116 / 200
シーズン5-キロマイア皇国&Ve’z対オルダモン連邦&クロペル共和国共同戦線
116-彼方の地より来たれり
しおりを挟む
『これは一体?』
「エリスには絶対バレたくないからな.....宝物殿に匿いたい」
『......貴女様がそう仰るのであれば』
数時間後。
僕はグレゴルに直談判し、あの地下基地を丸ごと宝物殿内部の惑星に移設することに成功した。
気象条件がほぼパターと変わらない惑星を選んだつもりだ。
『それから、エネルギーブロックの増産を。一気に人口が増える』
『お任せください、エリアス様』
そして僕は、タッティラにエネルギーブロックの生産を依頼する。
カーライル基地のオリジナルには通常の食事を与えるが、流石にエリスと僕を賄い、少し余る程度の農園では、百と少しの数いるクローンに食事を配給する余裕はない。
「ポラノル、僕のいない間に何かあったか?」
『特にはない、って言ったらアレだけど。ボクの方で、オルダモン連邦の主席を処分したよ』
「そうか」
オルダモン連邦の主席は、負けが確定するや否や側近を主席に任じて逃げた。
だが、亡命直前でポラノルの率いるヴィジラント=ノクティラノス艦隊に襲われ、命を落とした。
「キロマイアがどうするかは勝手だが、ケルビスの方はどうなっている?」
『ケルビスは、現在パター星系で活動中です。詳細は話されませんでしたが、恐らくクロペル共和国の女王と交渉中なのでしょう』
メッティーラが答える。
パター星系......何故あそこで? と一瞬思うが、あの場所は一方通行の重力流を通れば首都から近い。
アクセスがいいうえで、こちらと交渉が決裂しても構わない場所を選んだのだろう。
したたかさを感じる。
「......ケルビスには交渉を急がせろ。僕は所要があるので失礼する」
『はっ』
僕は一旦、カーライル基地が位置する惑星........『フィオ』へとテレポートする。
「むむ。君は......感謝する、この惑星の探査任務を与えてくれたおかげで、周囲の環境を把握できた。そして.....恐らく、吾輩の名はニトのようだ」
「ニトか。記憶が戻ったか?」
「いいや。眠っていた時間が長すぎた、吾輩には何もわからん。イナヅマノカミがある程度の情報を与えてくれたものの、吾輩はもともと多くを語る身ではないようだ」
ニトは相変わらず謎の存在だ。
だが、無視できないのは、カーライル基地の元の国の情報――――
「『アルケーシア』とは、何だ?」
『カーライル基地の属する国家です』
「だが、記録にはない」
『外部と遮断されていたため、本国がどうなったかは不明です。ですが、我々はワームホールを使い、この地にやってきました』
「.....もしや、エミドと関連しているのか?」
『エミド? 我々の言語では、『集合体』の意味を持ちますね』
........エミドの存在は知らないが、その言葉の意味は知っている。
つまりは......エミドの源流か?
何にせよ、テクノロジーはエミドなど遥かに及ばない程高度だ。
基礎理論から情報があるため、対エミドの戦力補強に大きく貢献するだろう。
「ニト、食料はどうなっている?」
「吾輩も含め、備蓄の流動食を貰っている。ただし、このまま生活が続くと一週間程度しか持たぬようだ」
「よし、分かった。では、数時間後にエネルギーブロックが入ったコンテナを転送する。それを分け合ってくれ......味はないが」
「吾輩はもともと味が分からん。高度に最適化された肉体は、固形物も本来は不要だ」
「なら、何故......成程」
見れば、エネルギー供給システムがオフラインになっている。
確認すると、最初から付いていないようだ。
「吾輩の趣味だったようだな」
「........」
ニトの姿を見て、僕は少しだけ思考を巡らせた。
彼女は高度に最適化された肉体を持ちながらも、最適化された思考を持たない個体だ。
Ve’zのような、自害するという結論に至らなかった、謂わば完璧な生命体だ。
もし、アルケーシアの真実にたどり着く事が出来れば.......Ve’zの行き着くべき真の道も見えてくるだろうか?
「それにしても、吾輩のクローンが動き出した理由が分からん。普通は動かぬのだろう?」
「そうだな」
僕は巨大な謎に直面し、エリスを放置していたことをすっかり忘れてしまっていたのだった。
「エリスには絶対バレたくないからな.....宝物殿に匿いたい」
『......貴女様がそう仰るのであれば』
数時間後。
僕はグレゴルに直談判し、あの地下基地を丸ごと宝物殿内部の惑星に移設することに成功した。
気象条件がほぼパターと変わらない惑星を選んだつもりだ。
『それから、エネルギーブロックの増産を。一気に人口が増える』
『お任せください、エリアス様』
そして僕は、タッティラにエネルギーブロックの生産を依頼する。
カーライル基地のオリジナルには通常の食事を与えるが、流石にエリスと僕を賄い、少し余る程度の農園では、百と少しの数いるクローンに食事を配給する余裕はない。
「ポラノル、僕のいない間に何かあったか?」
『特にはない、って言ったらアレだけど。ボクの方で、オルダモン連邦の主席を処分したよ』
「そうか」
オルダモン連邦の主席は、負けが確定するや否や側近を主席に任じて逃げた。
だが、亡命直前でポラノルの率いるヴィジラント=ノクティラノス艦隊に襲われ、命を落とした。
「キロマイアがどうするかは勝手だが、ケルビスの方はどうなっている?」
『ケルビスは、現在パター星系で活動中です。詳細は話されませんでしたが、恐らくクロペル共和国の女王と交渉中なのでしょう』
メッティーラが答える。
パター星系......何故あそこで? と一瞬思うが、あの場所は一方通行の重力流を通れば首都から近い。
アクセスがいいうえで、こちらと交渉が決裂しても構わない場所を選んだのだろう。
したたかさを感じる。
「......ケルビスには交渉を急がせろ。僕は所要があるので失礼する」
『はっ』
僕は一旦、カーライル基地が位置する惑星........『フィオ』へとテレポートする。
「むむ。君は......感謝する、この惑星の探査任務を与えてくれたおかげで、周囲の環境を把握できた。そして.....恐らく、吾輩の名はニトのようだ」
「ニトか。記憶が戻ったか?」
「いいや。眠っていた時間が長すぎた、吾輩には何もわからん。イナヅマノカミがある程度の情報を与えてくれたものの、吾輩はもともと多くを語る身ではないようだ」
ニトは相変わらず謎の存在だ。
だが、無視できないのは、カーライル基地の元の国の情報――――
「『アルケーシア』とは、何だ?」
『カーライル基地の属する国家です』
「だが、記録にはない」
『外部と遮断されていたため、本国がどうなったかは不明です。ですが、我々はワームホールを使い、この地にやってきました』
「.....もしや、エミドと関連しているのか?」
『エミド? 我々の言語では、『集合体』の意味を持ちますね』
........エミドの存在は知らないが、その言葉の意味は知っている。
つまりは......エミドの源流か?
何にせよ、テクノロジーはエミドなど遥かに及ばない程高度だ。
基礎理論から情報があるため、対エミドの戦力補強に大きく貢献するだろう。
「ニト、食料はどうなっている?」
「吾輩も含め、備蓄の流動食を貰っている。ただし、このまま生活が続くと一週間程度しか持たぬようだ」
「よし、分かった。では、数時間後にエネルギーブロックが入ったコンテナを転送する。それを分け合ってくれ......味はないが」
「吾輩はもともと味が分からん。高度に最適化された肉体は、固形物も本来は不要だ」
「なら、何故......成程」
見れば、エネルギー供給システムがオフラインになっている。
確認すると、最初から付いていないようだ。
「吾輩の趣味だったようだな」
「........」
ニトの姿を見て、僕は少しだけ思考を巡らせた。
彼女は高度に最適化された肉体を持ちながらも、最適化された思考を持たない個体だ。
Ve’zのような、自害するという結論に至らなかった、謂わば完璧な生命体だ。
もし、アルケーシアの真実にたどり着く事が出来れば.......Ve’zの行き着くべき真の道も見えてくるだろうか?
「それにしても、吾輩のクローンが動き出した理由が分からん。普通は動かぬのだろう?」
「そうだな」
僕は巨大な謎に直面し、エリスを放置していたことをすっかり忘れてしまっていたのだった。
10
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
【なろう430万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ
海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。
衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。
絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。
ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。
大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。
はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?
小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。
カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。
Reboot ~AIに管理を任せたVRMMOが反旗を翻したので運営と力を合わせて攻略します~
霧氷こあ
SF
フルダイブMMORPGのクローズドβテストに参加した三人が、システム統括のAI『アイリス』によって閉じ込められた。
それを助けるためログインしたクロノスだったが、アイリスの妨害によりレベル1に……!?
見兼ねたシステム設計者で運営である『イヴ』がハイエルフの姿を借りて仮想空間に入り込む。だがそこはすでに、AIが統治する恐ろしくも残酷な世界だった。
「ここは現実であって、現実ではないの」
自我を持ち始めた混沌とした世界、乖離していく紅の世界。相反する二つを結ぶ少年と少女を描いたSFファンタジー。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
異世界に転生したのにスキルも貰えずに吸血鬼に拉致されてロボットを修理しろってどういうことなのか
ピモラス
ファンタジー
自動車工場で働くケンはいつも通りに仕事を終えて、帰りのバスのなかでうたた寝をしていた。
目を覚ますと、見知らぬ草原の真っ只中だった。
なんとか民家を見つけ、助けを求めたのだが、兵士を呼ばれて投獄されてしまう。
そこへ返り血に染まった吸血鬼が襲撃に現れ、ケンを誘拐する。
その目的は「ロボットを修理しろ」とのことだった・・・

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる