106 / 200
シーズン5-キロマイア皇国&Ve’z対オルダモン連邦&クロペル共和国共同戦線
106-禁忌の提案
しおりを挟む
そして、Ve’zの反撃が始まった。
常套手段として、攻撃を受けてもびくともしないケルビスが最初にワープし、攻撃してくるようならニューエンドの連射で敵を全滅させるというものが使われることとなる。
『攻撃してきた時点で、連帯責任だろう』
Ve’zのやり口は、屁理屈のようなものだったが、エリスが直接その場にいなければいいという滅茶苦茶な逃げによって成立していた。
Ve’zの攻撃により、たった三日のうちにオルダモンとキロマイア皇国の緩衝地帯にある基地は殲滅され、クロペル共和国の船は不戦を貫くことで被害を免れていた。
「....つまり、撃たなければ殺されないということか?」
そして、クロペル共和国では――――
生きて帰ったアベル総督が、ジアンにそれを伝えたのである。
「はっ、オルダモンの者どもにもそれを伝えたのですが、「馬鹿馬鹿しい」と一蹴されました」
「仕方ない、あまりに突飛な事実だ」
ジアンは驚きに満ちた表情でその報告を受け入れた。
映像も確認しており、攻撃しなかった船は一撃も撃たれていなかった。
「残酷だな.....我々は参加だけして、無能を晒すしかないという事か」
「攻撃しなければ、反撃されない.....つまり、Ve’zはキロマイアには手を出すなと、オルダモンに無言で訴えているのでしょう」
「あの愚者たちが、それに応じるとは思えないな」
ジアンは堂々と、オルダモンを批判する。
共和国の女王側近としても、オルダモン連邦は頼らざるを得ないだけの関係である。
敗北を繰り返し、Ve’zの攻略法も見つけようとせずにただ大艦隊と大火力をぶつけて勝とうとし続ける。
愚かと言わず何というか、といった様子であった。
「下の者の嘆きは、あの主席には届かないのでしょうな」
「やめろ。他の指導者を論うことは、我々のするべきことではない」
ジアンはアベルを制止する。
確かに、イワノフ主席は傲慢で蒙昧な人物であり、部下の言う言葉など聞きはしない。
それを分かっているからか、主席の周囲を固める人物は、叱責を恐れて聞き心地のいい物事しか話さないのである。
「だが、実際に我々に猶予はないな.....」
キロマイア戦線で存在感を示さなければ、オルダモン連邦との繋がりは切れる。
そうなれば、オーベルン神聖連合との戦いは確実に不利なものとなる。
不利どころか、最悪の場合敗北に直結するだろう。
「........アベル、Ve’zと密通する手段はないか?」
「まさか、正気でございますか!?」
アベル総督は叫ぶ。
それはつまり、オルダモン連邦を裏切り、裏側から手を組んで挟撃するという事である。
「ここで攻撃させたところで全滅するのみだ。私は女王様と相談してくる.....アベル、過去の文献を調べるんだ」
「畏まりました....色よい返事を頂けることを期待しております」
ジアンは立ち上がり、城内を移動する。
星間国家の君主であるティニアが住まうこの城は、巨大ではあるがそれでも他国に比べれば小さい。
彼女のいる場所に、ジアンはすぐにたどり着く。
「入浴中ですか?」
『ハイ、御用の際はこちらをお使いください』
ジアンはアンドロイドの表示したモニターを使い、入浴中のティニアと音声通話を行う。
「女王様、懸念事項があります」
『んー? どうしたの?』
「実は...」
ジアンは気持ちを引き締めて、女王にこれからの方針について報告するのであった。
常套手段として、攻撃を受けてもびくともしないケルビスが最初にワープし、攻撃してくるようならニューエンドの連射で敵を全滅させるというものが使われることとなる。
『攻撃してきた時点で、連帯責任だろう』
Ve’zのやり口は、屁理屈のようなものだったが、エリスが直接その場にいなければいいという滅茶苦茶な逃げによって成立していた。
Ve’zの攻撃により、たった三日のうちにオルダモンとキロマイア皇国の緩衝地帯にある基地は殲滅され、クロペル共和国の船は不戦を貫くことで被害を免れていた。
「....つまり、撃たなければ殺されないということか?」
そして、クロペル共和国では――――
生きて帰ったアベル総督が、ジアンにそれを伝えたのである。
「はっ、オルダモンの者どもにもそれを伝えたのですが、「馬鹿馬鹿しい」と一蹴されました」
「仕方ない、あまりに突飛な事実だ」
ジアンは驚きに満ちた表情でその報告を受け入れた。
映像も確認しており、攻撃しなかった船は一撃も撃たれていなかった。
「残酷だな.....我々は参加だけして、無能を晒すしかないという事か」
「攻撃しなければ、反撃されない.....つまり、Ve’zはキロマイアには手を出すなと、オルダモンに無言で訴えているのでしょう」
「あの愚者たちが、それに応じるとは思えないな」
ジアンは堂々と、オルダモンを批判する。
共和国の女王側近としても、オルダモン連邦は頼らざるを得ないだけの関係である。
敗北を繰り返し、Ve’zの攻略法も見つけようとせずにただ大艦隊と大火力をぶつけて勝とうとし続ける。
愚かと言わず何というか、といった様子であった。
「下の者の嘆きは、あの主席には届かないのでしょうな」
「やめろ。他の指導者を論うことは、我々のするべきことではない」
ジアンはアベルを制止する。
確かに、イワノフ主席は傲慢で蒙昧な人物であり、部下の言う言葉など聞きはしない。
それを分かっているからか、主席の周囲を固める人物は、叱責を恐れて聞き心地のいい物事しか話さないのである。
「だが、実際に我々に猶予はないな.....」
キロマイア戦線で存在感を示さなければ、オルダモン連邦との繋がりは切れる。
そうなれば、オーベルン神聖連合との戦いは確実に不利なものとなる。
不利どころか、最悪の場合敗北に直結するだろう。
「........アベル、Ve’zと密通する手段はないか?」
「まさか、正気でございますか!?」
アベル総督は叫ぶ。
それはつまり、オルダモン連邦を裏切り、裏側から手を組んで挟撃するという事である。
「ここで攻撃させたところで全滅するのみだ。私は女王様と相談してくる.....アベル、過去の文献を調べるんだ」
「畏まりました....色よい返事を頂けることを期待しております」
ジアンは立ち上がり、城内を移動する。
星間国家の君主であるティニアが住まうこの城は、巨大ではあるがそれでも他国に比べれば小さい。
彼女のいる場所に、ジアンはすぐにたどり着く。
「入浴中ですか?」
『ハイ、御用の際はこちらをお使いください』
ジアンはアンドロイドの表示したモニターを使い、入浴中のティニアと音声通話を行う。
「女王様、懸念事項があります」
『んー? どうしたの?』
「実は...」
ジアンは気持ちを引き締めて、女王にこれからの方針について報告するのであった。
10
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)
あおっち
SF
脈々と続く宇宙の無数の文明。その中でより高度に発展した高高度文明があった。その文明の流通、移動を支え光速を超えて遥か彼方の銀河や銀河内を瞬時に移動できるジャンプ技術。それを可能にしたジャンプ血清。
その血清は生体(人間)へのダメージをコントロールする血清、ワクチンなのだ。そのジャンプ血清をめぐり遥か大昔、大銀河戦争が起こり多くの高高度文明が滅びた。
その生き残りの文明が新たに見つけた地、ネイジェア星域。私達、天の川銀河の反対の宙域だった。そこで再び高高度文明が栄えたが、再びジャンプ血清供給に陰りが。天の川銀河レベルで再び紛争が勃発しかけていた。
そして紛争の火種は地球へ。
その地球では強大な軍事組織、中華帝国連邦、通称「AXIS」とそれに対抗する為、日本を中心とした加盟国軍組織「シーラス」が対峙していたのだ。
近未来の地球と太古から続くネイジェア星域皇国との交流、天然ジャンプ血清保持者の椎葉清らが居る日本と、高高度文明異星人(シーラス皇国)の末裔、マズル家のポーランド家族を描いたSF大河小説「メジャー・インフラトン」の前章譚、7部作。
第1部「太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!」。
ジャンプ血清は保持者の傷ついた体を異例のスピードで回復させた。また血清のオリジナル保持者(ゼロ・スターター)は、独自の能力を飛躍的に引き上げる事が出来たのだ。
第2次大戦時、無敵兵士と言われた舩坂弘氏をモデルに御舩大(ミフネヒロシ)の無敵ふりと、近代世界のジャンプ血清保持者、椎葉きよし(通称:お子ちゃまきよし)の現在と過去。
ジャンプ血清の力、そして人類の未来をかけた壮大な戦いが、いま、始まる――。
彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。
本格的な戦闘シーンもあり、面白い場面も増えます。
是非、ご覧あれ。
※加筆や修正が予告なしにあります。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
【なろう430万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ
海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。
衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。
絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。
ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。
大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。
はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?
小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。
カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。
Reboot ~AIに管理を任せたVRMMOが反旗を翻したので運営と力を合わせて攻略します~
霧氷こあ
SF
フルダイブMMORPGのクローズドβテストに参加した三人が、システム統括のAI『アイリス』によって閉じ込められた。
それを助けるためログインしたクロノスだったが、アイリスの妨害によりレベル1に……!?
見兼ねたシステム設計者で運営である『イヴ』がハイエルフの姿を借りて仮想空間に入り込む。だがそこはすでに、AIが統治する恐ろしくも残酷な世界だった。
「ここは現実であって、現実ではないの」
自我を持ち始めた混沌とした世界、乖離していく紅の世界。相反する二つを結ぶ少年と少女を描いたSFファンタジー。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
異世界に転生したのにスキルも貰えずに吸血鬼に拉致されてロボットを修理しろってどういうことなのか
ピモラス
ファンタジー
自動車工場で働くケンはいつも通りに仕事を終えて、帰りのバスのなかでうたた寝をしていた。
目を覚ますと、見知らぬ草原の真っ只中だった。
なんとか民家を見つけ、助けを求めたのだが、兵士を呼ばれて投獄されてしまう。
そこへ返り血に染まった吸血鬼が襲撃に現れ、ケンを誘拐する。
その目的は「ロボットを修理しろ」とのことだった・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる