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シーズン4-ヴァンデッタ帝国戦後
096-お姉さま?
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「あっ、お姉様!」
そんな声が、庭園に響く。
そして、続いて、
「サーシャ、元気かしら?」
「はい!」
というエリスの声が響く。
そして、
『エリアス様、あれで本当に宜しかったのですか?』
「...彼女が苦しまない方法は、結局あれしかなかったように感じるな」
ケルビスの問いに、僕はそう答えた。
エリスと話した後、サーシャは発狂した。
なんとか自傷行為を辞めさせたのだが、結果として壊れてしまった。
エリスをお姉様と呼び慕い、楽しそうに過ごしている。
実際はエリスの方が年下なのだが...
エリスが楽しそうなので、別に構わないとする。
「彼女は、自分という存在が実際になかった。あらゆるしがらみが、彼女を構成する重要なパーツだったのだろう」
『そのパーツが矛盾し始めたために、狂うしかなかったというわけですね』
「そうだ」
いつか彼女が自我を取り戻すようなら、その時はまた彼女の育った内面が、外側を崩すサポートをしてくれるだろう。
「記録を拝見した限りでは、あの女は皇妃としての教育以外何も受けさせられていない。自分を作る環境が無かったのだろう」
『しかし、エリアス様に刃を向けた罪は大変重いですね...』
「そこは、将来の働きに期待しよう」
彼女は、エリスがしっかり教育してくれるはず。
「ほら、笑える?」
「こうですか!? お姉様!」
「そう。嬉しい時は、そうやって笑うのよ」
「はい!」
...若干不安ではあるが。
その後、彼女の副官達にも話を通したのだが、
「感謝します」
逆に感謝された。
聞けば、柵に囚われて望んでもいない復讐をし続ける皇女に、皆内心傷心していたようであり、それからどんな形であれ解放されて、自分の人生を生きることができるようになった事を喜んでいるようだ。
都合のいい人間達である。
ともあれ彼等は、惑星に降ろしメッティーラの元で餌を与えながら死ぬまで飼い殺しにする予定だ。
『それから、エリアス様』
「どうした?」
『もう一つ、気になる動きがございます』
「聞こう」
僕は席を立つ。
まだまだこの世界の流動は止まっていない。
今回の件の埋め合わせになればと信じて、僕は歩きだしたのだった。
「あら?」
「どうしたんですか、お姉様!?」
エリスは周囲を見渡す。
アロウトの庭園に面したバルコニーに、エリアスが座っていたのだが、いなくなっていることに気がついたのだ。
「......確か、今日は予定がなかったはずよね...」
予定がないのにいなくなる事は、エリアスに限っては殆どない。
記録書庫などに行っているとしても、身体は置いていくからだ。
「何かあったのかしら...?」
エリスは疑問の声を上げる。
そして、これが...新たな騒動の幕開けだという事を、彼女はまだ知らないのだった。
そんな声が、庭園に響く。
そして、続いて、
「サーシャ、元気かしら?」
「はい!」
というエリスの声が響く。
そして、
『エリアス様、あれで本当に宜しかったのですか?』
「...彼女が苦しまない方法は、結局あれしかなかったように感じるな」
ケルビスの問いに、僕はそう答えた。
エリスと話した後、サーシャは発狂した。
なんとか自傷行為を辞めさせたのだが、結果として壊れてしまった。
エリスをお姉様と呼び慕い、楽しそうに過ごしている。
実際はエリスの方が年下なのだが...
エリスが楽しそうなので、別に構わないとする。
「彼女は、自分という存在が実際になかった。あらゆるしがらみが、彼女を構成する重要なパーツだったのだろう」
『そのパーツが矛盾し始めたために、狂うしかなかったというわけですね』
「そうだ」
いつか彼女が自我を取り戻すようなら、その時はまた彼女の育った内面が、外側を崩すサポートをしてくれるだろう。
「記録を拝見した限りでは、あの女は皇妃としての教育以外何も受けさせられていない。自分を作る環境が無かったのだろう」
『しかし、エリアス様に刃を向けた罪は大変重いですね...』
「そこは、将来の働きに期待しよう」
彼女は、エリスがしっかり教育してくれるはず。
「ほら、笑える?」
「こうですか!? お姉様!」
「そう。嬉しい時は、そうやって笑うのよ」
「はい!」
...若干不安ではあるが。
その後、彼女の副官達にも話を通したのだが、
「感謝します」
逆に感謝された。
聞けば、柵に囚われて望んでもいない復讐をし続ける皇女に、皆内心傷心していたようであり、それからどんな形であれ解放されて、自分の人生を生きることができるようになった事を喜んでいるようだ。
都合のいい人間達である。
ともあれ彼等は、惑星に降ろしメッティーラの元で餌を与えながら死ぬまで飼い殺しにする予定だ。
『それから、エリアス様』
「どうした?」
『もう一つ、気になる動きがございます』
「聞こう」
僕は席を立つ。
まだまだこの世界の流動は止まっていない。
今回の件の埋め合わせになればと信じて、僕は歩きだしたのだった。
「あら?」
「どうしたんですか、お姉様!?」
エリスは周囲を見渡す。
アロウトの庭園に面したバルコニーに、エリアスが座っていたのだが、いなくなっていることに気がついたのだ。
「......確か、今日は予定がなかったはずよね...」
予定がないのにいなくなる事は、エリアスに限っては殆どない。
記録書庫などに行っているとしても、身体は置いていくからだ。
「何かあったのかしら...?」
エリスは疑問の声を上げる。
そして、これが...新たな騒動の幕開けだという事を、彼女はまだ知らないのだった。
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