84 / 200
シーズン4-ヴァンデッタ帝国戦後
084-錆びついた栄光
しおりを挟む
こういう事だったのか。
僕は内心、納得のようなものを抱いていた。
「問題」とは――――
『ある時、Veに所属する人間は気づいた。厳重に秘匿された、月の裏側にある施設に。その施設は、先史文明の持つ技術すべてを納めていた。それはVeにとって、広大な宇宙を旅する翼となるはずのものだった』
だが、そう上手くはいかなかったようだ。
『しかし、その技術を扱い、理解するためには――――我々の祖先には到底及ぶことのできない、超越的存在への到達が不可避だった。』
何が起きたのか。
それは、何の変哲もないある一日の事だった。
『始まりの八人の一人が乱心し、装置を起動しつつVeの国民を殺害して回ったのだ。だがそれは、宇宙へと飛び出すための一歩でしかなかった』
あまりにもおぞましい真実。
Ve’zの中央部であるアロウトは、Veに残された数万人の魂ともいうべき――――精神の融合から作られていたのだ。
『..........』
『残酷だと思うだろうか? しかしながら、多くの人間たちは、新たな肉体を得て復活した。素体である生身の肉体を捨てることができたのだ。そして、永遠の繁栄が齎された』
そこから、上へ上へと登っていくと、次の記録があった。
『勢いを増した我々は、まず宇宙に版図を伸ばした。資源を集め、植民し、永遠の命をあてにした上で危険な実験を繰り返した』
「.........」
『そして、我々はついに――――「ALDONA」の技術へと辿り着いた』
アルドナが何なのかは、書かれていなかった。
わざわざ書くべきでないことだったのか、それとも....
とりあえず、参照してみる。
『これは――――成程、禁忌とされるわけだ』
僕はALDONAについて調べて、頷く。
これがVe’zに何をもたらしたのか?
『我々の祖先は、愚考を犯した。干渉するべきでない世界の理を踏み荒らし、完全なる虚無へと戻そうとしてしまったのだ』
ALDONAは、世界の滅亡を引き起こしかけた。
だが、それでも尚。
Ve’zの人間たちは、繁栄の手を止めることはなかった。
『そしてついに、我々は知的文明とのファーストコンタクトを果たした。旧文明と呼ばれるそれを――――我らは当たり前のように蹂躙した』
Ve’zは、現在のキロマイア皇国の原型となったその国を踏みつぶし、国民から技術を奪い、彼らを奴隷とするでもなく惑星を滅ぼした。
その結果、多くの人間が故郷を追われ、広範囲に散った。
今の宇宙に広がる民族の基礎は、その国家だったのだろう。
『思えばそれが、我らの滅ぶ前兆だったのだろう』
さらに上る。
しばらくは意味のない歴史や記録だったので、重要な記述まで上がる。
その頃には、すでに二十六万年が経過していた。
『――――問題が発生したため、記録する。自壊を選ぶアルティノスが急速に増加している。理由は不明』
『....!』
もともと、自壊という手段を持っていたらしいアルティノスたちは、自分の本体記憶を破壊して自壊――――つまり、自殺という手段で数を減らし始めた。
理由は不明だが、僕が思うに.....飽きたのだろう。
他文明を蹂躙し、好き勝手に生きて、享楽に明け暮れて。
人間という生物は、永遠の幸福などという過ぎたものを受け止めるには――――脆すぎたのだ。
『......勝手なものだ』
僕は呟く。
そして、さらに記録を昇るのだった。
僕は内心、納得のようなものを抱いていた。
「問題」とは――――
『ある時、Veに所属する人間は気づいた。厳重に秘匿された、月の裏側にある施設に。その施設は、先史文明の持つ技術すべてを納めていた。それはVeにとって、広大な宇宙を旅する翼となるはずのものだった』
だが、そう上手くはいかなかったようだ。
『しかし、その技術を扱い、理解するためには――――我々の祖先には到底及ぶことのできない、超越的存在への到達が不可避だった。』
何が起きたのか。
それは、何の変哲もないある一日の事だった。
『始まりの八人の一人が乱心し、装置を起動しつつVeの国民を殺害して回ったのだ。だがそれは、宇宙へと飛び出すための一歩でしかなかった』
あまりにもおぞましい真実。
Ve’zの中央部であるアロウトは、Veに残された数万人の魂ともいうべき――――精神の融合から作られていたのだ。
『..........』
『残酷だと思うだろうか? しかしながら、多くの人間たちは、新たな肉体を得て復活した。素体である生身の肉体を捨てることができたのだ。そして、永遠の繁栄が齎された』
そこから、上へ上へと登っていくと、次の記録があった。
『勢いを増した我々は、まず宇宙に版図を伸ばした。資源を集め、植民し、永遠の命をあてにした上で危険な実験を繰り返した』
「.........」
『そして、我々はついに――――「ALDONA」の技術へと辿り着いた』
アルドナが何なのかは、書かれていなかった。
わざわざ書くべきでないことだったのか、それとも....
とりあえず、参照してみる。
『これは――――成程、禁忌とされるわけだ』
僕はALDONAについて調べて、頷く。
これがVe’zに何をもたらしたのか?
『我々の祖先は、愚考を犯した。干渉するべきでない世界の理を踏み荒らし、完全なる虚無へと戻そうとしてしまったのだ』
ALDONAは、世界の滅亡を引き起こしかけた。
だが、それでも尚。
Ve’zの人間たちは、繁栄の手を止めることはなかった。
『そしてついに、我々は知的文明とのファーストコンタクトを果たした。旧文明と呼ばれるそれを――――我らは当たり前のように蹂躙した』
Ve’zは、現在のキロマイア皇国の原型となったその国を踏みつぶし、国民から技術を奪い、彼らを奴隷とするでもなく惑星を滅ぼした。
その結果、多くの人間が故郷を追われ、広範囲に散った。
今の宇宙に広がる民族の基礎は、その国家だったのだろう。
『思えばそれが、我らの滅ぶ前兆だったのだろう』
さらに上る。
しばらくは意味のない歴史や記録だったので、重要な記述まで上がる。
その頃には、すでに二十六万年が経過していた。
『――――問題が発生したため、記録する。自壊を選ぶアルティノスが急速に増加している。理由は不明』
『....!』
もともと、自壊という手段を持っていたらしいアルティノスたちは、自分の本体記憶を破壊して自壊――――つまり、自殺という手段で数を減らし始めた。
理由は不明だが、僕が思うに.....飽きたのだろう。
他文明を蹂躙し、好き勝手に生きて、享楽に明け暮れて。
人間という生物は、永遠の幸福などという過ぎたものを受け止めるには――――脆すぎたのだ。
『......勝手なものだ』
僕は呟く。
そして、さらに記録を昇るのだった。
10
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。
――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?
【SF短編】エリオの方舟
ミカ塚原
SF
地球全土を襲った二一世紀の「大破局」から、約二〇〇年後の世界。少年エリオ・マーキュリーは世界で施行された「異常才覚者矯正法」に基づいて、大洋に浮かぶ孤島の矯正施設に収容された。無為な労働と意識の矯正を強いられる日々の中で、女性教官リネットとの出会いが、エリオを自らの選択へ導いてゆく。

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。
スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。
地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!?
異世界国家サバイバル、ここに爆誕!

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる