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シーズン4-ヴァンデッタ帝国戦後
093-凄惨な償い
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さて。
問題はまだ解決していない。
僕は再び、サーシャとかいう女のもとへ向かう。
「ッ!」
「サーシャ・リンヴァンデッタ....だったか」
「....何の用ですか」
サーシャは、僕を睨みつけてくる。
殺せるのなら今すぐにでも殺したいといった顔だ。
「君の処遇を決めようと思ったのだ」
「殺すなら、今すぐ殺せばいいでしょう! 私の夫にしたように!」
「そうできない理由がある。お前たちは、僕に...僕の持つ財産に対して何かしたわけではない故に」
「夫は......そうしたのですか....?」
「そうだ。艦隊を我がVe’z領域に乗り付け、僕たちとエミドの争いにつけこんで技術の奪取を試みた。その罪は、大きい」
僕は関与していないが、エクスティラノス達がそういう判断で行ってしまったものは、事実として僕が責任を負わないといけない。
「私の祖国を、完全に滅ぼすほどの罪だったのですか?」
「そうだ」
僕は迷わずに言い切る。
「私の武器では、貴方を倒せない――――なら!」
直後。
サーシャは銃をこめかみに当てる。
「私の命を奪えないなら、貴女に交渉を持ちかけるわ」
「そうか――――残念だ」
僕は触手を飛ばして、銃を奪う。
その速度は、サーシャの動体視力では視認できないだろう。
「さあ、貴方達の技術で、私たちの帝国を再生――――」
「残念だが、滅ぼした惑星を再生する技術を持ち合わせてはいないな」
重力によって時間の流れる速度を操作したり、惑星を即座にテラフォーミングする技術はあるが、バラバラになった惑星を作り出す技術はいまだ未確立だ。
「ふざけないでください、私の命は――――ふぇ?」
「お探しのものはこれか?」
僕は銃を指でくるくる回して見せる。
皇室仕様だろうか、白を基調にレリーフのようなものが金色の素材であしらわれている。
「なっ....返してください!」
「考えよう」
「......何を考えているのですか、とっとと送り返せばいいでしょう.....」
「何故、残る道を選ばない? 尊厳を捨て、メッティーラの下で永遠に過ごすのであれば、滞在を許可しよう」
僕はサーシャたちを追い出すこともできず、かといって消すこともできない。
飼い殺しにするくらいしかないのだ。
「.....何故、憎むべき貴方達の手を借りてまで!」
「そもそも、お前は夫を引き合いに出すが、確か夫に捨てられたはずではなかったのか?」
Ve’zのデータベースだとそう記録されているので、おそらく周知の事実のはずだ。
「.......何故そんなことを、お前が知っているのだぁっ!!」
「ようやく本性を見せてくれたか」
サーシャは掴みかかってくる。
「だが、愛は本物と見える。僕の知る限りでは、お前を手放した皇帝は傷心の様子だったそうだ」
「......え?」
Ve’zの情報網により、貴人の様子は常に記録している。
「こうなると理解していたからこそ、お前を帝国から遠ざけ、被害者に仕立て上げたのかもしれないな」
「..........それでも、私はあなたに復讐したい」
「すればいい」
僕は笑う。
「僕はクローニングで無限に蘇生できる。気が済むまで僕をめった刺しにでもすればいい」
「何を――――」
「気が晴れるだろう?」
僕はケルビスに頼んで、ナイフを手元に転送してもらう。
それを、サーシャに手渡した。
「さあ、それなら僕を傷つけられる。殺すといい。国民全員の分、僕を始末すればいい」
「く....狂っています....!」
「自分の人生を捨ててまで、自分を見もしなかった帝国に殉じるあなたも、相当に狂っているだろうな」
「うっ....あぁああああああ!!」
サーシャはぐちゃぐちゃになった表情でナイフを手に取って、僕をナイフで突き刺した。
嫌な音がした。
青く発光する体液が噴き出し、サーシャの顔を汚す。
「さあ、この程度ではすぐに治ってしまう。横になった方が刺しやすいか?」
「あああっ、ああああああ!!」
サーシャは半狂乱になって、横になった僕を突き刺した。
特別製のナイフは、刃がこぼれることも血糊で汚れることもない。
そのうち、僕の体がダメージを修復できなくなり、”死”が起こる。
「.........」
僕はクローン体に意識が転送されたことを確認し、保存液から出る。
服を着る必要はなく、すぐにサーシャのもとへ向かう。
「さあ、もう一度」
「......し、死んで、くださいっ!!」
今度は強烈な一撃だった。
僕の体はその刺突で、喉を貫かれて死ぬ。
また蘇生して、すぐに飛ぶ。
二人分の僕の死体の上で、今度はサーシャは僕の首を絞めてきた。
「済まない。呼吸は不要なので、息が出来なくなることはないんだ」
「この....化け物っ!!」
再び、サーシャは陰湿に僕の体を傷つけた。
