SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

文字の大きさ
上 下
81 / 200
シーズン4-ヴァンデッタ帝国戦後

081-抱えた借金

しおりを挟む
ヴァンデッタ帝国の消滅。
そのニュースは、すべての国家を震撼させた。
普段であれば交流を持たない各国家の首脳たちは、TRINITY.が緊急で開いた首脳会議に挙って集った。

『えー本日は、ヴァンデッタ帝国の消滅について....』
『待て! 先にこの話をすべきだろう!』
『貴様、友好国の話が先か、この馬鹿者が!』
『馬鹿者はそっちだろう!』

そして。
ヴァンデッタ帝国の消滅と同じくらい大きな事件が、オルトス王国に隣接した国家で起こっていた。
ビージアイナ帝国の首都が奪われ、帝室全員の死亡が確認されたのだ。
その事件を引き起こした勢力の名は、「Noa-Tun連邦」。
誰も知らない、闇の底から現れた勢力が、帝国に喧嘩を売り――――見事、勝利して見せてしまったのだ。
もちろん、ヴァンデッタ帝国とは違い、ビージアイナ帝国は首都と主要な星系を奪われただけに過ぎず、国家としての機能は喪失し始めている段階にあった。

『あの侵略者どもは、ディーヴァ女帝すらも惨殺したのだ! Ve’zなどよりも集中して叩くべき対象であろう!』
『待て待て。君は冷静さを欠いている』

喚いていたのはリューギリス・エルライン。
だがそれを、オーベルン神聖連合の法皇イラサが制止した。

『この短期間でビージアイナの首都星系を落とした勢力に、要らぬ手出しをするべきではないよ。技術レベルからして違うと私は思う』
『では、静観しろと? このまま我々が、Ve’zとその....連邦に踏みつぶされていくのを?』
『待て。Ve’zに喧嘩を売ったのはあの国であろう。反撃が過剰すぎるだけでは?』
『奴らの思考は読めん! いつ我々に牙を剥くか判らんのだぞ!』

こうして会議は紛糾し...
いつも通り、定時で皆が退出するという結果に終わったのだった。






農業惑星...改め、E-rautahエ・ラウターにて。
僕は収穫の手伝いをしていた。

『今年の春は例年の気候データより暑かったので、糖度が高めになっているはずです』
「そうか...エリスは甘すぎるのは好まないから、糖度が一定値以上のものは分解して保管する」
『承知いたしました』

僕もケルビスも、手作業で収穫を行っている。
触手だと、掴む力が強すぎるからだ。

「それで、負債はどうなった?」
『残り98億1520エリスです』
「遠い道だな?」
『この程度で私めの罪が晴れるなら...』

結局ケルビスは、エリスの管轄下に入ったが......エリスは僕に、惑星を壊すなという約束は破ったから、僕とケルビスで共通の借金を背負うことになった。
よくわからない基準で設けられた収入が、エリスという通貨で支払われるようになり、100%天引きだ。

「この一週間で、2億返済できたのは幸いだった」
『二度と使えない手ですが....』

エリスの記憶からフィードバックしたデュラボーンⅤの風景を、アロウトの一区画に再現したのだ。
これで2億稼げたが、同じ手は使えない。

「地味な金策こそ、僕たちの贖罪だからな....」

僕はまた一つ果物を背中の籠に入れる。
左の籠には無事なものを、右の籠には傷んでいるものを入れている。
流石に原生種なだけあって、虫害には強いようだが。

「十五分後に離脱する、あとは任せた」
『承知いたしました』

僕は作業の手を止めずに、そう報告する。
ケルビスはそれにしっかりと頷いた。

『大変恐縮ですが、十五分後のご予定は?』
「シーシャと”閉架”の整理に」
『成程。気をつけていってらっしゃいませ』

閉架とは、僕がいないとアクセスできない領域の情報領域だ。
秘匿された技術や、エクスティラノスには不要な技術が集まっている場所。
ここで僕は、Ve’zの過去について探るつもりだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【SF短編】エリオの方舟

ミカ塚原
SF
地球全土を襲った二一世紀の「大破局」から、約二〇〇年後の世界。少年エリオ・マーキュリーは世界で施行された「異常才覚者矯正法」に基づいて、大洋に浮かぶ孤島の矯正施設に収容された。無為な労働と意識の矯正を強いられる日々の中で、女性教官リネットとの出会いが、エリオを自らの選択へ導いてゆく。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

Reboot ~AIに管理を任せたVRMMOが反旗を翻したので運営と力を合わせて攻略します~

霧氷こあ
SF
 フルダイブMMORPGのクローズドβテストに参加した三人が、システム統括のAI『アイリス』によって閉じ込められた。  それを助けるためログインしたクロノスだったが、アイリスの妨害によりレベル1に……!?  見兼ねたシステム設計者で運営である『イヴ』がハイエルフの姿を借りて仮想空間に入り込む。だがそこはすでに、AIが統治する恐ろしくも残酷な世界だった。 「ここは現実であって、現実ではないの」  自我を持ち始めた混沌とした世界、乖離していく紅の世界。相反する二つを結ぶ少年と少女を描いたSFファンタジー。

【なろう430万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

体内内蔵スマホ

廣瀬純一
SF
体に内蔵されたスマホのチップのバグで男女の体が入れ替わる話

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

処理中です...