SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

文字の大きさ
上 下
130 / 200
シーズン6-Ve’z同盟軍対TRINITY.連合軍戦線

130-暴君か道化か

しおりを挟む
「だ、ダメだ!」

そう叫んだのは、ドロシアル星系側の司令官であるペリノーである。
彼の目の前で、TRINITY.の通常艦隊が壊滅していた。
何が起こったのか?
それは、アドラスによる攻撃である。
重力を自在に操るアドラスにより、全ての攻撃はそのまま味方に返ってくるのである。
屈折されたレーザーが味方に直撃し、主力艦はそのまま打撃武器と化した。

「制御できないのか!?」
「ダメです、機関出力を全開にしていますが.....重力波に逆らえません...まるで、見えない手に操られているようです!」

ペリノーの乗る主力艦も、重力波に捕らわれていた。
味方艦に体当たりさせられ、被害を拡大させられている。
隙を伺い砲撃を行っても、それらは屈折して味方の主力艦に当たる。

『つまらないなぁ。もっと歯ごたえがあると思ったのに』

そして、当のアドラスは...退屈していた。
いいや、もっと退屈しているのは、その周囲にいるドミネーターノクティラノスであろう。
主の指示でやってきてみれば、繰り広げられるのは一方的な蹂躙劇である。
殆ど自我を持たない彼らでさえ、重力程度に抗えない人間の技術力のレベルに侮蔑の視線を向けていた。

『アドラス、そろそろ終わらせてはどうかな? エリアス様を退屈させてはならない』
『...そうだね、こんな一方的な戦い....エリアス様は好まないよね』

アドラスは重力制御を切る。
全ての艦が、重力から解放され、自動で水平に戻っていく。

『何が起きた!?』
「分かりません、いきなり....」
『敵の重力制御にも、タイムリミットがあるのかもしれ――――ほわぁあああ!?』

そう考察しようとしたペリノーだったが、最後まで言う事は出来なかった。
全ての艦が再び重力によって一緒くたに押し込められたのだ。
当然、潰れる艦や艦が突き刺さって無力化される艦もあるが――――アドラスはそれに興味がない。

『エリアス様、いっくよ~~!!』

そして、アドラスの乗艦の船体に幾何学模様が走り、それに沿って艦が変形する。
同時に、強大な重力制御がブラックホールを疑似的に発生させる。
艦隊は一秒と持たなかった。
まるで海底に放り出された空のペットボトルのように、ぐしゃりと潰れ、それで終わった。
質量の穴は疑似的に作られたため、接続先がなく――――宙域にはただ艦隊の残骸が残るのみであった。

『エリアス様、逃げちゃったのはどうするんですか?』
『大丈夫だ、お前は気にしなくていい』
『はいっ!』

アドラスは嬉しそうに頷いた。
それを、ドミネーターノクティラノスの内部にいるキジラ達は、白い目で見ていた。






ケージヒトとドロシアル星系へのゲートを持つハブ星系、プロシアナ星系。
そこでは、逃亡艦隊と回収艦隊が合流していた。

『で、敗走してきたと?』
「ひ、非常に申し訳なく......」

しかし回収艦隊側も、ボロボロになった逃亡艦隊に同情はしていた。

「.....まあ、少しくらい口添えはしてやる。懲役で済むはずだ」

回収艦隊の司令はそう返した。
だが、次の瞬間――――全員が絶望することとなる。
全てのモニターに、Ve’zのマークが映ったからだ。

『やあやあやあやあ、御立合い!』

そして、通信回線を通して響いてくるのは、聞きなれぬ声。
そう、ポラノル=エクスティラノスの声であった。

『これより始まるのは、猜疑と裏切りの惨劇。誰が敵か!? 誰が味方か!? 分からぬままに愚か者たちは殺し合う――――人形たちの踊りが、今始まる!』

ポラノルは哄笑する。
直後、TRINITY.の残存艦隊が、同じくオーベルンの残存艦隊に向けて発砲する。
撃たれたオーベルン艦隊は、即座に反撃に出た。

「何だ!? 発砲命令は...」
「システムがオーバーライドされてます! ウェポンシステムが反応しません!」
「電源を切れ!」

司令官はフレンドリーファイアを抑制しようとしたものの、直後に起きた事態に対処できなかった。

『警告、艦橋内の酸素濃度が下がっています』
「バカな....グッ!?」

艦橋から酸素が排出され、司令官含め旗艦の人間は悶え苦しみながら窒息死した。
それを、ポラノルは冷ややかな目で見ていた。

『パペット達は語らず。しかし、裏切りの矢は仲間を射抜き、仲間もまた泣き叫びながらそれを撃つ――――最高のショーだ! アッハッハ!』

制御を奪われた残存艦隊と回収艦隊は、お互いに全力での戦闘を繰り広げ、自滅した。
こうして、連合軍は”たまたま”逃げ遂せることのできたたった四隻を除き、完全に殲滅されたのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。

スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。 地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!? 異世界国家サバイバル、ここに爆誕!

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

宇宙人へのレポート

廣瀬純一
SF
宇宙人に体を入れ替えられた大学生の男女の話

処理中です...