SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

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シーズン3-ヴァンデッタ帝国の末路

078-決闘(前編)

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訓練場のアリーナ、その中央で。
エリアスとケルビスが向かい合っていた。
互いに触手を構え、臨戦態勢に入っている。

「お前に戦闘を教えてもらったのが、懐かしいような気持ちだ」
『光栄にございます』
「だから僕も。”理想”は捨てる」

エリアスは目を閉じ、そして再び見開いた。
赤く輝く瞳が、ケルビスを除いたエクスティラノス達の反応を淡白なモノへと変える。

「エクスティラノスの処分など、削除すればいいだけの事ではないか?」
『それを含めてのお考えなのでしょう? ただエリアス様は、私めの事を記憶に刻みたいだけなのですよ』

真の意味でのエリアスは、ケルビスと戦う事に意義を見出していない様子だった。
だが、エリアスの自我にケルビスを消す権限はない。
アラタの意識に従うまでだ。

「では、行くぞ」
『お相手いたします』

直後。
二人の姿が掻き消え、アリーナの中央で二人の拳がぶつかり合う。
ケルビスが放った拳を受け止めたエリアスが、左手でケルビスを殴り飛ばした。

『.....素晴らしい』

ケルビスは口内を切ったことで溢れた体液を、吐き捨てる。
エリアスはアラタとは違い、あらゆる戦術、戦略における隙の無い存在だ。

『ならば、こちらもただ挑むまで!』

ケルビスの姿が掻き消え、直後エリアスが左腕を上げる。
ガシッという音が響き、ケルビスの神速の手刀は阻まれたのだ。
すぐに触手が、エリアスを襲うが――――

「自我というものは、厄介だ」

エリアスはそれを迎撃することもなく、最低限の動きで回避した。
ケルビスは拙いと判断し、逃げようとするが――――エリアスはその手刀を素早く掴み、床に叩き付ける。

『ぐっ....! これは少々、見誤っておりました――――申し訳ないッ!!』

ケルビスは起き上がると同時に回し蹴りを放つが、エリアスはそれを触手で阻む。
足を素早く引いたケルビスはそれをローキックに変化させ、再び打撃するが、エリアスはそれを跳躍することで回避し、その足に乗る。

『オホウ!! 素晴らしいですね!』
「遊んでいる場合ではない」
『これは失敬――――私めに、戯れ以上の価値を見出してくださるとは――――恐悦至極の至り!』
「やはり自我は厄介だ」

触手と拳のラッシュの応酬を、二人は繰り広げる。
だが、エリアスの方が一枚上手だと、誰が見ても分かった。

『がはっ!!』

何度目のミスか、触手と拳を同時に出していたケルビスが、腹を蹴られて吹き飛ぶ。
壁に激突した衝撃で、大きな亀裂が走った。

『これは、これは.......』

ケルビスは朦朧とする視界の中で、再び思い知る。
エリアス=アルティノスという存在が、如何に超越的であるかを。

『素晴らしい....実に素晴らしい......』

ケルビスはゆっくりと起き上がる。
Ve’z人にとって、身体の損傷など動きを止める障害にはなり得ない。

『その強さこそが.....私めの主人――――』

ケルビスは笑って、自らの終わりを見届ける者達を眺め、
自分が起き上がるのを待ってくれている主人に、心から感謝した。

『我が忠誠は、その姿勢にこそ、注がれるのです!』

ケルビスは床を蹴り、エリアスへ向けて吶喊した。
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