122 / 180
シーズン6-Ve’z同盟軍対TRINITY.連合軍戦線
122-騙して悪いが、仕事なんでな
しおりを挟む
その日。
ディレンズ、クロモース、ジジルト、カイア――――名だたるVe’zの領域に、TRINITY.の連合軍が攻撃を仕掛けた。
主力艦をそれぞれ四隻ずつ動員し、五万隻の艦隊が何百もの分隊に分けられて進軍していた。
だが、彼らを待っていたのは――――ただひたすらの、静寂であった。
確かに、艦隊はいた。
戦闘態勢にはあるものの、ターゲットすらしていない状態で浮いていた。
「何をしている....?」
『どうせ攻撃できないと高をくくっているのでしょう』
『....しかし、我々から撃ってしまっては、防衛戦の建前が....』
連合軍は攻めあぐねていた。
あくまで、攻めて来る可能性があるので征伐するという内容であるため、撃ってこない対象を一方的に撃つのは躊躇われた。
だが、彼等は忘れていた。
誰がこの戦の言い出しっぺかを...
『おい、何故撃っている!?』
『分かりません、TRINITY.が発砲しました!』
クロモース星系で、TRINITY.が誰より先に撃った。
その一撃は遠距離であるのにもかかわらず、確実にVe’zの小型艦に直撃した。
勿論、シールドはまるで減衰していなかったが――――その途端。
「TRINITY.艦、撃沈されました! 攻撃が続行されています!」
「わ、我々も攻撃開始! TRINITY.艦を援護せよ!!」
「攻撃開始!」
「神よ、我らに加護を! 撃て!」
Ve‘z艦隊が一斉に反撃し、TRINITY.艦に被害が出たことで、クロモース星系に駐留する艦隊は、一斉攻撃に出た。
そして、当然ながら...Ve’zの一斉反撃に遭った。
多くの被害を出しながらも、連合軍はVe‘zの艦船数隻を落とすことに成功していた。
それが連合軍の士気を高め、ひとまず第一次戦線は、連合軍の勝利となったのであった。
『何と愚かな.....』
ケルビスが唖然としていた。
だがそれは、味方に対する失望ではない。
『まさか、あんな簡単に騙されるとは.....愚かにもほどがあるのでは....?』
ケルビスはあまりの事態に目を見開いていた。
「どうやら、ティニアの策が上手くいったようだな」
『我々の強さを伝説だけでカバーしていたので、違和感に気づけなかったようですね』
ハリボテ艦隊計画。
敵に上手く油断してもらうにはどうすればいいか相談したところ、ティニアが考えついたのが、「ガワだけ最新版の艦を用意して、中身は型落ち」という作戦であった。
正直なところ、型落ちをサルベージする方が難しかったが(二世代前となると数億年前の記録に遡らなければならない)、上手くいったようだ。
『ゲートに干渉も成功したよ。これで、遠隔からいつでも停止させられる』
「了解」
ポラノルとジェネラスが組んで、ゲートへの干渉も成功したようだ。
これで、ある程度奥まった場所まで誘い込んで、一気に殲滅できる。
万全を期するため、ジジルト星系の軍は少しだけ圧倒している。
これで、”死闘”を演じさせつつ、星系の奥に誘い込める。
『しかし、良かったのですか? このような形とはいえ、我々が敗北してしまうのは....』
「人間は、勝利を重ねるたびに自信を付ける。だがその自信は、前提が崩れ去れば、簡単に脆弱なものとなる。加えて、根拠のない自信は、考えを鈍らせ、愚かであることを許容させてしまう」
僕はカサンドラに解説する。
「そして、人間にとって戦争とは、勝利の美酒に酔う度に狂気を加速させるものだ。今回、人間たちは――――僕たちに勝利した。思考停止するには十分だろう?」
『成程――人とは、全体が賢くあるわけではありませんからね。一人二人賢く、我々の策や違和感に気づいたとしても――――全体を変える力にはなり得ない』
そう。
「上位者に連続で勝つことで、何故勝てたかを考えさせず調子に乗らせる」事こそが本懐。
彼らはVe’zに真っ向から喧嘩を売ったのだ。
「汚辱に塗れた敗北だけでは飽き足りない。何を置いても僕たちには勝てないという事を、魂に刻み付けて死んでもらおう」
僕は静かな苛立ちを抑えて、そう宣言したのであった。
ディレンズ、クロモース、ジジルト、カイア――――名だたるVe’zの領域に、TRINITY.の連合軍が攻撃を仕掛けた。
主力艦をそれぞれ四隻ずつ動員し、五万隻の艦隊が何百もの分隊に分けられて進軍していた。
だが、彼らを待っていたのは――――ただひたすらの、静寂であった。
確かに、艦隊はいた。
戦闘態勢にはあるものの、ターゲットすらしていない状態で浮いていた。
「何をしている....?」
『どうせ攻撃できないと高をくくっているのでしょう』
『....しかし、我々から撃ってしまっては、防衛戦の建前が....』
連合軍は攻めあぐねていた。
あくまで、攻めて来る可能性があるので征伐するという内容であるため、撃ってこない対象を一方的に撃つのは躊躇われた。
だが、彼等は忘れていた。
誰がこの戦の言い出しっぺかを...
