SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

文字の大きさ
上 下
121 / 200
シーズン6-Ve’z同盟軍対TRINITY.連合軍戦線

121-大戦争の幕開け

しおりを挟む
TRINITY.合同会議。
そこには、錚々たる面々が集まっていた。
キロマイア皇国デルジャ・イシネン皇帝。
オーベルン神聖連合イラサ・ファルトシゲン法皇。
ジスティカ王国リューギリス・エルライン国王。
ヘルティエット王国ハニカ・リーシャイ国王。
そして、TRINITY.総裁エルドリヒ・オーンスタイン。
彼等の議題に挙がっているのは、目に余るVe‘zの暴虐である。
遥か過去にあった脅威が、今自分たちの眼前に突き出されては、四カ国の指導者たちも、重い腰を上げなければいけないと理解しているのだ。

「......しかし、どうされるおつもりですか?」

ハニカ国王が、重々しく口にする。
彼女はビージアイナやクロペルと同じ女性指導者であり、この場の沈黙を破るように慎重に口にする。

「奴らの末端の艦は、囲んで叩けば落とせる。とにかく、我らが結束すれば、痛手を負わせられるのだと示さなければならぬ」
「若干の私怨も入っているのかね、デルジャ殿」
「......くだらん」

デルジャ・イシネンは、Ve’zとの共闘で支持率の低下した父ハルト・イシネンを無理やり退位させ、即位した皇帝である。
そのことをリューギリスに指摘され、顔を赤くして一蹴した。

「静粛に! この場は言い争う場ではありませんぞ」

そして、エルドリヒがそれを仲裁した。
二者はそれで矛を収めた。
TRINITY.に表立って反抗するのは得策ではないと、二人も分かっているのだ。
TRINITY.との関係が悪くなれば、送られてくる警官の質もまた低下し、結果犯罪者と結託して国内の治安を悪化させるという前例が無数にあるからだ。

「ここは一つ、それぞれが出せる戦力から話し合ってみるのはどうでしょうか?」

その時、イラサ法皇がそう口にした。
その言葉だけで、流れは完全に戦力開示の方向へ移動した。

「キロマイアは先のオルダモン侵攻で痛手を負った。しかし、主力艦なら五隻、通常戦力であれば二十万出せる」
「私達のオーベルンは、異教徒と共に戦う事をあまりよくは思っていません、ですので、主力艦は二隻、通常戦力は三十万とさせて頂きたい」
「ジスティカのメンツに賭けて、ここは主力艦を十五隻、戦力は八十万出そう」
「ヘルティエットの軍部は連座制ですが、恐らく主力艦なら二隻、戦力は五十万程度出せる筈です」
「TRINITY.からは主力艦を四十五隻、通常戦力を二百万動員いたしましょう、宇宙の脅威を見逃すわけには参りませんからな」

こうして、戦力の開示が行われる。
国家間の戦争や駆け引きもある以上、出し渋るのは仕方がないことではあるが、大盤振る舞いをしているのはTRINITY.だけとなった。
TRINITY.がもっとも多く損をし、最も多くの支持を勝ち取る形となったのであった。






「という訳で、TRINITY.連合軍が攻めてくるという訳だ」

僕は円卓に座り、その場にいる全員に説明する。
その場にいるのは、クロペル共和国女王のティニアと、オルダモン連邦「サーヴァント・オブ・ヴェズ」の首魁ディオナ・エンズクレイの二人である。

「あんたらの超越的な強さなら、わざわざ話し合う事でもないだろう?」
「ディオナ殿、こうして集められたからには理由があると思います」

ディオナは、所謂危険な女性といった雰囲気の仕事人だ。
Ve’zとの交渉や派遣戦闘などを行うサーヴァント・オブ・ヴェズの首魁であるから、そこは弁えているのだが。

「僕たちは誓約により、Ve’z艦隊自体に攻撃された場合にのみ手を出すことが許されている。だから、もし敵がVe’z艦隊を回避した場合、防御戦はVe’z艦隊到着までそちらで行ってもらう必要がある」
「構いません、助けに来てくださるのならば...」
「構わないよ、もとより犠牲なしで守ってもらうだけ...も忍びない」

オルダモン連邦は仕方なしに協力している面もあるが、クロペル共和国に対して敵対的な世論を流布していたイワノフ主席はもういない。
国民の陥った狂気も、いずれ元に戻っていくそうだ。

「それにね、アタシらは....その、強い存在に憧れるのさ。元の歴史がアレだからさ、強い奴に従って、強い奴の背を見るのが好きなんだよ」

オルダモン連邦はもともと、アンデュラス合衆国の属国であるオルダーティアという国家だった。
エミドの侵攻によりアンデュラス合衆国が完全に消滅してからというもの、オルダーティアは完全に単独で生きていくのを強いられた。
資源が豊富で広大な国土を持っていたオルダーティアの民たちは、強い指導者を求め、結果として初代主席ザルスク・ヴィネードが就任、国の名前をオルダーの決起――――オルダモン連邦という名前に改めた。
Ve’zの記録ではそうなっている。

「まあいい。弱いものは狙われる――――それを把握して、防衛計画を練ってほしい」
「善処いたします」
「ああ」

僕の言葉に、二人は頷いたのだった。
激動の時代が始まる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【SF短編】エリオの方舟

ミカ塚原
SF
地球全土を襲った二一世紀の「大破局」から、約二〇〇年後の世界。少年エリオ・マーキュリーは世界で施行された「異常才覚者矯正法」に基づいて、大洋に浮かぶ孤島の矯正施設に収容された。無為な労働と意識の矯正を強いられる日々の中で、女性教官リネットとの出会いが、エリオを自らの選択へ導いてゆく。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

Reboot ~AIに管理を任せたVRMMOが反旗を翻したので運営と力を合わせて攻略します~

霧氷こあ
SF
 フルダイブMMORPGのクローズドβテストに参加した三人が、システム統括のAI『アイリス』によって閉じ込められた。  それを助けるためログインしたクロノスだったが、アイリスの妨害によりレベル1に……!?  見兼ねたシステム設計者で運営である『イヴ』がハイエルフの姿を借りて仮想空間に入り込む。だがそこはすでに、AIが統治する恐ろしくも残酷な世界だった。 「ここは現実であって、現実ではないの」  自我を持ち始めた混沌とした世界、乖離していく紅の世界。相反する二つを結ぶ少年と少女を描いたSFファンタジー。

【なろう430万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

体内内蔵スマホ

廣瀬純一
SF
体に内蔵されたスマホのチップのバグで男女の体が入れ替わる話

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

処理中です...