125 / 200
シーズン6-Ve’z同盟軍対TRINITY.連合軍戦線
125-狩人たちの戦場
しおりを挟む
「クソッ....!」
分隊長は、コンソールを叩いた。
司令官不在の状況で、副司令は襲ってくるVe’z艦隊に対して、全艦隊に分隊長を割り振り逃走させることを選んだ。
そして、第221番分隊長に命じられた彼は、なんとか艦隊を退避させたところであった。
「雑魚なんかじゃなかった.....」
ブリッジに声が響く。
この艦のレーダー係である女性が発した声が。
絶望している。先ほどまで、ノリノリで敵を追い詰めていた彼女がである。
「ふざけんな、俺たちを利用したってのか」
『こ.......ら! 第3.......接敵............全滅――――――』
ローカル通信がブリッジに響き、破壊音と共に途絶する。
状況は絶望的であった。
退路もいつの間にか断たれており、分散した艦隊に出来ることはただ逃げる事だけ。
だが、
「エース艦隊も全滅したのに、俺たちにできる事なんてあるのか?」
「それでも今はお前が分隊長だ」
『.....頼りにしています』
味方からの通信を受け、彼は艦隊のオーバービューをチェックする。
最初は七隻いた艦隊は、二隻が落とされ五隻となっていた。
「大破が1、中破が4、無事なのはこの艦だけか....」
指揮系統が滅茶苦茶になった影響で、TRINITY.艦が一隻、ジスティカ王国艦が三隻、オーベルン神聖連合艦が一隻という状況になっていた。
旗艦はジスティカ王国の艦であり、彼を庇って沈んだ艦はTRINITY.とオーベルン神聖連合の艦であった。
『指揮するものが居なくなれば、皆の命運も尽きます。未来を――――よろしくお願いいたします』
『神は正道を歩めと仰いました。分隊長、貴方の為に殉じる事こそ我が定めだったのです』
二人の末期の言葉を思い出し、彼は震えた。
そして、恐怖がやってくる。
「.....ワープアウト反応あり! 数、3!」
「全艦、戦闘準備!」
彼は全艦に指示を出す。
ここにピンポイントで飛んでくる少数の艦船など、敵以外ありえないからだ。
だが、
「味方だ! 攻撃中止!」
飛んできたのは、ボロボロになったTRINITY.艦二隻とキロマイア皇国艦一隻であった。
慌ててスキャンするが、既に生命反応は数人分しか残っていなかった。
『.......そちらは、味方か?』
「そうだが.....」
『頼む、逃げてくれ....奴らは、俺たちの仲間を回収している、死んだ奴も生きたやつも、例外はない......頼む、俺たちの事は気にするな....!』
「そういわれても....」
「新たにワープ反応、1!」
その時、ブリッジに報告が響いた。
そして絶望が訪れる。
現れた艦艇は、全員の予想を裏切るものだった。
巨大なカーゴを抱えた戦闘艦と言った様相で、触手型砲塔を備えていた。
『あ、あれだ! あれが俺の仲間たちを....!』
直後、その艦から無数の小型機が発艦する。
『逃げろっ!』
そして、221分隊の者たちは見た。
小型機が敗残艦に纏わりつき、装甲を貫通して内部の人間を回収していく姿を。
『くそっ、化け物が!!』
「待て、CR-021! 勝手な行動は...」
その時、艦隊の一隻....TRINITY.艦が攻撃した。
攻撃して、しまった。
『ぐわああああっ――――』
「CR-021!! CR-021!!」
Ve’z艦の放ったたった一撃の砲撃で、中破していたとはいえTRINITY.艦はシールドと装甲を抜かれて轟沈した。
彼は一度も見たことがなかった、レーザー砲が、艦を貫通して突き抜けていく所を。
「全艦に告ぐ! 撤退せよ!」
『了解!!』
艦隊は即座に反転し、ワープで離脱しようとする。
「ワープエネルギー確保、いつでもワープできます!」
『こちらBR-111、ワープドライブが安定しない、敵に何かされている! ......私たちの事はいい、逃げてください!』
「分かった、協力....感謝する」
そして、更に一隻を置いて艦隊は離脱した。
結局この艦隊も、一隻ずつすり減らされて全滅するのであるが......