それを二十七回繰り返したとき、ついに体力を使い果たしたサーシャは倒れこんだ。
僕はそれを抱え、アロウトへと連れ去った。
問題はまだ解決していない。
僕は再び、サーシャとかいう女のもとへ向かう。
「ッ!」
「サーシャ・リンヴァンデッタ....だったか」
「....何の用ですか」
サーシャは、僕を睨みつけてくる。
殺せるのなら今すぐにでも殺したいといった顔だ。
「君の処遇を決めようと思ったのだ」
「殺すなら、今すぐ殺せばいいでしょう! 私の夫にしたように!」
「そうできない理由がある。お前たちは、僕に...僕の持つ財産に対して何かしたわけではない故に」
「夫は......そうしたのですか....?」
「そうだ。艦隊を我がVe’z領域に乗り付け、僕たちとエミドの争いにつけこんで技術の奪取を試みた。その罪は、大きい」
僕は関与していないが、エクスティラノス達がそういう判断で行ってしまったものは、事実として僕が責任を負わないといけない。
「私の祖国を、完全に滅ぼすほどの罪だったのですか?」
「そうだ」
僕は迷わずに言い切る。
「私の武器では、貴方を倒せない――――なら!」
直後。
サーシャは銃をこめかみに当てる。
「私の命を奪えないなら、貴女に交渉を持ちかけるわ」
「そうか――――残念だ」
僕は触手を飛ばして、銃を奪う。
その速度は、サーシャの動体視力では視認できないだろう。
「さあ、貴方達の技術で、私たちの帝国を再生――――」
「残念だが、滅ぼした惑星を再生する技術を持ち合わせてはいないな」
重力によって時間の流れる速度を操作したり、惑星を即座にテラフォーミングする技術はあるが、バラバラになった惑星を作り出す技術はいまだ未確立だ。
「ふざけないでください、私の命は――――ふぇ?」
「お探しのものはこれか?」
僕は銃を指でくるくる回して見せる。
皇室仕様だろうか、白を基調にレリーフのようなものが金色の素材であしらわれている。
「なっ....返してください!」
「考えよう」
「......何を考えているのですか、とっとと送り返せばいいでしょう.....」
「何故、残る道を選ばない? 尊厳を捨て、メッティーラの下で永遠に過ごすのであれば、滞在を許可しよう」
僕はサーシャたちを追い出すこともできず、かといって消すこともできない。
飼い殺しにするくらいしかないのだ。
「.....何故、憎むべき貴方達の手を借りてまで!」
「そもそも、お前は夫を引き合いに出すが、確か夫に捨てられたはずではなかったのか?」
Ve’zのデータベースだとそう記録されているので、おそらく周知の事実のはずだ。
「.......何故そんなことを、お前が知っているのだぁっ!!」
「ようやく本性を見せてくれたか」
サーシャは掴みかかってくる。
「だが、愛は本物と見える。僕の知る限りでは、お前を手放した皇帝は傷心の様子だったそうだ」
「......え?」
Ve’zの情報網により、貴人の様子は常に記録している。
「こうなると理解していたからこそ、お前を帝国から遠ざけ、被害者に仕立て上げたのかもしれないな」
「..........それでも、私はあなたに復讐したい」
「すればいい」
僕は笑う。
「僕はクローニングで無限に蘇生できる。気が済むまで僕をめった刺しにでもすればいい」
「何を――――」
「気が晴れるだろう?」
僕はケルビスに頼んで、ナイフを手元に転送してもらう。
それを、サーシャに手渡した。
「さあ、それなら僕を傷つけられる。殺すといい。国民全員の分、僕を始末すればいい」
「く....狂っています....!」
「自分の人生を捨ててまで、自分を見もしなかった帝国に殉じるあなたも、相当に狂っているだろうな」
「うっ....あぁああああああ!!」
サーシャはぐちゃぐちゃになった表情でナイフを手に取って、僕をナイフで突き刺した。
嫌な音がした。
青く発光する体液が噴き出し、サーシャの顔を汚す。
「さあ、この程度ではすぐに治ってしまう。横になった方が刺しやすいか?」
「あああっ、ああああああ!!」
サーシャは半狂乱になって、横になった僕を突き刺した。
特別製のナイフは、刃がこぼれることも血糊で汚れることもない。
そのうち、僕の体がダメージを修復できなくなり、”死”が起こる。
「.........」
僕はクローン体に意識が転送されたことを確認し、保存液から出る。
服を着る必要はなく、すぐにサーシャのもとへ向かう。
「さあ、もう一度」
「......し、死んで、くださいっ!!」
今度は強烈な一撃だった。
僕の体はその刺突で、喉を貫かれて死ぬ。
また蘇生して、すぐに飛ぶ。
二人分の僕の死体の上で、今度はサーシャは僕の首を絞めてきた。
「済まない。呼吸は不要なので、息が出来なくなることはないんだ」
「この....化け物っ!!」
再び、サーシャは陰湿に僕の体を傷つけた。
それを二十七回繰り返したとき、ついに体力を使い果たしたサーシャは倒れこんだ。
僕はそれを抱え、アロウトへと連れ去った。
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