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シーズン4-ヴァンデッタ帝国戦後
092-忠実なる警備隊長
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私の名前は、メッティーラ=エクスティラノス。
エリアス様に生み出され、偉大なるVe’zの資産を守るため、近衛兵を率いて外敵を打ち砕く者。
.....しかし、今の私の状況は非常に矛盾したものとなっている。
主に背き、報告もできずに侵入者を飼い殺しにしようとしている。
これでは、裏切者ではないか。
「....メッティーラ」
そして遂に。
私のもとに、エリアス様がやってきた。
御傍には、険しい顔をしたケルビスがいた。
ああ。
私はこれから処刑されるのだ。
最早エリス様の慈悲は受けられない。
「お前は、誰にも相談できずに最善を尽くした、そうだな?」
「は....? は、はい」
その口からは、私を誹る言葉ではなく。
消えろという突き放しでもなく。
ただ質問のみが声となって放たれた。
それに答えた私に、エリアス様は続けて問う。
「問おう。お前は、その侵入者を最終的にどうするつもりだった?」
「こ....殺すつもりでした。エリス様が更なる人の死をお望みでないことは分かっています。ですが....それが本来の私の任務ですから」
「お前は、もしその時が来れば――――自らに刻まれた命令と、自分の自由意志。どちらを取る?」
その問いに、私は――――葛藤した。
人を飼う、それは.....尊いことだ。
命を壊さないように管理するということが、いかに楽しいか私は知ってしまった。
だが。
私は――――警備隊の長.....エリアス様がかつて御隠れになられたとき、カサンドラ様と共に最後まで残留し、都の不在を守る者。
カサンドラ様と共に、絶対の忠誠を守り通した私は――――
「....命令を、優先します」
途端に、思考はすべて切り替わった。
帝国軍の残党は、送り届けるふりをして太陽のゼロ距離座標に送り込むのだ。
奴らは蒸発し、エリアス様もエリス様もそれを知ることはない。
それで全て――――
「よし、その答えが聞きたかった。お前は何も悪くはない、今回はひとえに、僕の不在にエクスティラノス達が関与と責任逃れをしたせいだ。これは連帯責任に当たる」
「し、しかし――――」
それはあまりにも不公平だ。
そう思った私に、エリアス様は顔を近づけてきた。
「近く、僕たちは大宇宙球戯を行う予定だ。宇宙空間を飛び回り、球を奪い合う。だが――――罰として、お前はそれに参加できない。審判をやってもらおう」
「お、畏れ多いことです.....私が審判など....!」
私が正しさの基準を名乗るなど、烏滸がましいことだ。
そう思った私だったが、エリアス様は笑った。
「それでも、お前がカサンドラの次に僕のもとへ参じたのは確かだ。Ve’zの秩序を司れるのはお前しかいない」
「....エリアス様.....」
私は強く頷き、同時に理解した。
やはりこの御方は、人間にはできないことをしてみせる、真の主だと。
「分かりました、審判を務めさせていただきます」
「ただし――――賄賂は許可しない」
「当然です」
私の罪をお許しになられたエリアス様。
どうかこの罪深き私の忠誠を、命令に縛られぬ自由意志の底から沸き立つ忠誠をお受け取り下さい。
エリアス様に生み出され、偉大なるVe’zの資産を守るため、近衛兵を率いて外敵を打ち砕く者。
.....しかし、今の私の状況は非常に矛盾したものとなっている。
主に背き、報告もできずに侵入者を飼い殺しにしようとしている。
これでは、裏切者ではないか。
「....メッティーラ」
そして遂に。
私のもとに、エリアス様がやってきた。
御傍には、険しい顔をしたケルビスがいた。
ああ。
私はこれから処刑されるのだ。
最早エリス様の慈悲は受けられない。
「お前は、誰にも相談できずに最善を尽くした、そうだな?」
「は....? は、はい」
その口からは、私を誹る言葉ではなく。
消えろという突き放しでもなく。
ただ質問のみが声となって放たれた。
それに答えた私に、エリアス様は続けて問う。
「問おう。お前は、その侵入者を最終的にどうするつもりだった?」
「こ....殺すつもりでした。エリス様が更なる人の死をお望みでないことは分かっています。ですが....それが本来の私の任務ですから」
「お前は、もしその時が来れば――――自らに刻まれた命令と、自分の自由意志。どちらを取る?」
その問いに、私は――――葛藤した。
人を飼う、それは.....尊いことだ。
命を壊さないように管理するということが、いかに楽しいか私は知ってしまった。
だが。
私は――――警備隊の長.....エリアス様がかつて御隠れになられたとき、カサンドラ様と共に最後まで残留し、都の不在を守る者。
カサンドラ様と共に、絶対の忠誠を守り通した私は――――
「....命令を、優先します」
途端に、思考はすべて切り替わった。
帝国軍の残党は、送り届けるふりをして太陽のゼロ距離座標に送り込むのだ。
奴らは蒸発し、エリアス様もエリス様もそれを知ることはない。
それで全て――――
「よし、その答えが聞きたかった。お前は何も悪くはない、今回はひとえに、僕の不在にエクスティラノス達が関与と責任逃れをしたせいだ。これは連帯責任に当たる」
「し、しかし――――」
それはあまりにも不公平だ。
そう思った私に、エリアス様は顔を近づけてきた。
「近く、僕たちは大宇宙球戯を行う予定だ。宇宙空間を飛び回り、球を奪い合う。だが――――罰として、お前はそれに参加できない。審判をやってもらおう」
「お、畏れ多いことです.....私が審判など....!」
私が正しさの基準を名乗るなど、烏滸がましいことだ。
そう思った私だったが、エリアス様は笑った。
「それでも、お前がカサンドラの次に僕のもとへ参じたのは確かだ。Ve’zの秩序を司れるのはお前しかいない」
「....エリアス様.....」
私は強く頷き、同時に理解した。
やはりこの御方は、人間にはできないことをしてみせる、真の主だと。
「分かりました、審判を務めさせていただきます」
「ただし――――賄賂は許可しない」
「当然です」
私の罪をお許しになられたエリアス様。
どうかこの罪深き私の忠誠を、命令に縛られぬ自由意志の底から沸き立つ忠誠をお受け取り下さい。
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