155 / 200
シーズン7-TRINITY.侵略編
155-カルメナス掌握
しおりを挟む
「.....?」
「ですから、エリアス様の御命令通り、カルメナスを味方に付けて参りました」
僕は”玉座の間”で呆然としていた。
下した覚えのない命令をケルビスが実行してきた。
「僕は.....その、いつその命令を出した?」
「会議の際、”味方が少ないな”と仰られたはありませんか、私めはその言葉で全てを理解いたしました。Ve’zとの位置関係、エリアス様に与える利益、信頼できる関係を築ける勢力を全て熟考した結果、カルメナスへと至りました」
まさか、あの発言を拾われた?
僕は内心額に手を当てる。
「....それで、カルメナスは僕に何を与える?」
「エリアス様が御命じになられれば、彼等は帝国のどこにでも影響を及ぼす事が出来ます。TRINITY.が滅んだ暁には、各地で彼等に治安維持を任せればよいかと」
「.....」
海賊に治安維持を任せるのか。
一瞬疑問に思ったが、しかし間違いないだろう。
彼らは海賊ではあるが、同時にビジネスマンの側面も持つ。
略奪という報酬を受け取った上で、地元の犯罪を取り仕切り、秩序の崩壊を防ぐ。
「悪くないな」
勿論人間たちにとっては悪夢だろうが、知った事ではない。
TRINITY.に次ぐ脅威はなくなり、国家はカルメナスに呑まれて弱体化する。
「よくやった。しかし........どうやって、お前に報えばいい?」
巨大勢力を一つ味方に付けて帰って来られても、これ以上の待遇をケルビスに与えることはできない。
「では、私めの農園を拡大する権利をお願い致します。拡大しようにも、周囲の施設を持つエリアス様に相談する気にもなれず....」
「いいや、それでは足りないな。.....惑星を一つ譲ろう」
「よろしいのですか?」
「農業惑星と同じ環境にテラフォーミングし、そこで農園を作れ。土づくりの為に、農業惑星から土壌を移送するのも認めよう」
僕はケルビスが作る様々な作物に価値を見出している。
そして、何より。
「.......個人的に利用するから、月間5t程度を個別に出荷しろ。それが条件だ」
「はっ!」
惑星フィオに住むニト達は、現状エネルギーブロックを利用して生きている。
しかしそれは、記憶を失っているとはいえ僕には少々可哀想に映る。
まとめて受け入れた以上、ケルビスメイドの食事を提供してもいいだろう。
「お前の満足するモノで応えられたか?」
僕がそう尋ねると、ケルビスは猛烈に頷いた。
それなら良い。
「それで、話はこれで終わりか?」
「はい」
「そうか」
僕はふと目を閉じ、情報を確認する。
ケルビスは複数の茶を育てていた筈だが、今は三種類になっている。
「そういう事か」
「どうされましたか?」
「最近飲めなくなったと思っていたら、生産をやめたのか」
エリスの元を訪れると、毎回リクエストしていた茶があったが、いつの間にか在庫がなくなっていた。
些事だと思っていたが.....
「ああ、それは――――」
話を聞く限り、交配に失敗したようだ。
予備も用意しておらず、遺伝子系列がどう変化したのも分からないそうだ。
「........全ては不可逆、か」
僕は呟く。
僕たちがかき回したせいで、宇宙の勢力図は大幅に書き替わった。
この変化は不可逆的である。
「(自分たちの平穏を確保しようとすればするほど、世界は滅びに近づいていく)」
この世界から欲深い人間を消せば、それで全て丸く収まるという訳ではないようだ。
結局エリアスや僕にも、Ve’zの生きる道の果ては分からない。
「次はバーダレンだ、ケルビス」
「はっ」
「お前に、任せる」
「お預かりいたします」
僕はケルビスに、最終決戦を目前にした戦いを任せることにした。
この短いようで長い争いも、もうすぐ終わる。
….そう、思っていたのだが。
人間というのは、どこまでも秘境で醜悪であると、僕は知ることになるのだ。
「ですから、エリアス様の御命令通り、カルメナスを味方に付けて参りました」
僕は”玉座の間”で呆然としていた。
下した覚えのない命令をケルビスが実行してきた。
「僕は.....その、いつその命令を出した?」
「会議の際、”味方が少ないな”と仰られたはありませんか、私めはその言葉で全てを理解いたしました。Ve’zとの位置関係、エリアス様に与える利益、信頼できる関係を築ける勢力を全て熟考した結果、カルメナスへと至りました」
まさか、あの発言を拾われた?
