SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

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シーズン3-ヴァンデッタ帝国の末路

080-万国料理の宴

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こうして、宴が始まった。
会場は農業惑星ではなく、アロウトに変更された。
何故かと言うと.....

『ノクティラノス全員も参加できるとは.....』

ノクティラノスは基本的に虫と同じレベルの自我しか持たないが、賑やかしにはなっていた。
全員でこちらが用意した純粋エネルギークリスタルに群がり、テンタクルアームでエネルギーを採取している。
本来であれば自分でエネルギーを供給できるノクティラノスにとっては、食事に当たる行為なのだろう。

『不思議な気分です』

会場である都市部分には、エヴェナスの義体が大量に集まっていた。
僕が作ったわけではない彼らは、全員で一つの意識を共有する存在だ。

『自分で作ったものを食べるというのは、不思議なものですね』
『フィードバックが大量に来ていますが、個体毎に嗜好の差は無いようです』

エヴェナスは調理係、配膳係、参加者を務めているが、仕事をしているエヴェナスも食事係のフィードバックを受け取っている。
誰も食いはぐれることの無い配役なのだ。

『ノーグは特に好評ですね。人間というのは興味深いです』

カサンドラが、岩塩ソテーを飲み込んだ後に言った。
岩塩は生成出来ないので、直接採って来たものだ。

「ケルビス、カトーラナはどうだ?」
『再現性に乏しいですが、これこそ食材調理の極致と言っても過言ではありませんね』

ケルビスらしい評価だ。
それを理解している僕も、つくづくケルビスを失いたくないと思っていたわけか。
結局あの後、僕はエリスに、今回の件を話した。
すると、エリスは、

『正当な反撃じゃない。だって、エリアスの持ち物を盗もうとしたんでしょう? ガゼラークみたいに、邪魔だったから消したわけじゃないんでしょう?』
『ああ、だが......』
『それに、ヴァンデッタ帝国みたいな国は、どんなに負けても懲りないわ。禍根を断つという意味なら、それで正解だと思うわ』

という風に、ケルビスを正当化する方向へ進んでいった。
彼女も多少無理を言っている自覚はあるようだったが、それだけケルビスがエリスにとって重要人物であるようだ。

「シティロスはどうだ?」
『エリス様は不気味がっておいででしたが....味は良いようですね』

メッティーラはシティロスを既に完食していた。
もともとそこまで量のある料理ではなかったからだろう。
エビのような海産物の料理であるが、これもメッティーラの感覚でしか再現できないだろう。
シーシャのピロエットルも、本来のものとは違うジスト星系産の肉を利用しているものだ。
外がカリカリで美味しいらしいので、それを握り潰してしまった自分の罪悪がより強調される。

『エリアス様、最後の一つを貴女様に』
「いや、いい。現地で食べたからな....お前が食べるべきだ」
『はっ』

握り飯....ジェリン持ち帰りセット(10個+スープと茶付き)を食べていたジェネラスが、こちらに寄って来て握り飯を渡そうとしてくる。
だが、僕はこの宴において誰かの食事を奪う気はない。
それより....

「その鎧は趣味か?」
『はっ。騎士であれば武具を身につけるというのを以前から知っておりましたので、タッティラに作って頂いた次第でございます』
「タッティラ、資源と生産ルートに影響は出していないな?」
『私の趣味です! 人間みたいに一から鋳造、成形、装飾のプロセスを踏んでみたかったので.....』

よくよく見れば、継ぎ目や通し穴に粗が見られる。
作業用機械を使っていないようだ。

「そうか....良く出来ている」
『精進いたします!』

タッティラは、アディナと共にラキートを食べている。
アディナは少し居心地が悪そうだが、タッティラと会話をしているようで、少しだけこちらの印象を和らげているかもしれない。

「後は......」

会場の端を見やると、数体のエヴェナスに囲まれて、アドラスとグレゴルがケーキを食べていた。
ケルビスが一日で焼いたものだ。
もし僕がケルビスを消していたら、あのケーキを焼くのはエヴェナスだったかもしれない。
少なくともグレゴルは、その判断を是としただろうが...

「エリアス、また顔が怖くなってるわよ」
「...あ、ああ。すまない」

僕はエリスの方に向き直る。

「ほら、笑って笑って」
「...こうか?」

エリスがにやりと笑うので、僕も笑みを浮かべてみる。

「なんか...裏がありそうな笑顔よねー」
「ひどいな...」

その時、エリスが手を伸ばして来た。
僕は何をするのかと警戒したが、僕の口端を指で突いて、上に上げただけだった。

「ほら、笑って。私、エリアスの笑ってるところ、あんまり見たことないのよね」
「...そうか?」

思えば、最後に笑ったのはいつだろう。
笑顔にする意味もなかったので、笑った事はないような気がする。
では、笑ってみるか。

「可愛いわよ」
「そうか」

エリスが楽しそうなので、僕も悪戯してやりたくなった。
ステーキを切り分けて、彼女の前に差し出した。

「......あら?」
「口を開け」
「...こういうのも、悪くないわね...」

エリスは若干引きながらも、差し出した肉を口に入れた。
その時、僕は内心に何か感情が湧き起こるのを感じる。
この想いはなんだろう?
それに答えを見つけるには、まだまだ時間がかかりそうだった。
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