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シーズン4-ヴァンデッタ帝国戦後
091-過ちを繰り返さぬために
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その日、サーシャはまた、展望室で星を眺めていた。
気配を感じた彼女は、ヘイルスだと思って背後を振り返り――――
「えっ......エリアス様!?」
「そうか...成程、深層心理に情報を挿入したな?」
サーシャはエリアスの言っていることが全く分からない。
だが直後、サーシャは一瞬で意識を奪われて、その場に立ち尽くす。
言わば、人間の意識の編集モードのような状態である。
「『戻れ』」
エリアスがそう命じると、サーシャの深層心理にあった偽の記憶と、暗示が消去される。
途端、サーシャは瞳孔を見開いて、エリアスを見た。
「――――ッ、誰ですかっ!?」
「僕の名前はエリアス。Ve’zの――――」
「くっ!!」
直後、なんの躊躇もなくサーシャは発砲した。
エリアスの左胸に穴が開く。
「やった――――やりましたっ!」
「.....それで、目は覚めたか?」
サーシャは一瞬、銃を取り落とし、喜びを露にする。
だが。
エリアスは意にも介していないように、再びサーシャを見つめた。
「なんで.....」
「僕には死がない、全てのVe’z人がそうだが」
エリアスは胸に空いた穴を見せる。
それはすぐに塞がり、
「う、ぁあああああああああああああああ!!!」
引き金が何度も引かれ、銃声が木霊する。
エリアスの頭、右目、左胸、脇腹、股間、右足首を、寸分違わぬ精密射撃が襲う。
だが、エリアスは変わらずそこに立っていた。
「終わりか?」
「......く!」
サーシャは背を向けて逃げようとする。
直後。
サーシャは服の襟をつかまれて、エリアスに抱き寄せられた。
「僕の目を見ろ」
「だ、だめ...!」
エリアスは、サーシャの視線が自分の目に移る瞬間に、エリアスは精神干渉にて彼女を沈黙させた。
「ケルビス」
『はっ』
「艦隊を移動させる。全艦のシステムを掌握しろ」
『既に完了しております』
「宜しい」
エリアスは、エリスにバレる前に艦隊を送り返すつもりだった。
相当無理をして艦隊を維持していたことを知っているので、彼らが帰れば、必ず酷い目にあうと知っているうえでだ。
エリスに知れる前に、艦隊ごと処分する気なのだ。
「エリアス!」
だが、展開はそう甘くはいかない。
展望室に佇むエリアスの前に、ジェネラスに連れられたエリスが現れた。
『では私めはこれで!』
「ケルビ....逃げるな! くっ.....」
ケルビスは、エリスの視界に彼の姿が入る前にワープで離脱する。
そのせいで、エリアスは一人その場に取り残される。
「ポラノルから全部聞いたわ! 追い出すなんて、そんなのダメよ!」
「だが......エリス以外を養うつもりはない」
エリスの剣幕に、エリアスは狼狽える。
じりじりと追い詰められていくエリアスだが、
「そもそも、メッティーラから何も話を聞いていないじゃない! 理由もなく罰するのは、よくないことだと思うわ!」
「......ぐッ!」
痛いところを突かれた、とばかりにエリアスの顔が歪む。
メッティーラには処罰なしで、今回の件を済ませるつもりだったのだ。
『メッティーラ殿は、人間の飼育に大変興味深くあらせられました。主君、どうか――――ご慈悲をいただけませぬか?』
「ジェネラス......」
エリアスは目を閉じ、姿勢を立て直す。
「ジェネラス、お前が裏切るとは思っていなかったな」
『処刑していただいて構いませぬ。ただ拙者は.......エリス様と、メッティーラ殿に背くことが、結果的にエリアス様を不幸にすると、愚考したまでの事でございます』
ジェネラスは真っすぐにエリアスを見据えた。
その強い目を受けて、エリアスはついに頷いた。
「............僕も、排除するだけの結果は必ずイレギュラーを招く。そう思っていた節はあった。....自分を裏切った僕も同罪だ......エリス、メッティーラと話をしてみることにする」
「エリアス.....大好き!」
「......ああ」
うれしそうに笑ったエリスを見て、エリアスは完全に折れた。
ジェネラスはそれを見て思った。