僕は内心額に手を当てる。
「....それで、カルメナスは僕に何を与える?」
「エリアス様が御命じになられれば、彼等は帝国のどこにでも影響を及ぼす事が出来ます。TRINITY.が滅んだ暁には、各地で彼等に治安維持を任せればよいかと」
「.....」
海賊に治安維持を任せるのか。
一瞬疑問に思ったが、しかし間違いないだろう。
彼らは海賊ではあるが、同時にビジネスマンの側面も持つ。
略奪という報酬を受け取った上で、地元の犯罪を取り仕切り、秩序の崩壊を防ぐ。
「悪くないな」
勿論人間たちにとっては悪夢だろうが、知った事ではない。
TRINITY.に次ぐ脅威はなくなり、国家はカルメナスに呑まれて弱体化する。
「よくやった。しかし........どうやって、お前に報えばいい?」
巨大勢力を一つ味方に付けて帰って来られても、これ以上の待遇をケルビスに与えることはできない。
「では、私めの農園を拡大する権利をお願い致します。拡大しようにも、周囲の施設を持つエリアス様に相談する気にもなれず....」
「いいや、それでは足りないな。.....惑星を一つ譲ろう」
「よろしいのですか?」
「農業惑星と同じ環境にテラフォーミングし、そこで農園を作れ。土づくりの為に、農業惑星から土壌を移送するのも認めよう」
僕はケルビスが作る様々な作物に価値を見出している。
そして、何より。
「.......個人的に利用するから、月間5t程度を個別に出荷しろ。それが条件だ」
「はっ!」
惑星フィオに住むニト達は、現状エネルギーブロックを利用して生きている。
しかしそれは、記憶を失っているとはいえ僕には少々可哀想に映る。
まとめて受け入れた以上、ケルビスメイドの食事を提供してもいいだろう。
「お前の満足するモノで応えられたか?」
僕がそう尋ねると、ケルビスは猛烈に頷いた。
それなら良い。
「それで、話はこれで終わりか?」
「はい」
「そうか」
僕はふと目を閉じ、情報を確認する。
ケルビスは複数の茶を育てていた筈だが、今は三種類になっている。
「そういう事か」
「どうされましたか?」
「最近飲めなくなったと思っていたら、生産をやめたのか」
エリスの元を訪れると、毎回リクエストしていた茶があったが、いつの間にか在庫がなくなっていた。
些事だと思っていたが.....
「ああ、それは――――」
話を聞く限り、交配に失敗したようだ。
予備も用意しておらず、遺伝子系列がどう変化したのも分からないそうだ。
「........全ては不可逆、か」
僕は呟く。
僕たちがかき回したせいで、宇宙の勢力図は大幅に書き替わった。
この変化は不可逆的である。
「(自分たちの平穏を確保しようとすればするほど、世界は滅びに近づいていく)」
この世界から欲深い人間を消せば、それで全て丸く収まるという訳ではないようだ。
結局エリアスや僕にも、Ve’zの生きる道の果ては分からない。
「次はバーダレンだ、ケルビス」
「はっ」
「お前に、任せる」
「お預かりいたします」
僕はケルビスに、最終決戦を目前にした戦いを任せることにした。
この短いようで長い争いも、もうすぐ終わる。
….そう、思っていたのだが。
人間というのは、どこまでも秘境で醜悪であると、僕は知ることになるのだ。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。
――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。
スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。
地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!?
異世界国家サバイバル、ここに爆誕!

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる