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シーズン3-ヴァンデッタ帝国の末路
061-嵐の予兆
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ワームホールの深部にて、エミドとVe‘zの大規模な交戦を確認。
TRINITY.によって齎されたそのニュースは、宇宙中に即座に広がった。
沈黙を貫いていた勢力、そして敵対すれば相手の国が滅んでしまう強大な勢力同士が、激しく衝突しているのだ。
それは、各国家の首脳に大きな衝撃を与えた。
オルトス王国では、そのニュースは驚きをもって受け止められたが、首脳陣の衝撃はさほどではなかった。
初期交戦の時点から、スリーパー防衛戦で名を馳せたカル・クロカワを筆頭に、ゴールドからプラチナランクの傭兵が調査を始めていたからだ。
「だがこれで、Ve’zの大集結の理由が明らかとなったな」
オルトス王国の皇太子アーラムは、そう断言した。
Ve‘zが星系を放棄してまで大集結を始めた理由は、エミドの侵略によるものだと。
実際、ワームホールの内部だけでなく、深宇宙での戦闘は観測されており、それはエミドの既知宇宙の支配領域となるハスグータでも起きていた。
「皇太子殿、どうなされますか?」
「調査せよ。それが諸君らの仕事であろう?」
TRINITY.の支部長が尋ねたが、皇太子はニヤリと笑ってそう返した。
その他の国家...ビージアイナ帝国、ジスティカ王国、キロマイア皇国、オルダモン連邦、ホーエンティア帝国、オーベルン神聖連合、クロペル共和国、ヘルティエット王国などは、調査に努めると宣言し、
「冗談じゃねぇ、あの二つの勢力に関わっていい事なんかあった試しがねえからな、お前ら、ネコババするなら国から出て行ってからにしろよ...ビビってるわけじゃねえ、この星系ごと消し炭にされてからじゃ遅いんだぞ、海賊には...前も言ったよな?」
海賊国家カルメナスの首領アルダネイトは国家主導では手を出さないと広く発表した。
だが。
最後の国家だけは違った。
その名は、ヴァンデッタ帝国。
「奴らが戦力を集中している今こそ好機。奴らの首都への道を切り拓き、奴らの遺産を使ってこの帝国を永遠のモノとするのだ。行け、我が精強なる帝国騎士たちよ、国益の為にVe’z領へと侵攻するのだ」
ヴァンデッタ帝国現皇帝シルディス・ラドゥ・リンヴァンデッタが、そう命じたのだ。
将軍の艦隊がVe‘zによって蒸発させられたのを知らないわけではない。
ただ、皇帝は見誤っていた。
その艦隊は、将軍の技量が低いから負けたのではないという事を...
その頃、エリアスはカサンドラからの報告を受けていた。
『TRINITY.なる組織によって、我々とエミドが紛争状態にあることが明らかにされました』
「放っておけ」
『はい』
カサンドラはエリアスの長い髪を洗髪しながら頷く。
エリアスの髪はアロウトが常に清潔であるし、そもそもエリアスの生理的活動が静止状態にある事から汚れないが、エリスが床に髪を引きずって歩くエリアスを見て、
「たまには洗いなさい!」
と言ったので、エリアスは自分で洗おうとしたものの、そこに洗髪係を立候補したのがケルビスだった。
だが、エリスが強く拒否したことでカサンドラとなり、今に至る。
「そもそも、髪を洗うのであれば分解ナノマシンを使用すればいいはずだが」
『手間を楽しむ...エリアス様が教えてくださったでしょう?』
「そうだったな...」
エリアスはふと、自分が入っている小さな浴槽を見る。
エリスが浮かべたゴム製の謎の鳥が浮いていた。
「アヒルのつもりか?」
『どうされましたか、エリアス様?』
「いや、何でもない」
エリアスは首を振る。
そして、自分もアヒルのフロートを作ってみるか...と決心するのであった。
TRINITY.によって齎されたそのニュースは、宇宙中に即座に広がった。
沈黙を貫いていた勢力、そして敵対すれば相手の国が滅んでしまう強大な勢力同士が、激しく衝突しているのだ。
それは、各国家の首脳に大きな衝撃を与えた。
オルトス王国では、そのニュースは驚きをもって受け止められたが、首脳陣の衝撃はさほどではなかった。
初期交戦の時点から、スリーパー防衛戦で名を馳せたカル・クロカワを筆頭に、ゴールドからプラチナランクの傭兵が調査を始めていたからだ。
「だがこれで、Ve’zの大集結の理由が明らかとなったな」
オルトス王国の皇太子アーラムは、そう断言した。
Ve‘zが星系を放棄してまで大集結を始めた理由は、エミドの侵略によるものだと。
実際、ワームホールの内部だけでなく、深宇宙での戦闘は観測されており、それはエミドの既知宇宙の支配領域となるハスグータでも起きていた。
「皇太子殿、どうなされますか?」
「調査せよ。それが諸君らの仕事であろう?」
TRINITY.の支部長が尋ねたが、皇太子はニヤリと笑ってそう返した。
その他の国家...ビージアイナ帝国、ジスティカ王国、キロマイア皇国、オルダモン連邦、ホーエンティア帝国、オーベルン神聖連合、クロペル共和国、ヘルティエット王国などは、調査に努めると宣言し、
「冗談じゃねぇ、あの二つの勢力に関わっていい事なんかあった試しがねえからな、お前ら、ネコババするなら国から出て行ってからにしろよ...ビビってるわけじゃねえ、この星系ごと消し炭にされてからじゃ遅いんだぞ、海賊には...前も言ったよな?」
海賊国家カルメナスの首領アルダネイトは国家主導では手を出さないと広く発表した。
だが。
最後の国家だけは違った。
その名は、ヴァンデッタ帝国。
「奴らが戦力を集中している今こそ好機。奴らの首都への道を切り拓き、奴らの遺産を使ってこの帝国を永遠のモノとするのだ。行け、我が精強なる帝国騎士たちよ、国益の為にVe’z領へと侵攻するのだ」
ヴァンデッタ帝国現皇帝シルディス・ラドゥ・リンヴァンデッタが、そう命じたのだ。
将軍の艦隊がVe‘zによって蒸発させられたのを知らないわけではない。
ただ、皇帝は見誤っていた。
その艦隊は、将軍の技量が低いから負けたのではないという事を...
その頃、エリアスはカサンドラからの報告を受けていた。
『TRINITY.なる組織によって、我々とエミドが紛争状態にあることが明らかにされました』
「放っておけ」
『はい』
カサンドラはエリアスの長い髪を洗髪しながら頷く。
エリアスの髪はアロウトが常に清潔であるし、そもそもエリアスの生理的活動が静止状態にある事から汚れないが、エリスが床に髪を引きずって歩くエリアスを見て、
「たまには洗いなさい!」
と言ったので、エリアスは自分で洗おうとしたものの、そこに洗髪係を立候補したのがケルビスだった。
だが、エリスが強く拒否したことでカサンドラとなり、今に至る。
「そもそも、髪を洗うのであれば分解ナノマシンを使用すればいいはずだが」
『手間を楽しむ...エリアス様が教えてくださったでしょう?』
「そうだったな...」
エリアスはふと、自分が入っている小さな浴槽を見る。
エリスが浮かべたゴム製の謎の鳥が浮いていた。
「アヒルのつもりか?」
『どうされましたか、エリアス様?』
「いや、何でもない」
エリアスは首を振る。
そして、自分もアヒルのフロートを作ってみるか...と決心するのであった。
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