SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

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シーズン6-Ve’z同盟軍対TRINITY.連合軍戦線

128-愚かなる再進撃

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次の戦場は、ケージヒトとドロシアル星系だ。
こちらは四星系への同時攻撃と違い、二つの星系に残りの連合軍全艦隊が集結している。

「ここが正念場だな」
「.....ええ、そうですな」

TRINITY.艦隊のケージヒト指揮官であるクロビトは、目の前に広がる暗い宇宙を一望しながら呟く。
恒星を制御するVe’zの領域では、一切の光は生まれないのである。

『もし我々が壊滅すれば、この連合軍は瓦解します』
『そうなれば、待っているのは反発と、内乱......決して、負けるわけにはいきませんな』

この星系には、TRINITY.とキロマイア皇国、ジスティカ王国の艦隊が進軍している。
TRINITY.の総戦力と、両国の防衛戦力を除く戦力の全てである。
最早、止まるわけにはいかないのだ。

「全軍、ワープを開始する! 目標、ビロンドゲート!」
『了解』
『全艦同期!』

そして、クロビトの命令で、全ての艦隊が一斉にワープの準備を整える。
TRINITY.主力艦五隻と、キロマイア皇国主力艦一隻、ジスティカ王国主力艦六隻が並び、同調ワープでその宙域を離脱した。
そして、超光速航行から離脱した艦隊は、それを見た。

『これは.......』
『何と、巨大な.....』

ワープを妨害された艦隊の前に在ったのは、球体の要塞であった。
不可思議な構造が、球体のあちこちより突き出ている。

「司令、どうされますか?」
「どうするも何も......射程距離であるならば、ただ攻撃するまでだ」

クロビトは艦隊に散開するように伝える。

「各艦、散開しつつ砲撃せよ。敵は強いが、被害を分散させることこそ勝利への一歩だ!」

これで勝てるとは誰も思っていない。
だが、クロビトは負けて撤退するよりはここで死んだほうがましだと考えていた。

「(上は何もわかってはいない)」

初戦での敗北は、上層部を絶望させるには至らなかった。
味方の頼りなさが強調され、「もっと優秀な人員が居れば勝てた」という結論に至ったのである。
ここで負けて帰れば、連合軍からの叱責を受けるだけだ。

「(死んだ者は平等だ。名誉を汚されようと、どんなに罵られようと――――その魂まで踏み潰されることはない)」

クロビトはそう考え、砲撃の到達を待った。
だが、当然ながら砲撃は到達せず、要塞表面に張り巡らされたシールドに直撃する。

「敵のシールド減衰率は!」
「21%、現実的な数字です!」
「よし、攻撃を続行せよ」

クロビトはそれが無駄な事だと知りつつも、攻撃を続けるように命令する。
そして、それに呼応するように、要塞からVe’zの艦隊が現れ、小型艦に攻撃を集中し始める。

『こちらの艦隊が撃たれている、長射程艦で反撃を行うが、よろしいか?』
「構わない。主力艦、戦艦クラスは攻撃続行! 巡洋艦以下は敵の艦隊に反撃を行え!」

連合軍は、よせばいいのにVe’zの艦隊に攻撃を始めてしまう。
それは、クロビトにとっては最善だったが――――連合軍にとっては、最悪の選択肢であったのだ。



『82......111.......132.....』
『421.......433.......450.......』

アロウトの玉座の間に、二体のVe’zの声が響く。
僕はそれを聞きながら、反撃を待っていた。
僕の前に跪くのは、ジェネラスとアドラスの二人である。
ジェネラスは要塞と艦隊を、アドラスはキジラ=ノクティラノスの意識を詰め込んだコンテナを破壊させることにより、「罪科」を蓄積させていた。
やられた分だけ、やり返すために。

「カサンドラ、両星系の軍の総数は?」
『ケージヒトが七十万弱、ドロシアル星系には九十万です』
「それなら、二時間も続ければ終わるか」

もしこれを、エリスが知ったら、僕は卑怯者と罵られるかもしれない。
だが、他にどうすることもできない。
Ve’zがVe’zらしく生きる上で、弓引く者の存在は必ず在るのだから。
綺麗事だけで、世界は回らない。

「それでも」

僕は前を向く。
いつか、誰とも敵対しない未来が来ればいい。
勝てないとも知らず、弓を引き続けろ。
その民族の全てが滅び去るまで。
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