SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

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シーズン3-ヴァンデッタ帝国の末路

069-惑星巡り(中編)

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ラキートは既に在庫があるので、僕はピロエットルを手に入れるためにジスト星系へと足を運んだ。
ここは一年ほど前に何か大きな事件があったらしく、警備をすり抜けるのは容易な事ではなかった。

「発展しているな」

流石はオルトス王国でも有数の、研究都市だ。
街は白く均一的で、雑念を感じさせない作りになっている。
.....ただし、あちこちで同じマスクの男の広告を見るが。

「誰だ?」

Ve’zのデータにはなかったことを考えると、アイドルや有名人の類だろう。
流石のVe’zも、数年単位で移り変わる人間の著名人を記録しきることはできない。

「カル・クロカワか...」

僕は広告に出ている名を見て、そう呟く。
珍しい苗字だが、この世界でも無いわけではない。
王国人ではないのだろうか?

「いつか会ってみたいものだな」

僕は、プロジェクターから映し出されたカルのホログラフを見ながら、呟いた。
クロカワ、僕の苗字と同じだったから。
少し懐かしくなったのだ。

「事前情報ではここだったか」

僕は、大通りに面した店を仰ぎ見る。
飲み屋のようだが、持ち帰りは出来るのだろうか?

「いらっしゃい!」

店内に入ると、中はテーブル席とカウンター席が混在する雑多な場所だった。
どうやら飲み屋で合っているらしい。
客はほとんどおらず、僕が目立ってしまう事になった。

「お嬢さん、何か用かい?」
「ピロエットルをここで販売していると聞いたんだが、持ち帰りはできるか?」
「ピロエットルは売ってねえぞ?」
「なに?」

僕は硬直する。
非常に気まずい気分になったからだ。

「俺が売ってるのはピロエットルだ」
「何か違うのか?」
「発音だよ、お嬢さん。ピーロ↑エットルが甘辛肉。ピロウ↓エットーが揚げ鶏肉さ」

成程。
二種類あるのか....だが、事前情報では揚げ鶏肉だったので、僕はそれを購入することにした。

「袋か? バレルでいいか?」
「バレルで売ってくれるか?」
「あいよ」

値段は安かった。
僕は店主に別れを告げ、ピロエットルとその呼称についての知識を持って帰還した。



ジェネラスの所望するジェリン(おにぎり)は、キスカ星系にのみ自生する特殊な植物を使ったモノだ。
他の惑星でも育てられるが、環境の変化に弱くすぐに変異してしまうため、キスカの味にはならないようだ。

「持ち帰りを所望したのだが....」
「お嬢さん、もっと食べないと大きくなれないよ」
「....」

茶店でジェリンを持ち帰ろうとしたのだが、容姿が災いして店員に捕まってしまった。
別に悪い事をしたわけではないのだが、店先で昼ごはんに付き合う事になった。

「.....この星はね、本当にいいところなんだけれど...お嬢さんみたいな人は、なかなか来ないのよ」
「そうですか」
「若い人が増えると、賑やかになっていいのだけれどねぇ」

茶店がある集落の周囲には、田んぼと森以外は何もない。
僕には農家の気持ちは分からないが、楽しいのだろうか?

「ここには娯楽はあるんですか?」
「さあねえ....お友達とのおしゃべりが、あたしらにはとっても楽しい事ですよ」
「そうですか....」

温暖な気候故か、地平線の先に浮かぶ入道雲を見ながら、僕はお茶をすするのだった。
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