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シーズン3-ヴァンデッタ帝国の末路
074-征服される帝国
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エリアスがカルメナスを探訪している間。
Ve’zはエヴェナスを量産して指揮官とし、帝国の領土の51%を完全に復興不能な死の星系と化させていた。
『ケルビス様』
『君は実質的にエクスティラノスだ、様は要らないよ』
『そうですか....ところで、カリグ星系にて戦闘中ですが、現地のスリーパーが接触してきました』
『ふうん、眠る者たちが接触してきたか。合流したかい?』
『それが、エクスティラノスではない私の命令権では、彼らも敵対行動をとらざるを得ないらしく、ケルビス様の一時権限の発行を求めてきています』
『分かった、そうしよう』
ケルビスは同時に、侵略状況のモニターを見る。
ヴァンデッタ帝国の主力艦隊は首都星系に繋がる唯一のルートである、アルライツに集結していた。
『愚かですね、ワームホールを自由に操作できない者達は』
ケルビスは呟く。
彼にとっては、ヴァンデッタ帝国を地図から消せばそれで全ては終わりだ。
エリアスに新たにグラーム星系の名物「ホドエール」を要求し、時間を稼いではいるものの...侵略中にエリアスが帰還すると非常にまずい。
その「バレると拙い」状況が、AIの独自判断に即していないのだが、ケルビスは気づいていなかった。
『それから、エリス様から料理の腕を褒めていただきました』
『それは重畳。複製体からのフィードバックを受けることができる君は、物理的な料理に関しても優れているようだ』
エヴェナスは、エリスの料理人としての役割も持っている。
以前はケルビスがこなしていたものの、そのデータを引き継いだうえでシーシャからレシピ情報を受け取り、1mm単位の動きまでを複製体からのフィードバックを集約して最適化する事が出来たのだ。
『それは、戦闘にも使っているね?』
『はい』
エヴェナスはまさに、エクスティラノス版ノクティラノスである。
同時に一体しか存在できないエクスティラノスとは違い、彼らは権限と一つの自我を有しながら、無限に近い数の義体を持てる存在。
『”私”の機体はエヴェナス=コマンダーですので、戦闘指揮においてエヴェナス=アサルトのフィードバックを広義的に収集可能です』
そして、何より恐ろしいのはエヴェナスの機体である。
エクスティラノスに与えられる機体を、エヴェナスは自分の義体の数だけ別々に持つことができる。
惑星破壊兵器も、その他の想像を絶する兵装すらも、エヴェナスの権限であれば使用できる。
上位ノクティラスと言っても過言ではない。
だが、問題もある。
『.....それから、”私”の機体にも損耗が出始めています。ノクティラノスへの互換性が無いため、通常のドクトリンに組み込むことが難しいです』
『そうかね......では、ノクティラノスの一部操作権限を一時発行しよう。その間に、戦闘型を修理するといい』
『はい』
ノクティラノスと違い、エヴェナスの機体は一機一機がエクスティラノス艦と同様である。
同一存在同士なため、それぞれを巻き込んだ戦術などをとれないのだ。
『無から生み出された”自分”は、ノクティラノス達の蓄積経験のフィードバックを応用できません。これから、積み重ねを行って行こうと思います』
『よろしい』
ケルビスは報告を聞き、頷く。
そして、エヴェナスを下がらせる言葉を口にする。
『エリス様がそろそろ夕飯の時間だ、調理場に材料は揃えてある。君の腕を振るいたまえ』
『はい』
エヴェナスは頷くと、去って行った。
ケルビスはその背を見て、一抹の不安を拭い去るのだった。
『私たちの立場を脅かす可能性はあるが、下剋上の意思はないようだね。従順で助かるよ』
そうケルビスは口にする。
その言葉が、エヴェナスには届かないと知っていて。
Ve’zはエヴェナスを量産して指揮官とし、帝国の領土の51%を完全に復興不能な死の星系と化させていた。
『ケルビス様』
『君は実質的にエクスティラノスだ、様は要らないよ』
『そうですか....ところで、カリグ星系にて戦闘中ですが、現地のスリーパーが接触してきました』
『ふうん、眠る者たちが接触してきたか。合流したかい?』
『それが、エクスティラノスではない私の命令権では、彼らも敵対行動をとらざるを得ないらしく、ケルビス様の一時権限の発行を求めてきています』
『分かった、そうしよう』
ケルビスは同時に、侵略状況のモニターを見る。
ヴァンデッタ帝国の主力艦隊は首都星系に繋がる唯一のルートである、アルライツに集結していた。
『愚かですね、ワームホールを自由に操作できない者達は』
ケルビスは呟く。
彼にとっては、ヴァンデッタ帝国を地図から消せばそれで全ては終わりだ。
エリアスに新たにグラーム星系の名物「ホドエール」を要求し、時間を稼いではいるものの...侵略中にエリアスが帰還すると非常にまずい。
その「バレると拙い」状況が、AIの独自判断に即していないのだが、ケルビスは気づいていなかった。
『それから、エリス様から料理の腕を褒めていただきました』
『それは重畳。複製体からのフィードバックを受けることができる君は、物理的な料理に関しても優れているようだ』
エヴェナスは、エリスの料理人としての役割も持っている。
以前はケルビスがこなしていたものの、そのデータを引き継いだうえでシーシャからレシピ情報を受け取り、1mm単位の動きまでを複製体からのフィードバックを集約して最適化する事が出来たのだ。
『それは、戦闘にも使っているね?』
『はい』
エヴェナスはまさに、エクスティラノス版ノクティラノスである。
同時に一体しか存在できないエクスティラノスとは違い、彼らは権限と一つの自我を有しながら、無限に近い数の義体を持てる存在。
『”私”の機体はエヴェナス=コマンダーですので、戦闘指揮においてエヴェナス=アサルトのフィードバックを広義的に収集可能です』
そして、何より恐ろしいのはエヴェナスの機体である。
エクスティラノスに与えられる機体を、エヴェナスは自分の義体の数だけ別々に持つことができる。
惑星破壊兵器も、その他の想像を絶する兵装すらも、エヴェナスの権限であれば使用できる。
上位ノクティラスと言っても過言ではない。
だが、問題もある。
『.....それから、”私”の機体にも損耗が出始めています。ノクティラノスへの互換性が無いため、通常のドクトリンに組み込むことが難しいです』
『そうかね......では、ノクティラノスの一部操作権限を一時発行しよう。その間に、戦闘型を修理するといい』
『はい』
ノクティラノスと違い、エヴェナスの機体は一機一機がエクスティラノス艦と同様である。
同一存在同士なため、それぞれを巻き込んだ戦術などをとれないのだ。
『無から生み出された”自分”は、ノクティラノス達の蓄積経験のフィードバックを応用できません。これから、積み重ねを行って行こうと思います』
『よろしい』
ケルビスは報告を聞き、頷く。
そして、エヴェナスを下がらせる言葉を口にする。
『エリス様がそろそろ夕飯の時間だ、調理場に材料は揃えてある。君の腕を振るいたまえ』
『はい』
エヴェナスは頷くと、去って行った。
ケルビスはその背を見て、一抹の不安を拭い去るのだった。
『私たちの立場を脅かす可能性はあるが、下剋上の意思はないようだね。従順で助かるよ』
そうケルビスは口にする。
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