SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

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シーズン7-TRINITY.侵略編

143-報復の第一手

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こうして、エクスティラノス最後の二人が加入したタイミングで、ケルビスがTRINITY.襲撃の仮案を挙げてきた。
僕たちは新人二人の慣らしも兼ねて、久々に思考リンクで会議を行う。

『エリアス様、ようこそ会議へ』
『ああ』

カプセルに入って、僕は会議に参加する。
仮想空間に玉座と円卓を設けたのは恐らくケルビスだろう。
あまりいい趣味とは言えないが、とりあえず玉座に腰かけておく。
すぐにエクスティラノス全員が揃い、ケルビスが立ち上がる。

『では、あまり時間を使うのもエリアス様に無礼です。すぐに始めましょう』
『頼む』

エクスティラノスはイメージを投影する。
それは、エクスティラノス全員の艦船のデフォルメ画像だった。

『戦闘可能なエクスティラノスは九人。ドミネーターノクティラノスは現在も増産を続けており、先の戦闘で使った雑兵とは違うサプレッションノクティラノスが開発済みです、それも九人で分配でき、予備分も』
『どう違うのですか? ケルビス』
『ドミネーターノクティラノスとは異なり、小回りの利く小型艦の掃討に長けているのですよ、メッティーラ』
『理解しました、続きを』

遠距離特化のドミネーターノクティラノス、近接戦有利のサプレッションノクティラノス、そして両方において大戦力を上回るエクスティラノスたち。
TRINITY.相手に運用するには過剰すぎるな。

『まず、我々はアルギゴイネンを襲撃します』

大きく出たな。
アルギゴイネンとは、TRINITY.の存在する星系群『ヤルヴェナ』と、周辺国家を結ぶ唯一のルートの始点だ。
ここを抑えられると、ヤルヴェナは完全に孤立する。
勿論、これまではTRINITY.の戦力上、防衛の観点から都合が良かったのだろうが――――

『待て、ケルビス。それがどういう事か理解しているな?』
『はっ』

僕は問う。
アルギゴイネンを襲撃するという事は、他国とTRINITY.の主力艦隊と挟撃に遭うという事だ。
負ける可能性は微塵もないが、流石に輸送艦を襲う事は出来ないので、支援を受け続けたTRINITY.相手に苦戦などと愚かな二の足を踏む可能性もある。

『僕たちの勢力は強大だが、あまりに人間の味方が少ないな.....全てを滅ぼすより、味方を作った方が効率はいいのだが』
『......でしたら、人間どもを洗脳し管理すればいいのでは?』

その時、場違いな声が響いた。
ケイトリンだ。

『今の方針では、それは行わないことにしている』
『何故ですか? 効率的に最良な方法を採るべきかと思われますが』
『僕が嫌なんだ』
『........承知いたしました、出過ぎた真似をした我をお許しください』
『許す』

ケイトリンは立ち上がり、90°のお辞儀をして着席した。
しなくていいジェスチャーをするあたり、口では言わないが染まってきているな、僕の影響に。

『人間牧場を始めて、人間に情でも沸いたッスか?』
『口を慎みなさい、シュマル!』
『はっ、最後まで残っただけで発言権を得たつもりッスか?』

シュマルは幼女型だが、その脆弱な姿からは想像できないほどに残虐性を持っている。
それに、恐れを知らない。
....そういう風に、先代が設計したからだ。

『シュマル、僕は甘くなったか?』
『はいッス。随分と非効率になりましたッス』
『僕は、その甘えを甘受する。――――僕の行うことは絶対ではなかったのか?』
『勿論ッス。ただ自分は、見たままの感想を言っただけッスから』

ふむ。
デフォルトで物言いに気づいていないのか。
エクスティラノスとして刻み込まれた原則に従わず、自分の目で見たものだけを信じる。
斥候としてこれ以上役に立つ存在はないな。

『よし、シュマル。お前は先んじてヤルヴェナへと侵入し、諜報活動を行え』
『はいッス! 喜んでお受けいたします!』

シュマルは即座に会議室から消え去った。
何か言いたげなケルビスだが、言った瞬間に僕の機嫌が悪化するのを察していたのだろう。

『先代が植え付けた個性だ。あまり責めないでくれ』
『はっ。私めも、先代に創造されましたが....しかし、あなたに対して最大の礼を尽くすのは当然だと思っています』

忠誠心が高いのは結構だが、シュマルは斥候役。
プライドや忠誠心で歪んだ結果ではなく、ビデオカメラのように記録したことを正確に明確に語る。
そういう存在なのだ、彼女は。
僕は全員を納得させるため、会議の終わりを宣言し――――その日はそれで終わったのであった。
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