「(拙者らエクスティラノスを動かせる程の卓越した人心掌握術、それでいて自覚なしとは.....空恐ろしいという他あるまいな)」
と。
気配を感じた彼女は、ヘイルスだと思って背後を振り返り――――
「えっ......エリアス様!?」
「そうか...成程、深層心理に情報を挿入したな?」
サーシャはエリアスの言っていることが全く分からない。
だが直後、サーシャは一瞬で意識を奪われて、その場に立ち尽くす。
言わば、人間の意識の編集モードのような状態である。
「『戻れ』」
エリアスがそう命じると、サーシャの深層心理にあった偽の記憶と、暗示が消去される。
途端、サーシャは瞳孔を見開いて、エリアスを見た。
「――――ッ、誰ですかっ!?」
「僕の名前はエリアス。Ve’zの――――」
「くっ!!」
直後、なんの躊躇もなくサーシャは発砲した。
エリアスの左胸に穴が開く。
「やった――――やりましたっ!」
「.....それで、目は覚めたか?」
サーシャは一瞬、銃を取り落とし、喜びを露にする。
だが。
エリアスは意にも介していないように、再びサーシャを見つめた。
「なんで.....」
「僕には死がない、全てのVe’z人がそうだが」
エリアスは胸に空いた穴を見せる。
それはすぐに塞がり、
「う、ぁあああああああああああああああ!!!」
引き金が何度も引かれ、銃声が木霊する。
エリアスの頭、右目、左胸、脇腹、股間、右足首を、寸分違わぬ精密射撃が襲う。
だが、エリアスは変わらずそこに立っていた。
「終わりか?」
「......く!」
サーシャは背を向けて逃げようとする。
直後。
サーシャは服の襟をつかまれて、エリアスに抱き寄せられた。
「僕の目を見ろ」
「だ、だめ...!」
エリアスは、サーシャの視線が自分の目に移る瞬間に、エリアスは精神干渉にて彼女を沈黙させた。
「ケルビス」
『はっ』
「艦隊を移動させる。全艦のシステムを掌握しろ」
『既に完了しております』
「宜しい」
エリアスは、エリスにバレる前に艦隊を送り返すつもりだった。
相当無理をして艦隊を維持していたことを知っているので、彼らが帰れば、必ず酷い目にあうと知っているうえでだ。
エリスに知れる前に、艦隊ごと処分する気なのだ。
「エリアス!」
だが、展開はそう甘くはいかない。
展望室に佇むエリアスの前に、ジェネラスに連れられたエリスが現れた。
『では私めはこれで!』
「ケルビ....逃げるな! くっ.....」
ケルビスは、エリスの視界に彼の姿が入る前にワープで離脱する。
そのせいで、エリアスは一人その場に取り残される。
「ポラノルから全部聞いたわ! 追い出すなんて、そんなのダメよ!」
「だが......エリス以外を養うつもりはない」
エリスの剣幕に、エリアスは狼狽える。
じりじりと追い詰められていくエリアスだが、
「そもそも、メッティーラから何も話を聞いていないじゃない! 理由もなく罰するのは、よくないことだと思うわ!」
「......ぐッ!」
痛いところを突かれた、とばかりにエリアスの顔が歪む。
メッティーラには処罰なしで、今回の件を済ませるつもりだったのだ。
『メッティーラ殿は、人間の飼育に大変興味深くあらせられました。主君、どうか――――ご慈悲をいただけませぬか?』
「ジェネラス......」
エリアスは目を閉じ、姿勢を立て直す。
「ジェネラス、お前が裏切るとは思っていなかったな」
『処刑していただいて構いませぬ。ただ拙者は.......エリス様と、メッティーラ殿に背くことが、結果的にエリアス様を不幸にすると、愚考したまでの事でございます』
ジェネラスは真っすぐにエリアスを見据えた。
その強い目を受けて、エリアスはついに頷いた。
「............僕も、排除するだけの結果は必ずイレギュラーを招く。そう思っていた節はあった。....自分を裏切った僕も同罪だ......エリス、メッティーラと話をしてみることにする」
「エリアス.....大好き!」
「......ああ」
うれしそうに笑ったエリスを見て、エリアスは完全に折れた。
ジェネラスはそれを見て思った。
「(拙者らエクスティラノスを動かせる程の卓越した人心掌握術、それでいて自覚なしとは.....空恐ろしいという他あるまいな)」
と。
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