それは結局、この星系での戦闘において......一般的な事であった。
分隊長は、コンソールを叩いた。
司令官不在の状況で、副司令は襲ってくるVe’z艦隊に対して、全艦隊に分隊長を割り振り逃走させることを選んだ。
そして、第221番分隊長に命じられた彼は、なんとか艦隊を退避させたところであった。
「雑魚なんかじゃなかった.....」
ブリッジに声が響く。
この艦のレーダー係である女性が発した声が。
絶望している。先ほどまで、ノリノリで敵を追い詰めていた彼女がである。
「ふざけんな、俺たちを利用したってのか」
『こ.......ら! 第3.......接敵............全滅――――――』
ローカル通信がブリッジに響き、破壊音と共に途絶する。
状況は絶望的であった。
退路もいつの間にか断たれており、分散した艦隊に出来ることはただ逃げる事だけ。
だが、
「エース艦隊も全滅したのに、俺たちにできる事なんてあるのか?」
「それでも今はお前が分隊長だ」
『.....頼りにしています』
味方からの通信を受け、彼は艦隊のオーバービューをチェックする。
最初は七隻いた艦隊は、二隻が落とされ五隻となっていた。
「大破が1、中破が4、無事なのはこの艦だけか....」
指揮系統が滅茶苦茶になった影響で、TRINITY.艦が一隻、ジスティカ王国艦が三隻、オーベルン神聖連合艦が一隻という状況になっていた。
旗艦はジスティカ王国の艦であり、彼を庇って沈んだ艦はTRINITY.とオーベルン神聖連合の艦であった。
『指揮するものが居なくなれば、皆の命運も尽きます。未来を――――よろしくお願いいたします』
『神は正道を歩めと仰いました。分隊長、貴方の為に殉じる事こそ我が定めだったのです』
二人の末期の言葉を思い出し、彼は震えた。
そして、恐怖がやってくる。
「.....ワープアウト反応あり! 数、3!」
「全艦、戦闘準備!」
彼は全艦に指示を出す。
ここにピンポイントで飛んでくる少数の艦船など、敵以外ありえないからだ。
だが、
「味方だ! 攻撃中止!」
飛んできたのは、ボロボロになったTRINITY.艦二隻とキロマイア皇国艦一隻であった。
慌ててスキャンするが、既に生命反応は数人分しか残っていなかった。
『.......そちらは、味方か?』
「そうだが.....」
『頼む、逃げてくれ....奴らは、俺たちの仲間を回収している、死んだ奴も生きたやつも、例外はない......頼む、俺たちの事は気にするな....!』
「そういわれても....」
「新たにワープ反応、1!」
その時、ブリッジに報告が響いた。
そして絶望が訪れる。
現れた艦艇は、全員の予想を裏切るものだった。
巨大なカーゴを抱えた戦闘艦と言った様相で、触手型砲塔を備えていた。
『あ、あれだ! あれが俺の仲間たちを....!』
直後、その艦から無数の小型機が発艦する。
『逃げろっ!』
そして、221分隊の者たちは見た。
小型機が敗残艦に纏わりつき、装甲を貫通して内部の人間を回収していく姿を。
『くそっ、化け物が!!』
「待て、CR-021! 勝手な行動は...」
その時、艦隊の一隻....TRINITY.艦が攻撃した。
攻撃して、しまった。
『ぐわああああっ――――』
「CR-021!! CR-021!!」
Ve’z艦の放ったたった一撃の砲撃で、中破していたとはいえTRINITY.艦はシールドと装甲を抜かれて轟沈した。
彼は一度も見たことがなかった、レーザー砲が、艦を貫通して突き抜けていく所を。
「全艦に告ぐ! 撤退せよ!」
『了解!!』
艦隊は即座に反転し、ワープで離脱しようとする。
「ワープエネルギー確保、いつでもワープできます!」
『こちらBR-111、ワープドライブが安定しない、敵に何かされている! ......私たちの事はいい、逃げてください!』
「分かった、協力....感謝する」
そして、更に一隻を置いて艦隊は離脱した。
結局この艦隊も、一隻ずつすり減らされて全滅するのであるが......
