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シーズン3-ヴァンデッタ帝国の末路
076-海賊の夢
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結局のところ、ノーグとはなんだったのか?
それは、調査を進める上で判明した。
ノーグの語源は、海賊の訛り言葉での「夢」。
酒場で頼める一番量の多いメニューなのだそうだ。
僕は夜まで情報を集め、純粋なレアメタルを海賊の通貨に変換してもらって、その時を待った。
「へい、らっしゃい!」
「ノーグをひとつ。それから...ビールをひと瓶貰えるか?」
僕は夜になって開く酒場へと訪れて、ノーグを注文した。
ノーグはお祝い事...海賊にとっての、成人や宿敵を殺したり、伝説の財宝を手にした時に食べられるものであり、注文すれば普通に出してくれるようだ。
「はいよ...一応先払いだぜ」
「ああ」
僕は専用の端末を使い、店主に金を支払った。
PCP...Pirates Credit Pointという通貨らしく、海賊が足がつかないように利用する通貨なのだ。
「作るのに二十分くらい掛かるぜ、折角だからつまみを出してやる。...いいことがあったんだろ?」
「ありがとう」
店主は見たこともない料理を、小鉢に入れて出してくれた。
フォークで刺して口に運ぶと、塩辛さが目立った。
慌てて、ビールを飲んで中和する。
この身体ではどっちにしろ酔えないので、水の代わりのようなものだ。
「...はいよ、出来たぜ」
そして、二十分程が経過した時。
店主が、巨大な鉢を持ってやってきた。
皿は六つの領域に分けられ、それぞれの領域には...
何かの肉を揚げたものがゴロゴロと入った領域。
穀物を炊いたらしきものに、肉が乗せられて赤いタレがかかったものが入っている領域。
元の材料が不明な野菜のたっぷり入った領域。
橙色のスープに、何かの具材が浮いている領域。
海産物らしきものが占めている領域。
そして...完全に謎の食材が占めている領域。
「お客さん、ノーグを頼むのは初めてだな? 俺が説明してやるよ」
僕は結構ですと言いたかったが、言える雰囲気ではなかった。
店主は、丁寧に説明する
「昔の事だ。宇宙に出る前の初代首領がいた星には、六つの海が集う場所があったらしいんだぜ」
六つの海が集う場所を、初代首領は頑張って求めたが、それはあくまで伝承に過ぎず、見つけることはできなかった。
ただし、首領はその伝説を忘れてはおらず、酒の席でこの料理に喩えて解説し、いつか必ず見つけて見せると豪語したそうだ。
結局彼が死ぬまでそれは発見できなかったようだが。
「なるほど...だから、“夢”という意味なんだな」
「そうだ! お前さんも海賊なら、いつかは見つけたい宝や、叶えたい夢があるだろ? それに願いを込めて、この六つの贅沢を享受するのさ」
店主は満足したのか、鼻歌を歌いながら戻って行った。
事情を知るのは面白い。
だが、問題は...この量が僕に食べ切れるだろうか?
胃の容量を超えて食べることは、この身体では出来ない。
僕はしばし、悩むのであった。
それは、調査を進める上で判明した。
ノーグの語源は、海賊の訛り言葉での「夢」。
酒場で頼める一番量の多いメニューなのだそうだ。
僕は夜まで情報を集め、純粋なレアメタルを海賊の通貨に変換してもらって、その時を待った。
「へい、らっしゃい!」
「ノーグをひとつ。それから...ビールをひと瓶貰えるか?」
僕は夜になって開く酒場へと訪れて、ノーグを注文した。
ノーグはお祝い事...海賊にとっての、成人や宿敵を殺したり、伝説の財宝を手にした時に食べられるものであり、注文すれば普通に出してくれるようだ。
「はいよ...一応先払いだぜ」
「ああ」
僕は専用の端末を使い、店主に金を支払った。
PCP...Pirates Credit Pointという通貨らしく、海賊が足がつかないように利用する通貨なのだ。
「作るのに二十分くらい掛かるぜ、折角だからつまみを出してやる。...いいことがあったんだろ?」
「ありがとう」
店主は見たこともない料理を、小鉢に入れて出してくれた。
フォークで刺して口に運ぶと、塩辛さが目立った。
慌てて、ビールを飲んで中和する。
この身体ではどっちにしろ酔えないので、水の代わりのようなものだ。
「...はいよ、出来たぜ」
そして、二十分程が経過した時。
店主が、巨大な鉢を持ってやってきた。
皿は六つの領域に分けられ、それぞれの領域には...
何かの肉を揚げたものがゴロゴロと入った領域。
穀物を炊いたらしきものに、肉が乗せられて赤いタレがかかったものが入っている領域。
元の材料が不明な野菜のたっぷり入った領域。
橙色のスープに、何かの具材が浮いている領域。
海産物らしきものが占めている領域。
そして...完全に謎の食材が占めている領域。
「お客さん、ノーグを頼むのは初めてだな? 俺が説明してやるよ」
僕は結構ですと言いたかったが、言える雰囲気ではなかった。
店主は、丁寧に説明する
「昔の事だ。宇宙に出る前の初代首領がいた星には、六つの海が集う場所があったらしいんだぜ」
六つの海が集う場所を、初代首領は頑張って求めたが、それはあくまで伝承に過ぎず、見つけることはできなかった。
ただし、首領はその伝説を忘れてはおらず、酒の席でこの料理に喩えて解説し、いつか必ず見つけて見せると豪語したそうだ。
結局彼が死ぬまでそれは発見できなかったようだが。
「なるほど...だから、“夢”という意味なんだな」
「そうだ! お前さんも海賊なら、いつかは見つけたい宝や、叶えたい夢があるだろ? それに願いを込めて、この六つの贅沢を享受するのさ」
店主は満足したのか、鼻歌を歌いながら戻って行った。
事情を知るのは面白い。
だが、問題は...この量が僕に食べ切れるだろうか?
胃の容量を超えて食べることは、この身体では出来ない。
僕はしばし、悩むのであった。
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