SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

文字の大きさ
上 下
100 / 200
シーズン4-ヴァンデッタ帝国戦後

100-オルダモン/クロペル

しおりを挟む
「ふざけるな!!」

そう叫び、拳を壁に叩きつけたのは、オルダモンの指導者であるイワノフ・ツペルリュトーレである。

「同志ダグトレ、貴様は私を謀ったのか? キロマイアの皇帝は確かにVe‘zの星系に足を踏み入れたと言ったではないか!」

叱責されているのは、ダグトレ・オルフュンフ。
オルダモンの将軍である。
ハルト皇帝を追い詰めた張本人であり、その事を自慢げに首席に報告してしまったのだ。

「しかし、イワノフ首席! Ve’zの領域に入ったということは、確実なる死が待っているという事に他なりませぬ。言われなくとも、ヴァンデッタがその身を以て示したではありませぬか!」

ヴァンデッタが滅亡した話はあまりにも有名である。
Ve’zの領域に入ったものは生きて出ることは叶わないという、当然の常識である。

「だが、奴らは生きている!  どうするつもりだ、同志ダグトレ!」
「暫し、時間を! 時間を頂ければ、情報を集めて、今度こそ奴らを追い詰めて見せましょう!」
「お前はやはり、無能だな」
「な、何ですと!?」

イワノフの冷たい声に、ダグトレは硬直する。

「映像をよく見もせずにベラベラと! Ve‘zによる攻撃で、我々の艦隊は全滅したのだ! ヴァンデッタの惨劇を繰り返すと言うのか!?」
「と、とにかく、今は情報を集めてまいりますので!」
「無能は要らぬ、一週間以内に対策を持ってこなければ、貴様は粛清だ!」
「ははっ!」

ダグトレは半ば逃げるように、執務室を後にした。
彼の脳内では、複数の案がぐちゃぐちゃに混在していた。
なんにせよ、結果を示さねば自分に存在価値は無い。

「何か...何か方法を模索せねば!」

ダグトレは更なる手段を模索すべく、ドアに手をかけて。

「そ、そうだ...あの国に、あの国に救援を求めればいいではないか!」

と叫んだのであった。






ダグトレの言う、「あの国」...そこは、クロペル共和国であった。
オーベルン神聖連合と敵対する、濃い肌の色の民族が中心の星間国家である。
その首都惑星へと降りると、優美な都市が広がっている。
多民族国家でもあるクロペル共和国では、様々な民族の意匠が施された街並みが特徴である。
中でも一際目を引く、白亜のビル。
その最上階にて。

「ふんふんふ~ん、ふん」

首都惑星の気温は蒸し暑く、その部屋の主人はシャワーを浴びているようだった。
だが、そのリラックスした雰囲気は、部屋の電話が鳴った事により破られる。

「やっ、やばい!」

風呂から飛び出してきたのは、16歳程度の少女だった。
乱雑にタオルを身に纏い、ミルク色の髪を短く切りそろえた彼女は、慌てて電話に出る。

「はい」
『ジアンです、オルダモンとの安保条約について話があるとのことですが...』
「至急繋いで」

少女の碧眼が、髪と同じくミルク色の眉毛によって半分ほど隠れた。

『おお、クロンぺリャの至宝、ティニア様。本日はご機嫌いかがで...』
「そういうのは不要です。今日は何のご用事ですか?」
『わが国が攻撃を受けました。交わした安保条約について、会議を行いたいのですが...』
「なるほど。オーベルンとの戦いでは何度か助けていただきました、会議は三日後までならいつでも可能ですが、どうされますか?」
『では、翌日でも?』
「ええ、構いませんよ」
『では、よろしくお願い致します』

そう言うと、電話は切れた。
ティニアは長い溜息を吐き、

「長い休暇も終わりかぁー...まあいいや、ジアンに見つかる前にお風呂に戻らなきゃ!」

と呟きつつ、浴室へと戻るのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

【なろう430万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

Reboot ~AIに管理を任せたVRMMOが反旗を翻したので運営と力を合わせて攻略します~

霧氷こあ
SF
 フルダイブMMORPGのクローズドβテストに参加した三人が、システム統括のAI『アイリス』によって閉じ込められた。  それを助けるためログインしたクロノスだったが、アイリスの妨害によりレベル1に……!?  見兼ねたシステム設計者で運営である『イヴ』がハイエルフの姿を借りて仮想空間に入り込む。だがそこはすでに、AIが統治する恐ろしくも残酷な世界だった。 「ここは現実であって、現実ではないの」  自我を持ち始めた混沌とした世界、乖離していく紅の世界。相反する二つを結ぶ少年と少女を描いたSFファンタジー。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

体内内蔵スマホ

廣瀬純一
SF
体に内蔵されたスマホのチップのバグで男女の体が入れ替わる話

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

異世界に転生したのにスキルも貰えずに吸血鬼に拉致されてロボットを修理しろってどういうことなのか

ピモラス
ファンタジー
自動車工場で働くケンはいつも通りに仕事を終えて、帰りのバスのなかでうたた寝をしていた。 目を覚ますと、見知らぬ草原の真っ只中だった。 なんとか民家を見つけ、助けを求めたのだが、兵士を呼ばれて投獄されてしまう。 そこへ返り血に染まった吸血鬼が襲撃に現れ、ケンを誘拐する。 その目的は「ロボットを修理しろ」とのことだった・・・

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

処理中です...