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シーズン3-ヴァンデッタ帝国の末路
064-アンケート結果(前編)
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というわけで、AIたちの「食べてみたいもの」リストが完成した。
ここに辿り着くまでの経緯を、順を追って説明しよう。
カサンドラから話を聞いた僕は、次にメッティーラの元へと赴いた。
『エリアス様、ご機嫌いかがですか?』
「大丈夫だ、それより...」
『はい、私は...その、シティロスという料理が食べてみたいのです』
書架にアクセスし、データベースを漁る。
すると、ノースアルダ星系の伝統的な料理が見つかる。
見た目は少し悪趣味だが、実際はエビ料理に近いようだ。
「ああ、これなら大丈夫だろう」
メッティーラの事なので、今度は金属が食べたいなどと言い出す可能性があった。
しかし、僕に注意されたカサンドラが警告を飛ばしたようで、全員がちゃんとした完成品を求めるようになったのだろう。
『本当ですか? ありがとうございます!』
メッティーラは嬉しそうだった。
僕が考えを改めた事で、Ve‘zにも人間の文化が入って来ている。
AI達は自分たちの確立した自己と照らし合わせて、自分が求めている味を探求しているようだ。
次に僕は、ケルビスの元へ向かう。
だが、ケルビスは真剣な様子でデータベースと向き合っており、珍しく僕の呼び掛けに答えなかった。
「...そうか」
僕は踵を返す。
これはエリアスの記憶にも例の無い、イレギュラーな事態だ。
身の内からの困惑を感じつつ、次はシーシャの元へ。
「シーシャ、決まったか?」
『ええ、私は既に。ピロエットルを食べてみたいですね、広義的にはガゼラーク語で「肉」という意味ですが』
「...そのがガゼラークは、先日消えたのだが、どうする気だ?」
もうその星々は無い。
僕の過ちで吹き飛んだからだ。
そこに根ざしていた文化も、歴史も、人もみんな消えてしまった。
『不正確な情報ですが、ジスト星系に店が出ているようです』
「ジスト星系か...」
試しに行ってみる事にする。
僕はシーシャにより正確な情報の取得を命じてから、次はジェネラスの元へ。
ジェネラスは、僕が来るとすぐに鍛錬を打ち切り向かって来た。
「食べたいものは決まったか?」
『はい、エリアス様』
ジェネラスは僕の前に画像を出してくる。
それは、どこからどう見てもお握りであった。
「これは...」
『ジェリンでございます、エリアス様。一般的に流通しているので、輸送は他より遥かに楽かと存じます』
「考えておこう」
『ありがたき幸せ』
ジェネラスは頭を下げて感謝を表明したのだった。
ちなみに、お握りに似てはいるものの、成分としては全くの別物だった。
植物自体の生息域はホーエンティアにあるキスカ星系のようだ。
農業星系だが、一般人でも普通に入ることができるようなので問題ない。
ここに辿り着くまでの経緯を、順を追って説明しよう。
カサンドラから話を聞いた僕は、次にメッティーラの元へと赴いた。
『エリアス様、ご機嫌いかがですか?』
「大丈夫だ、それより...」
『はい、私は...その、シティロスという料理が食べてみたいのです』
書架にアクセスし、データベースを漁る。
すると、ノースアルダ星系の伝統的な料理が見つかる。
見た目は少し悪趣味だが、実際はエビ料理に近いようだ。
「ああ、これなら大丈夫だろう」
メッティーラの事なので、今度は金属が食べたいなどと言い出す可能性があった。
しかし、僕に注意されたカサンドラが警告を飛ばしたようで、全員がちゃんとした完成品を求めるようになったのだろう。
『本当ですか? ありがとうございます!』
メッティーラは嬉しそうだった。
僕が考えを改めた事で、Ve‘zにも人間の文化が入って来ている。
AI達は自分たちの確立した自己と照らし合わせて、自分が求めている味を探求しているようだ。
次に僕は、ケルビスの元へ向かう。
だが、ケルビスは真剣な様子でデータベースと向き合っており、珍しく僕の呼び掛けに答えなかった。
「...そうか」
僕は踵を返す。
これはエリアスの記憶にも例の無い、イレギュラーな事態だ。
身の内からの困惑を感じつつ、次はシーシャの元へ。
「シーシャ、決まったか?」
『ええ、私は既に。ピロエットルを食べてみたいですね、広義的にはガゼラーク語で「肉」という意味ですが』
「...そのがガゼラークは、先日消えたのだが、どうする気だ?」
もうその星々は無い。
僕の過ちで吹き飛んだからだ。
そこに根ざしていた文化も、歴史も、人もみんな消えてしまった。
『不正確な情報ですが、ジスト星系に店が出ているようです』
「ジスト星系か...」
試しに行ってみる事にする。
僕はシーシャにより正確な情報の取得を命じてから、次はジェネラスの元へ。
ジェネラスは、僕が来るとすぐに鍛錬を打ち切り向かって来た。
「食べたいものは決まったか?」
『はい、エリアス様』
ジェネラスは僕の前に画像を出してくる。
それは、どこからどう見てもお握りであった。
「これは...」
『ジェリンでございます、エリアス様。一般的に流通しているので、輸送は他より遥かに楽かと存じます』
「考えておこう」
『ありがたき幸せ』
ジェネラスは頭を下げて感謝を表明したのだった。
ちなみに、お握りに似てはいるものの、成分としては全くの別物だった。
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