上 下
73 / 180
シーズン3-ヴァンデッタ帝国の末路

073-惑星巡り(後編)

しおりを挟む
というわけで、僕は旅の最終目的地である、海賊国家カルメナスに来ていた。
...のだが。

「ぐ、ええ...は、離せっ...」
「ノーグはどこで売っている?」
「知らねえ...よ、その辺の酒場にでも行けよ...!」

到着した途端に、丸腰の女性と思われたのか絡まれ、それを軽くいなしたはいいものの、これが基準だとかなりやりにくい。
仕方ないので、髪をまとめてフードで隠すことで、絡まれにくい格好をする事にした。

「酒場で注文できるものなのか?」

僕はとりあえず、都市を散策する。
治安は最悪で、銃撃戦があちこちで繰り広げられていた。
裏路地には虚ろな目で蹲る何かの中毒者がいたり、道のあちこちに汚れが溜まっていた。
一応管理部隊はいるようで、「首領の下っ端」と呼ばれているようだ。
彼等は恐らくカースト最下位であり、命を奪われない保証がある代わりに労働と被暴力を強制されているのだろう。

「...酒場が無いな」

ノーグを持ち帰ろうにも、肝心の酒場がどこにも無い。
データでは都市のあちこちにあるそうだが、昼間なせいかどこも閉まっていた。

「...ん?」

その時。
路地から男が飛び出して、僕の進路を塞いだ。
背後でも同様に、大柄の男が現れて、僕を包囲した。

「よう、兄ちゃん」
「...?」
「さっきからこの辺ウロウロして、何か探してんのか?」
「ノーグを買いたいのだが?」
「ノーグだぁ!? あんなモノ、誰に食わせるんだよ!」

大男二人は、下品に笑う。
僕はその様子を、じっと見ていた。

「まあいいや、死ね!」

背後の男が、なんでもないことのように銃を取り出して撃った。
僕はそれを回避して、背後の男につかみかかって銃を奪う。

「そんなもので、僕は倒せない」

銃を奪うつもりだったのだが、奪おうと銃身を握った際に銃のフレームが歪む。
相当脆い素材だったようだ。

「くそっこいつ!」
「バカ、逃げるぞ!」
「?」

絡んで来たのに、反抗したらすぐに逃げてしまった。
僕はよくわからず立ち止まって考える。
もう一人は銃を持っていたので、僕を倒せたはずだ。
だというのに、銃を奪って壊しただけで逃げ出した。
臆病で片付けられればいいが...

『国営放送の時間だぜ!』

その時、耳が痛くなるほどのチャイムと共に、空に人の顔が映し出された。
恐らくだが、最大勢力のカルメナス・センチネルの広報官ジェッド・リメルだ。

『今日のお知らせは、三つ! カルメナス・ヴァンガードの主力部隊に、新たに主力艦ヴァンキッシャーが加わるぜ! これは俺たちにとって大きな快挙だな!』

読み上げが終わると同時に、あちこちから歓声が響いて来る。
カルメナスは確か、海賊の連合のような国家であるため、自力で艦船を製造する手段を持たないんだったな。
それが、主力艦を手にしたという事は.....どこかで鹵獲したのだろうか?

『次に、これは引き続きの措置だが――――Ve’zとエミドに対する戦闘・略奪・妨害行動を強く禁ずる。親分が関わるなって言ってんだから、大人しく従えよ、ガキども!』

確か、カルメナスは不干渉を宣言していたな。
これからの事を考えると、カルメナスを味方につけて尖兵とするのもいいかもしれない。
さしずめ、Ve’zのフロント企業だ。

『最後に――――先日のヴァルツウェルで記憶に新しい、傭兵カル・クロカワ! 奴に対する干渉は一切禁止だ! これは極秘事項だ、奴に悟られるな、必ず復讐するが、怒りは抑えろ! 奴に関わると大抵の海賊は死ぬ! ――――覚えてるな、アルダネイト首領の言葉を...! 海賊は、臆病であれと! 99の臆病と、1の勇気で財宝を奪い取るんだ! いいな!』

そして、放送は終わった。
....カル・クロカワか。
この間も名を聞いたな。

「少しは、情報を集めておくか」

僕は再び、ノーグを探すために歩き出したのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

体内内蔵スマホ

廣瀬純一
SF
体に内蔵されたスマホのチップのバグで男女の体が入れ替わる話

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜

華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日  この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。  札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。  渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。  この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。  一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。  そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。 この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。 この作品はフィクションです。 実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。

悠久の機甲歩兵

竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。 ※現在毎日更新中

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

多重世界の旅人/多重世界の旅人シリーズII

りゅう
SF
 とある別世界の日本でごく普通の生活をしていたリュウは、ある日突然何の予告もなく違う世界へ飛ばされてしまった。  そこは、今までいた世界とは少し違う世界だった。  戸惑いつつも、その世界で出会った人たちと協力して元居た世界に戻ろうとするのだが……。 表紙イラスト:AIアニメジェネレーターにて生成。 https://perchance.org/ai-anime-generator

―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――

EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ―― とある別の歴史を歩んだ世界。 その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。 第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる―― 大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。 そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。 そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。 そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。 そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。 果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。 未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する―― 注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。 注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。 注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。 注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。 注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう

果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。 名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。 日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。 ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。 この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。 しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて―― しかも、その一部始終は生放送されていて――!? 《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》 《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》 SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!? 暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する! ※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。 ※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。

処理中です...