それは結局、この星系での戦闘において......一般的な事であった。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)
あおっち
SF
脈々と続く宇宙の無数の文明。その中でより高度に発展した高高度文明があった。その文明の流通、移動を支え光速を超えて遥か彼方の銀河や銀河内を瞬時に移動できるジャンプ技術。それを可能にしたジャンプ血清。
その血清は生体(人間)へのダメージをコントロールする血清、ワクチンなのだ。そのジャンプ血清をめぐり遥か大昔、大銀河戦争が起こり多くの高高度文明が滅びた。
その生き残りの文明が新たに見つけた地、ネイジェア星域。私達、天の川銀河の反対の宙域だった。そこで再び高高度文明が栄えたが、再びジャンプ血清供給に陰りが。天の川銀河レベルで再び紛争が勃発しかけていた。
そして紛争の火種は地球へ。
その地球では強大な軍事組織、中華帝国連邦、通称「AXIS」とそれに対抗する為、日本を中心とした加盟国軍組織「シーラス」が対峙していたのだ。
近未来の地球と太古から続くネイジェア星域皇国との交流、天然ジャンプ血清保持者の椎葉清らが居る日本と、高高度文明異星人(シーラス皇国)の末裔、マズル家のポーランド家族を描いたSF大河小説「メジャー・インフラトン」の前章譚、7部作。
第1部「太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!」。
ジャンプ血清は保持者の傷ついた体を異例のスピードで回復させた。また血清のオリジナル保持者(ゼロ・スターター)は、独自の能力を飛躍的に引き上げる事が出来たのだ。
第2次大戦時、無敵兵士と言われた舩坂弘氏をモデルに御舩大(ミフネヒロシ)の無敵ふりと、近代世界のジャンプ血清保持者、椎葉きよし(通称:お子ちゃまきよし)の現在と過去。
ジャンプ血清の力、そして人類の未来をかけた壮大な戦いが、いま、始まる――。
彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。
本格的な戦闘シーンもあり、面白い場面も増えます。
是非、ご覧あれ。
※加筆や修正が予告なしにあります。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
【なろう430万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ
海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。
衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。
絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。
ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。
大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。
はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?
小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。
カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。
Reboot ~AIに管理を任せたVRMMOが反旗を翻したので運営と力を合わせて攻略します~
霧氷こあ
SF
フルダイブMMORPGのクローズドβテストに参加した三人が、システム統括のAI『アイリス』によって閉じ込められた。
それを助けるためログインしたクロノスだったが、アイリスの妨害によりレベル1に……!?
見兼ねたシステム設計者で運営である『イヴ』がハイエルフの姿を借りて仮想空間に入り込む。だがそこはすでに、AIが統治する恐ろしくも残酷な世界だった。
「ここは現実であって、現実ではないの」
自我を持ち始めた混沌とした世界、乖離していく紅の世界。相反する二つを結ぶ少年と少女を描いたSFファンタジー。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
異世界に転生したのにスキルも貰えずに吸血鬼に拉致されてロボットを修理しろってどういうことなのか
ピモラス
ファンタジー
自動車工場で働くケンはいつも通りに仕事を終えて、帰りのバスのなかでうたた寝をしていた。
目を覚ますと、見知らぬ草原の真っ只中だった。
なんとか民家を見つけ、助けを求めたのだが、兵士を呼ばれて投獄されてしまう。
そこへ返り血に染まった吸血鬼が襲撃に現れ、ケンを誘拐する。
その目的は「ロボットを修理しろ」とのことだった・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる