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シーズン7-TRINITY.侵略編
145-完全制圧
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アルギゴイネン襲撃のフェーズは最終段階に移行した。
駐留艦隊の75%以上を壊滅状態に追い込み、僕らは残存艦隊を次々と襲っていた。
『戦力の22%を喪失させました』
『敵の攻撃による損耗:1%以下』
「よし」
その頃。
僕はアルギゴイネンにあるTRINITY.のデータバンクを訪れていた。
無人だが、その機能は生きている。
「...........成程」
星系内のあちこちに、TRINITY.の上部の避難施設が存在している。
エミドからのサルベージング技術を使い、遮蔽を行って身を隠しているようだ。
「愚かだな、全く」
この腐り堕ちた組織は、指揮官はさっさと逃げ、指揮系統を放棄して隠れる。
情けない限りだが、僕も.....弱い前世の頃なら、同じように考えたかもしれない。
忌まわしい。
愚かしい。
「カサンドラ、回収した情報を共有する。そこにTRINITY.上層部の人間が逃げ込んでいるはずだ」
『分かりました』
僕はデータバンクを破壊し、即座にアロウトへとテレポートした。
そこでは、カサンドラが回収したデータをスキャン映像と同期させている所だった。
「敵の上層部がいる場所に、コンバットノクティラノスの義体を突入させろ。処刑する映像をTRINITY.の全体ネットワークに強制的に流す」
『成程、流石はエリアス様、敵に自らの愚かさを身を以て知ってもらうという事ですね』
ケルビスが何か変な事を言っているが、実際には違う。
「違うな。正確には、敵の士気を低下させ、内部から崩壊させるための策だ」
『つまり、内部で殺し合いをさせるという事ですか?』
「そうだ。オルダモンとクロペルに侵攻した卑怯者に対して、これ以上ないほど最良の末路だろう?」
『.......流石はエリアス様ですね』
TRINITY.という組織は、上に行けば行くほど不真面目になり、下に行けば行くほど誠実になる。
そして、数が多いのは組織の宿命として下が常に多くなる。
そんな彼らが、上で偉ぶった人間の処刑映像を見せられたなら?
「そうだ、TRINITY.の指揮官を捕えていたな」
『拷問するのですか?』
「ケルビス、お前に任せる。何にせよ、敵の戦意を折れるならそれに越したことはない」
TRINITY.は消滅する。
それは確実であり、僕たちはそれを止める気はない。
しかし――――逃げ出す者を追う事はしない。
もし、彼らの中でも誠実な者たちが、腐った根を斬り落とす覚悟が出来たのなら、きっとその者たちだけでも生き残り、TRINITY.という組織を存続させていくことだろう。
「僕たちにとってこれは報復であり、粛清のようなものではあるが....しかし、志ある者たちにとっては、浄化となり得るだろう」
僕は戦況に目を向ける。
隔離ステーションにノクティラノスを「積載」したハウラーノクティラノスがラムアタックを仕掛け、内部に突入していた。
『戦域の主導権の99%を私たちが握りました、勝利です』
「そのようだな」
僕は映像から流れるTRINITY.上層部の見苦しい命乞いに耳を傾ける。
例えどんなに必死に叫んだところで、不正と安寧の中で肥え太った身体では説得力など持っていない。
「●REC」ではないが、この映像は記録されている。
後で、出来る限り見やすく編集して、TRINITY.の全域のネットワークに配信する予定だ。
「各国がどう出るかが少し気になるな」
『どう出ようと滅ぼせばいいのではないでしょうか?』
「........そうかもしれないが」
同意しかけた自分に驚く。
いつの間にか上位者思考に染まってしまっていた。
こういうのは抑制していかなければ。
「もう少し味方を作っておくのも悪くないだろう?」
『その通りです!』
ケルビスが強く頷いていた。
僕は制圧されたアルギゴイネンを見て、「いい光景だ」と少しばかり思いに浸るのであった。
駐留艦隊の75%以上を壊滅状態に追い込み、僕らは残存艦隊を次々と襲っていた。
『戦力の22%を喪失させました』
『敵の攻撃による損耗:1%以下』
「よし」
その頃。
僕はアルギゴイネンにあるTRINITY.のデータバンクを訪れていた。
無人だが、その機能は生きている。
「...........成程」
星系内のあちこちに、TRINITY.の上部の避難施設が存在している。
エミドからのサルベージング技術を使い、遮蔽を行って身を隠しているようだ。
「愚かだな、全く」
この腐り堕ちた組織は、指揮官はさっさと逃げ、指揮系統を放棄して隠れる。
情けない限りだが、僕も.....弱い前世の頃なら、同じように考えたかもしれない。
忌まわしい。
愚かしい。
「カサンドラ、回収した情報を共有する。そこにTRINITY.上層部の人間が逃げ込んでいるはずだ」
『分かりました』
僕はデータバンクを破壊し、即座にアロウトへとテレポートした。
そこでは、カサンドラが回収したデータをスキャン映像と同期させている所だった。
「敵の上層部がいる場所に、コンバットノクティラノスの義体を突入させろ。処刑する映像をTRINITY.の全体ネットワークに強制的に流す」
『成程、流石はエリアス様、敵に自らの愚かさを身を以て知ってもらうという事ですね』
ケルビスが何か変な事を言っているが、実際には違う。
「違うな。正確には、敵の士気を低下させ、内部から崩壊させるための策だ」
『つまり、内部で殺し合いをさせるという事ですか?』
「そうだ。オルダモンとクロペルに侵攻した卑怯者に対して、これ以上ないほど最良の末路だろう?」
『.......流石はエリアス様ですね』
TRINITY.という組織は、上に行けば行くほど不真面目になり、下に行けば行くほど誠実になる。
そして、数が多いのは組織の宿命として下が常に多くなる。
そんな彼らが、上で偉ぶった人間の処刑映像を見せられたなら?
「そうだ、TRINITY.の指揮官を捕えていたな」
『拷問するのですか?』
「ケルビス、お前に任せる。何にせよ、敵の戦意を折れるならそれに越したことはない」
TRINITY.は消滅する。
それは確実であり、僕たちはそれを止める気はない。
しかし――――逃げ出す者を追う事はしない。
もし、彼らの中でも誠実な者たちが、腐った根を斬り落とす覚悟が出来たのなら、きっとその者たちだけでも生き残り、TRINITY.という組織を存続させていくことだろう。
「僕たちにとってこれは報復であり、粛清のようなものではあるが....しかし、志ある者たちにとっては、浄化となり得るだろう」
僕は戦況に目を向ける。
隔離ステーションにノクティラノスを「積載」したハウラーノクティラノスがラムアタックを仕掛け、内部に突入していた。
『戦域の主導権の99%を私たちが握りました、勝利です』
「そのようだな」
僕は映像から流れるTRINITY.上層部の見苦しい命乞いに耳を傾ける。
例えどんなに必死に叫んだところで、不正と安寧の中で肥え太った身体では説得力など持っていない。
「●REC」ではないが、この映像は記録されている。
後で、出来る限り見やすく編集して、TRINITY.の全域のネットワークに配信する予定だ。
「各国がどう出るかが少し気になるな」
『どう出ようと滅ぼせばいいのではないでしょうか?』
「........そうかもしれないが」
同意しかけた自分に驚く。
いつの間にか上位者思考に染まってしまっていた。
こういうのは抑制していかなければ。
「もう少し味方を作っておくのも悪くないだろう?」
『その通りです!』
ケルビスが強く頷いていた。
僕は制圧されたアルギゴイネンを見て、「いい光景だ」と少しばかり思いに浸るのであった。
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