140 / 200
シーズン6-Ve’z同盟軍対TRINITY.連合軍戦線
140-神聖連合消滅
しおりを挟む
こうして、連合軍対同盟軍の戦争は終了した。
いや、戦争という表現には語弊があるだろう。
一方的に仕掛けた連合軍が、遊び半分の同盟軍に撃退されただけである。
それも、何度も何度も見苦しく攻撃を仕掛け、挙げ句の果てには大義名分とは関係ない国にまで奇襲を行った上で。
『それで、今回の賠償責任に関して、TRINITY.としてはどのようなご決断を?』
『い...依然検討中です』
TRINITY.総裁のエルドリヒは、記者からのインタビューに歯切れ悪く答えた。
彼が言い逃れをできない理由は他にもある。
それは、遺体の返還である。
『現在は遺体の身元確認中でして....』
『ですが、全ての遺族の元に正確に遺体が届けられた以上、そのような作業は不要なのではないでしょうか?』
『.....回答は差し控えさせていただきます』
そう。
Ve’zの手によって回収された遺体は、復元作業後遺族の元へと転送装置とデータベースの照合により返還された。
中には自分の子供と認識していなかった孤児が兵士になったせいで、身に覚えのない遺体が届いたり、遺族が全員死んでいたため地元の役所の前に届いたりするアクシデントはあったものの、連合軍”全て”の遺体が完璧に返還された。
それはつまり、無言の圧力と同義であった。
『ゴミは返すよ』程度の意思表示だと、上層部は判断した。
「(全く忌々しい......何が遺体だ、我々の戦力すら足元にも及ばなかったではないか、誰かこれに気づけるというものか)」
エルドリヒは唇を噛む。
遺体を覆っていた棺は、型番などが記載されていることがあったため調査を進めた結果、全て連合軍の出撃させた艦船や戦闘機の装甲材か構造材であった。
虫をティッシュでくるんで隣の家に放り込んだら、その死骸を綺麗に包んで送り返されたというようなものである。
どう考えても、舐められているとしか思えないだろう。
『続いては、全国放送での謎の声についてのニュースです』
映像が切り替わり、全国で発生したジャック放送での声についての報道がなされる。
エリアス=アルティノスの放送についてである。
『この声については、未確認組織「Ve’z」の首魁と思われるエリアス=アルティノスの宣戦布告映像から照合が取れ、同一人物であると特定されました』
エリアスはTRINITY.に対して、戦勝当日に堂々と宣戦布告した。
それに対して、TRINITY.はエルドリヒに対する処罰で事を収めようとしていた矢先に出鼻をくじかれた形になった。
Ve’z直々の宣戦布告ともなれば、最早事は組織内のいざこざでは済まない。
宇宙の保全システムそのものに大きな影響が出てしまう事になる。
それは、TRINITY.に協賛する国家が許さないであろう。
辞任で体面を守って終わらせるなどと、情けない真似はできない。
『それにしても、Ve’zとは、実在の存在だったのですね』
『元より存在自体は知られていましたが、コロニスト、傭兵、プラネタリアンの皆様方には幻の存在でしたからね』
『探検家くらいですよ、Ve’zと遭遇するのは....』
その言葉は事実である。
歴史上の名の知れた探検家の何万人かは、Ve’zとの遭遇を果たしている。
本来であればVe’z宇宙の遥か深部か、歴史の片隅に遥か古代から存在し続けている遺跡を巡らなければ遭遇できない存在なのだ。
それが声明を出し、人々の前に深遠なるベールを取り払って現れた。
エリガードの出現に続く事件に、多くの人々の心に激動の時代を生きているのだという実感が湧いてきた。
Noa-Tun連邦によるビージアイナ帝国の完全占拠、連合軍の歴史的な大敗北。
これは、宇宙に存在する二つの脅威――――即ち、侵略者と暴君を広く知らしめた、歴史のターニングポイント。
後に「滅びの前兆」と囁かれるようになった事件であった。
「神よ! 信託を!」
「我らに生き延びる道を示してくだされ!!」
オーベルン神聖連合首都、オーベリニア。
その中央に存在する世界聖堂にて、多くの者が祈っていた。
祈る先は、絶対神にして唯一神。
国名に冠された主神の名はオーベルン。
「オーベルンよ、我々の行く末をお示しください!」
「さすれば、我々はそれに従います!」
多くの者の声を受け、「それ」は煩わし気に意識を浮上させた。
そして、信者たちの声に耳を傾ける。
「Ve’zという脅威に我々は直面しております! どうか道標を!」
「生贄をお望みであれば、何なりと御用意いたします!」
教皇すらも必死に祈った。
だが、「それ」はそれに憤った。
生意気な態度にではない。
Ve’zに敵対したことに対して、怒ったのだ。
それは、勝てない敵に対して挑んだ怒りではない。
大いなる失望から来る怒りであった。
『――――愚か者共め。いつ余がそう望んだ?』
そして、翌日。
オーベリニアプライムは、完全に消滅し――――オーベルン神聖連合は完全に崩壊した。
いや、戦争という表現には語弊があるだろう。
一方的に仕掛けた連合軍が、遊び半分の同盟軍に撃退されただけである。
それも、何度も何度も見苦しく攻撃を仕掛け、挙げ句の果てには大義名分とは関係ない国にまで奇襲を行った上で。
『それで、今回の賠償責任に関して、TRINITY.としてはどのようなご決断を?』
『い...依然検討中です』
TRINITY.総裁のエルドリヒは、記者からのインタビューに歯切れ悪く答えた。
彼が言い逃れをできない理由は他にもある。
それは、遺体の返還である。
『現在は遺体の身元確認中でして....』
『ですが、全ての遺族の元に正確に遺体が届けられた以上、そのような作業は不要なのではないでしょうか?』
『.....回答は差し控えさせていただきます』
そう。
Ve’zの手によって回収された遺体は、復元作業後遺族の元へと転送装置とデータベースの照合により返還された。
中には自分の子供と認識していなかった孤児が兵士になったせいで、身に覚えのない遺体が届いたり、遺族が全員死んでいたため地元の役所の前に届いたりするアクシデントはあったものの、連合軍”全て”の遺体が完璧に返還された。
それはつまり、無言の圧力と同義であった。
『ゴミは返すよ』程度の意思表示だと、上層部は判断した。
