
エミドのシールドに弾かれて終わるだろう。
だが、ワームホールジェネレーターの軌道を安定させるという面では役に立つ。

『次元回廊にワームホールの進入口を形成、突入します』

さあ。
最後の障害を、排除するときだ。
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