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シーズン4-ヴァンデッタ帝国戦後
097-キロマイアとオルダモン
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キロマイア皇国の外れに位置する、ナーガ・キオータ星系。
そこは、Ve‘zに対するアウトポストの残骸が存在する、危険な場所であった。
そこを、たった四隻の艦隊が航行していた。
「ハルト様! ここから先はもう...」
「分かっている、だが...!」
艦隊は、どれもボロボロであった。
追手に追われて、交戦の末にそうなったのである。
そして、彼らはここから先がVe‘z領域であることも知っている。
だが、
「オルダモンの卑怯者共に殺されるくらいならば、Ve’zに撃たれた方がまだマシではないか?」
「それは...」
側近は黙り込む。
現在、キロマイア皇国とオルダモン連邦は敵対状態にあり、そしてかなりキロマイア皇国は不利な状況に陥っていた。
オルダモン連邦が誇る高速要撃艦隊が、キロマイア皇国の重戦艦隊を次々と打ち破り、ついに皇都にまで攻め込まれた。
オルダモン連邦は犠牲を省みず、皇帝であるハルト・イシネンを殺害すべく皇城へと迫り、ハルト達は逃亡を余儀なくされたのだ。
「ですが、貴方という旗印を失えば、我が国は...」
「だからこそ、一縷の望みに賭けるのだ」
ハルトは、Ve‘zは友好的ではないが、話の通じない相手ではないと思っていた。
彼等は彼等の大切にする何かに手を出された時のみ、攻勢に転じるのであると。
「こっ、後方にワープ反応! 追手が来ます!」
その時、レーダーの前に座っていた乗組員が叫ぶ。
それで、ハルトは命じざるを得なかった。
「全艦、スターゲートを起動せよ! Ve‘z領域へとジャンプする!」
こうして、キロマイア艦隊は次の星系...アズトカルネラへとジャンプした。
遥か昔に、大いなる戦争の舞台となったらしい場所へ。
幸いにも、艦隊は襲撃されることなくアズトカルネラへジャンプした。
だが、ジャンプゲート起動の兆候を見て、慌てて次の星系であるイルシャンに逃げた。
結果...
「は、ハルト様...!」
「わ、分かっている。」
Ve’zの哨戒艦隊と鉢合わせした。
ハルトは死を覚悟した。
だが、哨戒艦は襲ってこない。
「なぜだ...?」
その時。
不意に、艦橋の計器の一つが奇妙な電子音を響かせた。
「こ、これは...? 機関エントロピー値増大、出力が0に限りなく近くなります!」
艦隊の足は完全に止まり、逃げる手段は失われた。
益々絶望するハルト達であったが、その時全員の脳裏に、不思議な声が響く。
『貴方達は、何を目的にこの場所まで来たのですか?』
「.....ここへは、交渉をしに参った...」
心を見透かされていると勘違いしたハルトは、包み隠さず全てを打ち明けた。
それは結果として、彼の命を救うこととなった。
『いいでしょう。貴方たちをこれより、我々の保護フィールド内にご案内いたします。そこで、ケルビスという外渉員と交渉していただきます』
「......ありがたい限りだ。我々は侵入者だというのに....」
そして艦隊は、強力な重力保護フィールドの内部へと案内された。
勝手に動く操縦桿を見て、操舵主は遥か昔の帆船の時代、船乗りを誘い出し喰らっていたセイレーンを連想するのだった。
そこは、Ve‘zに対するアウトポストの残骸が存在する、危険な場所であった。
そこを、たった四隻の艦隊が航行していた。
「ハルト様! ここから先はもう...」
「分かっている、だが...!」
艦隊は、どれもボロボロであった。
追手に追われて、交戦の末にそうなったのである。
そして、彼らはここから先がVe‘z領域であることも知っている。
だが、
「オルダモンの卑怯者共に殺されるくらいならば、Ve’zに撃たれた方がまだマシではないか?」
「それは...」
側近は黙り込む。
現在、キロマイア皇国とオルダモン連邦は敵対状態にあり、そしてかなりキロマイア皇国は不利な状況に陥っていた。
オルダモン連邦が誇る高速要撃艦隊が、キロマイア皇国の重戦艦隊を次々と打ち破り、ついに皇都にまで攻め込まれた。
オルダモン連邦は犠牲を省みず、皇帝であるハルト・イシネンを殺害すべく皇城へと迫り、ハルト達は逃亡を余儀なくされたのだ。
「ですが、貴方という旗印を失えば、我が国は...」
「だからこそ、一縷の望みに賭けるのだ」
ハルトは、Ve‘zは友好的ではないが、話の通じない相手ではないと思っていた。
彼等は彼等の大切にする何かに手を出された時のみ、攻勢に転じるのであると。
「こっ、後方にワープ反応! 追手が来ます!」
その時、レーダーの前に座っていた乗組員が叫ぶ。
それで、ハルトは命じざるを得なかった。
「全艦、スターゲートを起動せよ! Ve‘z領域へとジャンプする!」
こうして、キロマイア艦隊は次の星系...アズトカルネラへとジャンプした。
遥か昔に、大いなる戦争の舞台となったらしい場所へ。
幸いにも、艦隊は襲撃されることなくアズトカルネラへジャンプした。
だが、ジャンプゲート起動の兆候を見て、慌てて次の星系であるイルシャンに逃げた。
結果...
「は、ハルト様...!」
「わ、分かっている。」
Ve’zの哨戒艦隊と鉢合わせした。
ハルトは死を覚悟した。
だが、哨戒艦は襲ってこない。
「なぜだ...?」
その時。
不意に、艦橋の計器の一つが奇妙な電子音を響かせた。
「こ、これは...? 機関エントロピー値増大、出力が0に限りなく近くなります!」
艦隊の足は完全に止まり、逃げる手段は失われた。
益々絶望するハルト達であったが、その時全員の脳裏に、不思議な声が響く。
『貴方達は、何を目的にこの場所まで来たのですか?』
「.....ここへは、交渉をしに参った...」
心を見透かされていると勘違いしたハルトは、包み隠さず全てを打ち明けた。
それは結果として、彼の命を救うこととなった。
『いいでしょう。貴方たちをこれより、我々の保護フィールド内にご案内いたします。そこで、ケルビスという外渉員と交渉していただきます』
「......ありがたい限りだ。我々は侵入者だというのに....」
そして艦隊は、強力な重力保護フィールドの内部へと案内された。
勝手に動く操縦桿を見て、操舵主は遥か昔の帆船の時代、船乗りを誘い出し喰らっていたセイレーンを連想するのだった。
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