「(全く忌々しい......何が遺体だ、我々の戦力すら足元にも及ばなかったではないか、誰かこれに気づけるというものか)」
エルドリヒは唇を噛む。
遺体を覆っていた棺は、型番などが記載されていることがあったため調査を進めた結果、全て連合軍の出撃させた艦船や戦闘機の装甲材か構造材であった。
虫をティッシュでくるんで隣の家に放り込んだら、その死骸を綺麗に包んで送り返されたというようなものである。
どう考えても、舐められているとしか思えないだろう。
『続いては、全国放送での謎の声についてのニュースです』
映像が切り替わり、全国で発生したジャック放送での声についての報道がなされる。
エリアス=アルティノスの放送についてである。
『この声については、未確認組織「Ve’z」の首魁と思われるエリアス=アルティノスの宣戦布告映像から照合が取れ、同一人物であると特定されました』
エリアスはTRINITY.に対して、戦勝当日に堂々と宣戦布告した。
それに対して、TRINITY.はエルドリヒに対する処罰で事を収めようとしていた矢先に出鼻をくじかれた形になった。
Ve’z直々の宣戦布告ともなれば、最早事は組織内のいざこざでは済まない。
宇宙の保全システムそのものに大きな影響が出てしまう事になる。
それは、TRINITY.に協賛する国家が許さないであろう。
辞任で体面を守って終わらせるなどと、情けない真似はできない。
『それにしても、Ve’zとは、実在の存在だったのですね』
『元より存在自体は知られていましたが、コロニスト、傭兵、プラネタリアンの皆様方には幻の存在でしたからね』
『探検家くらいですよ、Ve’zと遭遇するのは....』
その言葉は事実である。
歴史上の名の知れた探検家の何万人かは、Ve’zとの遭遇を果たしている。
本来であればVe’z宇宙の遥か深部か、歴史の片隅に遥か古代から存在し続けている遺跡を巡らなければ遭遇できない存在なのだ。
それが声明を出し、人々の前に深遠なるベールを取り払って現れた。
エリガードの出現に続く事件に、多くの人々の心に激動の時代を生きているのだという実感が湧いてきた。
Noa-Tun連邦によるビージアイナ帝国の完全占拠、連合軍の歴史的な大敗北。
これは、宇宙に存在する二つの脅威――――即ち、侵略者と暴君を広く知らしめた、歴史のターニングポイント。
後に「滅びの前兆」と囁かれるようになった事件であった。
「神よ! 信託を!」
「我らに生き延びる道を示してくだされ!!」
オーベルン神聖連合首都、オーベリニア。
その中央に存在する世界聖堂にて、多くの者が祈っていた。
祈る先は、絶対神にして唯一神。
国名に冠された主神の名はオーベルン。
「オーベルンよ、我々の行く末をお示しください!」
「さすれば、我々はそれに従います!」
多くの者の声を受け、「それ」は煩わし気に意識を浮上させた。
そして、信者たちの声に耳を傾ける。
「Ve’zという脅威に我々は直面しております! どうか道標を!」
「生贄をお望みであれば、何なりと御用意いたします!」
教皇すらも必死に祈った。
だが、「それ」はそれに憤った。
生意気な態度にではない。
Ve’zに敵対したことに対して、怒ったのだ。
それは、勝てない敵に対して挑んだ怒りではない。
大いなる失望から来る怒りであった。
『――――愚か者共め。いつ余がそう望んだ?』
そして、翌日。
オーベリニアプライムは、完全に消滅し――――オーベルン神聖連合は完全に崩壊した。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
Reboot ~AIに管理を任せたVRMMOが反旗を翻したので運営と力を合わせて攻略します~
霧氷こあ
SF
フルダイブMMORPGのクローズドβテストに参加した三人が、システム統括のAI『アイリス』によって閉じ込められた。
それを助けるためログインしたクロノスだったが、アイリスの妨害によりレベル1に……!?
見兼ねたシステム設計者で運営である『イヴ』がハイエルフの姿を借りて仮想空間に入り込む。だがそこはすでに、AIが統治する恐ろしくも残酷な世界だった。
「ここは現実であって、現実ではないの」
自我を持ち始めた混沌とした世界、乖離していく紅の世界。相反する二つを結ぶ少年と少女を描いたSFファンタジー。
【なろう430万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ
海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。
衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。
絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。
ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。
大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。
はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?
小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。
カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

転生先は美少女パイロットが乗るロボットのAIでした。
美作美琴
ファンタジー
いじめられっ子の少年、瑞基(みずき)は事故死して女神に出会う。
彼女は瑞基を転生させようとするが瑞基はかたくなに拒否。
理由は人間に転生してまたいじめられるのが嫌だから。
しかし実績の為どうしても瑞基を転生させたい女神は瑞基にある提案をする。
それは瑞基を人間ではないもの……科学技術が進歩した世界のAIに転生させるというものだった。
異世界転生はファンタジー世界に転生するだけに在らず……異例のロボ転生、刮目してみよ!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる