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シーズン7-TRINITY.侵略編
154-交渉成立
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四日後。
ケルビスは自らの艦をカルメナスの首都であるエレクトラメナスへと着艦させた。
エリアスが以前訪れた都市ではなく、上位の海賊のみが集う事を許された海上都市である。
ケルビスは遥かに小さい都市を見下ろすように微笑むと、一挙に地面へと降り立った。
「お前が、Ve’zの使徒か?」
「態度が大きいですね。――――控えよ」
精神の強制接続により、ケルビスは迎えに来たアルダネイト及びその側近たちを纏めて跪かせた。
すぐに、周囲にいた海賊たちが武器を手に取るが、直後それらは真っ二つになった。
「これは同盟という形を取ってはいますが、我々に服従せよという命令です」
「そん....なもの....従えるわけが....」
「あなた方に、ジャッドーを制する力はあるのですか?」
「くっ.....」
カルメナスとは、海賊国家であり、それに対する恨みや敵意はうず高く山のように降り積もっている。
他国に助力を希う事は出来ず、かと言って自国の戦力では厳しい。
「カルメナス・ヴァンガード」に所属する主力艦を動かせば、その間カルメナスは他国家に対する抑止力を失う。
「そうして俺たちを従えて、どうするってんだよ!」
「何も」
ケルビスは真顔でそう宣言した。
アルダネイトは、何の感情も籠っていないその言葉に、眼を見開いた。
「ならば、何故恭順を要求する」
「”味方は多い方がいい”と我が主は仰せられました。それ以上の理由がありましょうか?」
その時、アルダネイトの側近の一人、ヴァジラ・シュカーナは気付いた。
この目の前にいる存在は、自分たちとは考え方も価値観も全く異なるのだと。
「お前ら.....あなた方は今、TRINITY.と戦争中と聞いている。俺たちの力が必要なのか?」
「不要です」
「理由が欲しい。何をすればいいのか、何をさせられるのか。俺は海賊のまとめ役だが、理由なく荒くれ者どもを統率できるはずがない」
アルダネイトはそう言い切った。
いつ殺されてもおかしくない、そう確信していてなお。
彼の志は彼に恐れを抱かせることを許さなかった。
「では、仮にこうしましょう。あなた方はVe’zと手を組んだと公に宣言し、略奪や示威行為に名を利用することを許容いたしましょう。そして、国家があなた方に手を出した際は、私か、その配下を向かわせましょう」
Ve’zの親衛隊戦力は、単艦で各国家の主力艦何百隻をも圧倒できる。
過去に倒されたVe’zの高位艦船が、数千数万の通常戦力の犠牲のもとにあった事を、アルダネイトはよく知っていた。
「”私”と言ったな。つまりお前は、主に知らせることなく謀略を進めているって事か」
「!!」
そこで初めて、ケルビスが一瞬だけ動揺を露にする。
ここが突破口だ、アルダネイトはそう確信する。
「俺たちは従おう。他に選択肢はない....だが、貴方も俺たちを従えるのなら、”我が主”へと報告し、意志を問う事だ」
勝った。
アルダネイトは確信する。
これで、ジャッドーを倒した後.....ケルビスは主の意思に背いたことを知り手を引くだろうと。
少なくとも、アルダネイトがその手で討ってきた騎士や忠臣であれば、必ずそうなるだろうと。
「では、話は終わりです」
「ああ」
アルダネイトは頷き、笑みを浮かべた。
「では、こちらも話は終わりだ。食事会でも開くか?」
「いえ、私は帰りますので」
ケルビスは艦内にテレポートし、エレクトラメナスを離れた。
こうして、Ve’zとカルメナスは公に同盟を結ぶこととなり――――
共同でのジャッドー殲滅作戦が実行されることとなるのであった。
ケルビスは自らの艦をカルメナスの首都であるエレクトラメナスへと着艦させた。
エリアスが以前訪れた都市ではなく、上位の海賊のみが集う事を許された海上都市である。
ケルビスは遥かに小さい都市を見下ろすように微笑むと、一挙に地面へと降り立った。
「お前が、Ve’zの使徒か?」
「態度が大きいですね。――――控えよ」
精神の強制接続により、ケルビスは迎えに来たアルダネイト及びその側近たちを纏めて跪かせた。
すぐに、周囲にいた海賊たちが武器を手に取るが、直後それらは真っ二つになった。
「これは同盟という形を取ってはいますが、我々に服従せよという命令です」
「そん....なもの....従えるわけが....」
「あなた方に、ジャッドーを制する力はあるのですか?」
「くっ.....」
カルメナスとは、海賊国家であり、それに対する恨みや敵意はうず高く山のように降り積もっている。
他国に助力を希う事は出来ず、かと言って自国の戦力では厳しい。
「カルメナス・ヴァンガード」に所属する主力艦を動かせば、その間カルメナスは他国家に対する抑止力を失う。
「そうして俺たちを従えて、どうするってんだよ!」
「何も」
ケルビスは真顔でそう宣言した。
アルダネイトは、何の感情も籠っていないその言葉に、眼を見開いた。
「ならば、何故恭順を要求する」
「”味方は多い方がいい”と我が主は仰せられました。それ以上の理由がありましょうか?」
その時、アルダネイトの側近の一人、ヴァジラ・シュカーナは気付いた。
この目の前にいる存在は、自分たちとは考え方も価値観も全く異なるのだと。
「お前ら.....あなた方は今、TRINITY.と戦争中と聞いている。俺たちの力が必要なのか?」
「不要です」
「理由が欲しい。何をすればいいのか、何をさせられるのか。俺は海賊のまとめ役だが、理由なく荒くれ者どもを統率できるはずがない」
アルダネイトはそう言い切った。
いつ殺されてもおかしくない、そう確信していてなお。
彼の志は彼に恐れを抱かせることを許さなかった。
「では、仮にこうしましょう。あなた方はVe’zと手を組んだと公に宣言し、略奪や示威行為に名を利用することを許容いたしましょう。そして、国家があなた方に手を出した際は、私か、その配下を向かわせましょう」
Ve’zの親衛隊戦力は、単艦で各国家の主力艦何百隻をも圧倒できる。
過去に倒されたVe’zの高位艦船が、数千数万の通常戦力の犠牲のもとにあった事を、アルダネイトはよく知っていた。
「”私”と言ったな。つまりお前は、主に知らせることなく謀略を進めているって事か」
「!!」
そこで初めて、ケルビスが一瞬だけ動揺を露にする。
ここが突破口だ、アルダネイトはそう確信する。
「俺たちは従おう。他に選択肢はない....だが、貴方も俺たちを従えるのなら、”我が主”へと報告し、意志を問う事だ」
勝った。
アルダネイトは確信する。
これで、ジャッドーを倒した後.....ケルビスは主の意思に背いたことを知り手を引くだろうと。
少なくとも、アルダネイトがその手で討ってきた騎士や忠臣であれば、必ずそうなるだろうと。
「では、話は終わりです」
「ああ」
アルダネイトは頷き、笑みを浮かべた。
「では、こちらも話は終わりだ。食事会でも開くか?」
「いえ、私は帰りますので」
ケルビスは艦内にテレポートし、エレクトラメナスを離れた。
こうして、Ve’zとカルメナスは公に同盟を結ぶこととなり――――
共同でのジャッドー殲滅作戦が実行されることとなるのであった。
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