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シーズン4-ヴァンデッタ帝国戦後
082-最古の記録
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僕とシーシャは、実体を持たない大書庫を、下へ下へと降りていく。
積み重ねられたデータは、深くなるにつれより詳細に、より明確になっていく。
そして、十分に検証が積み重ねられ、そのうえで禁忌とされたものが、大書庫にある閉架に集まるのだ。
『ここには、アルティノスの権限だけで入ることはできない。シーシャ?』
『はい』
僕とシーシャ、そしてカサンドラの権限が三つ揃って初めて、この書架にアクセスできるようになる。
管理者である僕と、副管理的な側面を持つカサンドラ、そしてVe‘z最重要区画の保護者であるシーシャがいて初めて、入れる場所なのだ。
ここにはエリアス自身も興味を持ったことがないようだ。
『ここは......凄まじい新規知識の宝庫ですね...』
『だが、シーシャ。お前に知ることは許されていない』
『ええ、分かっています』
本当なら僕も知る権利はない。
だが、その全てを知るためにここに来たわけではない。
僕はここに、Ve’zの過去を求めにきたのだ。
『なかなかに深いな、ここの情報だけでは新し過ぎる』
Ve‘zの歴史は遥かに長く、閉架の浅層にある情報はむしろ最終章により近い内容だ。
僕とシーシャは閉架を辿り、より古い情報へと向かっていく。
ある時を過ぎると、閉架の管理方法に人間性が現れてくるようになった。
恐らく閉鎖される前に、管理者が情報を読み解いた後なのだろう。
『申し訳ありません、エリアス様』
四代ほど記録を遡った時、シーシャが喋りかけてきた。
そちらを見ると、何もない空間にシーシャが張り付いていた。
『ここより先は、エクスティラノスでは進めないようです』
『そうか...では戻れ。僕だけで行く』
『お気をつけて』
僕は更に下へ下へと降りていく。
そして、違和感に気づく。
「ここらの情報は手打ちなのか」
記憶から直接書き込んだ情報ではなく、生身の人間がキーボードらしきもので打ち込んだ文章が多い。
恐らく、Ve’z最古の記録に近いのだ。
『ここが終着点か』
僕はそこにある情報を見た。
驚く事に、そこにある情報は、地球の技術レベルとそう変わらないものばかりだった。
記録を閲覧すると、僕の中に文章が入り込んでくる。
『偉大なるVe‘zの歴史もまた、その興りは普通の国家と変わらなかった。Veという国がそこにあったのだ。度重なる争いを経て、戦乱の中で生まれた国家だ』
「...」
『長きに続く争いで、我らの先祖が住まう惑星は荒れた。死の炎が大地を焼き尽くし、振り撒かれた毒が大地と住まう人間を蝕んだのだ』
これは恐らく、核戦争があったのだろう。
結局、地球とは事情が異なるとはいえ、核を持った人間がやることは変わらないか。
『我らの先祖は絶望の歴史を歩んだが、始まりの八人は違った』
「始まりの八人?」
『彼等は自らの持てる全てを使い、クローンに意識を移して復活する技術を手に入れた。これにより、我らは毒の中で恐れず活動できるようになった。インプラントの開発で、より自らの性能を引き上げた我らの祖先は、宇宙へと足を踏み出した』
展開が早いような気がするが、書き方からすると、これは後世から検証された記録なのだろう。
『宇宙は広く、広大だった。だが、祖先には無限の時間があり、それはさしたる問題ではなかった。問題は、この後にある』
「問題...?」
僕は気になる文面を見つけ、それをより詳しく調べるのだった。
積み重ねられたデータは、深くなるにつれより詳細に、より明確になっていく。
そして、十分に検証が積み重ねられ、そのうえで禁忌とされたものが、大書庫にある閉架に集まるのだ。
『ここには、アルティノスの権限だけで入ることはできない。シーシャ?』
『はい』
僕とシーシャ、そしてカサンドラの権限が三つ揃って初めて、この書架にアクセスできるようになる。
管理者である僕と、副管理的な側面を持つカサンドラ、そしてVe‘z最重要区画の保護者であるシーシャがいて初めて、入れる場所なのだ。
ここにはエリアス自身も興味を持ったことがないようだ。
『ここは......凄まじい新規知識の宝庫ですね...』
『だが、シーシャ。お前に知ることは許されていない』
『ええ、分かっています』
本当なら僕も知る権利はない。
だが、その全てを知るためにここに来たわけではない。
僕はここに、Ve’zの過去を求めにきたのだ。
『なかなかに深いな、ここの情報だけでは新し過ぎる』
Ve‘zの歴史は遥かに長く、閉架の浅層にある情報はむしろ最終章により近い内容だ。
僕とシーシャは閉架を辿り、より古い情報へと向かっていく。
ある時を過ぎると、閉架の管理方法に人間性が現れてくるようになった。
恐らく閉鎖される前に、管理者が情報を読み解いた後なのだろう。
『申し訳ありません、エリアス様』
四代ほど記録を遡った時、シーシャが喋りかけてきた。
そちらを見ると、何もない空間にシーシャが張り付いていた。
『ここより先は、エクスティラノスでは進めないようです』
『そうか...では戻れ。僕だけで行く』
『お気をつけて』
僕は更に下へ下へと降りていく。
そして、違和感に気づく。
「ここらの情報は手打ちなのか」
記憶から直接書き込んだ情報ではなく、生身の人間がキーボードらしきもので打ち込んだ文章が多い。
恐らく、Ve’z最古の記録に近いのだ。
『ここが終着点か』
僕はそこにある情報を見た。
驚く事に、そこにある情報は、地球の技術レベルとそう変わらないものばかりだった。
記録を閲覧すると、僕の中に文章が入り込んでくる。
『偉大なるVe‘zの歴史もまた、その興りは普通の国家と変わらなかった。Veという国がそこにあったのだ。度重なる争いを経て、戦乱の中で生まれた国家だ』
「...」
『長きに続く争いで、我らの先祖が住まう惑星は荒れた。死の炎が大地を焼き尽くし、振り撒かれた毒が大地と住まう人間を蝕んだのだ』
これは恐らく、核戦争があったのだろう。
結局、地球とは事情が異なるとはいえ、核を持った人間がやることは変わらないか。
『我らの先祖は絶望の歴史を歩んだが、始まりの八人は違った』
「始まりの八人?」
『彼等は自らの持てる全てを使い、クローンに意識を移して復活する技術を手に入れた。これにより、我らは毒の中で恐れず活動できるようになった。インプラントの開発で、より自らの性能を引き上げた我らの祖先は、宇宙へと足を踏み出した』
展開が早いような気がするが、書き方からすると、これは後世から検証された記録なのだろう。
『宇宙は広く、広大だった。だが、祖先には無限の時間があり、それはさしたる問題ではなかった。問題は、この後にある』
「問題...?」
僕は気になる文面を見つけ、それをより詳しく調べるのだった。
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