『おい、何故撃っている!?』
『分かりません、TRINITY.が発砲しました!』
クロモース星系で、TRINITY.が誰より先に撃った。
その一撃は遠距離であるのにもかかわらず、確実にVe’zの小型艦に直撃した。
勿論、シールドはまるで減衰していなかったが――――その途端。
「TRINITY.艦、撃沈されました! 攻撃が続行されています!」
「わ、我々も攻撃開始! TRINITY.艦を援護せよ!!」
「攻撃開始!」
「神よ、我らに加護を! 撃て!」
Ve‘z艦隊が一斉に反撃し、TRINITY.艦に被害が出たことで、クロモース星系に駐留する艦隊は、一斉攻撃に出た。
そして、当然ながら...Ve’zの一斉反撃に遭った。
多くの被害を出しながらも、連合軍はVe‘zの艦船数隻を落とすことに成功していた。
それが連合軍の士気を高め、ひとまず第一次戦線は、連合軍の勝利となったのであった。
『何と愚かな.....』
ケルビスが唖然としていた。
だがそれは、味方に対する失望ではない。
『まさか、あんな簡単に騙されるとは.....愚かにもほどがあるのでは....?』
ケルビスはあまりの事態に目を見開いていた。
「どうやら、ティニアの策が上手くいったようだな」
『我々の強さを伝説だけでカバーしていたので、違和感に気づけなかったようですね』
ハリボテ艦隊計画。
敵に上手く油断してもらうにはどうすればいいか相談したところ、ティニアが考えついたのが、「ガワだけ最新版の艦を用意して、中身は型落ち」という作戦であった。
正直なところ、型落ちをサルベージする方が難しかったが(二世代前となると数億年前の記録に遡らなければならない)、上手くいったようだ。
『ゲートに干渉も成功したよ。これで、遠隔からいつでも停止させられる』
「了解」
ポラノルとジェネラスが組んで、ゲートへの干渉も成功したようだ。
これで、ある程度奥まった場所まで誘い込んで、一気に殲滅できる。
万全を期するため、ジジルト星系の軍は少しだけ圧倒している。
これで、”死闘”を演じさせつつ、星系の奥に誘い込める。
『しかし、良かったのですか? このような形とはいえ、我々が敗北してしまうのは....』
「人間は、勝利を重ねるたびに自信を付ける。だがその自信は、前提が崩れ去れば、簡単に脆弱なものとなる。加えて、根拠のない自信は、考えを鈍らせ、愚かであることを許容させてしまう」
僕はカサンドラに解説する。
「そして、人間にとって戦争とは、勝利の美酒に酔う度に狂気を加速させるものだ。今回、人間たちは――――僕たちに勝利した。思考停止するには十分だろう?」
『成程――人とは、全体が賢くあるわけではありませんからね。一人二人賢く、我々の策や違和感に気づいたとしても――――全体を変える力にはなり得ない』
そう。
「上位者に連続で勝つことで、何故勝てたかを考えさせず調子に乗らせる」事こそが本懐。
彼らはVe’zに真っ向から喧嘩を売ったのだ。
「汚辱に塗れた敗北だけでは飽き足りない。何を置いても僕たちには勝てないという事を、魂に刻み付けて死んでもらおう」
僕は静かな苛立ちを抑えて、そう宣言したのであった。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜
華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日
この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。
札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。
渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。
この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。
一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。
そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。
この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。
この作品はフィクションです。
実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。
―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――
EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ――
とある別の歴史を歩んだ世界。
その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。
第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる――
大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。
そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。
そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。
そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。
そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。
果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。
未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する――
注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。
注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。
注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。
注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。
注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
最強のコミュ障探索者、Sランクモンスターから美少女配信者を助けてバズりたおす~でも人前で喋るとか無理なのでコラボ配信は断固お断りします!~
尾藤みそぎ
ファンタジー
陰キャのコミュ障女子高生、灰戸亜紀は人見知りが過ぎるあまりソロでのダンジョン探索をライフワークにしている変わり者。そんな彼女は、ダンジョンの出現に呼応して「プライムアビリティ」に覚醒した希少な特級探索者の1人でもあった。
ある日、亜紀はダンジョンの中層に突如現れたSランクモンスターのサラマンドラに襲われている探索者と遭遇する。
亜紀は人助けと思って、サラマンドラを一撃で撃破し探索者を救出。
ところが、襲われていたのは探索者兼インフルエンサーとして知られる水無瀬しずくで。しかも、救出の様子はすべて生配信されてしまっていた!?
そして配信された動画がバズりまくる中、偶然にも同じ学校の生徒だった水無瀬しずくがお礼に現れたことで、亜紀は瞬く間に身バレしてしまう。
さらには、ダンジョン管理局に目をつけられて依頼が舞い込んだり、水無瀬しずくからコラボ配信を持ちかけられたり。
コミュ障を極めてひっそりと生活していた亜紀の日常はガラリと様相を変えて行く!
はたして表舞台に立たされてしまった亜紀は安らぎのぼっちライフを守り抜くことができるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる