SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

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シーズン2-エミド再侵攻

059-コントロールセンター防衛戦-後編

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グンドの艦隊は、一気に窮地に追い込まれた。
ジェネラスと予備艦隊を置いて、アドラスとメッティーラが現れたからである。

『くっ、このままでは押されてしまうだと....!?』

グンドは歯噛みする。
もともと不利寄りだった戦況は、アドラスの参戦によって一気に不利となった。
レーザーとミサイルの嵐が、防御シールドごと艦隊を押し込んでいく。

『....だが、防御を破る方法が分からないな』
『おや、お気づきではなかったのかな』

メッティーラが悔しそうに呟くが、直後その呟きを拾ったケルビスが、嘲笑気味に返した。

『....どういうことだ?』
『見たまえ、我らが攻撃するたび、あの旗艦のエネルギー総量が徐々に低下している。即ち、ワームホールを再度破壊すれば、エネルギー供給を受ける事が出来なくなった艦隊は瓦解するだろうね』
『....では、何故そうしない?』
『すぐに終わってしまっては、エリアス様が退屈されてしまう。であれば、メッティーラ、アドラス、ジェネラス――――君たちの試合が終わるまで待った方がよいかと思ってね』
『....では、我らがワームホールを潰しに行こう』

メッティーラは呆れ果てた。
まさか、このAIは、事もあろうに遊び半分だったというのだ。

『ああ、君たちはここの防衛を頼む』
『ケルビス、あなたに手柄を奪われたくはないのだが』
『敵将を生け捕りにしたのだろう? であれば私めも何かしらの手柄を立てなければ、エリアス様がお怒りになるかもしれませんからね』

ケルビスの口調が元に戻る。
執行者の口調に。
それを聞いたメッティーラは、ケルビスを無言で送り出した。

『待て――――』
『逃がしませんよ』

第十五船団は回頭し、ワープして行ったケルビスを追おうとする。
しかし、即座に発生した空間異常によって、そのワープを阻害される。

『邪魔をするな――――』
『あはっ!』

アドラスが笑いを漏らす。
直後、その船体が変形し、エネルギーの充填が始まる。
『トゥールビヨン』の発射態勢に入ったのだ。

『全艦、機関最大出力! 抜け出さなければ命はない!』
『無駄だよっ――――去ね』

黒き点は、球体サイズにまで膨れ上がり、グンドの艦隊を飲み込んで急速に縮み始める。
それに応じて発生した重力場が、グンドの乗る機体のエネルギーを急速に消費させていく。

『くっ......中々、耐えるっ....!』

アドラスが苦しそうに呻く。
ブラックホール制御技術は、人類の科学の遥かな延長線でもまだ完成とは言い難い。
一秒一秒を重ねるごとに、制御に使用する思考リソースが増大していくのだ。

『アドラス、やってみせろ』

その時、アドラスに直接エリアスの声が届く。
直後、アドラスの思考領域が拡張された。
アロウトの中枢コンピューターの演算領域の一部が、アドラスに貸し与えられたのだ。

『――――はいっ!』

膨大な情報がアロウトの大書庫から与えられ、アドラスは千年使用しなかった領域を利用してそれを解析、ブラックホールの重力変動パターンをアロウトに書き込んでいく。

『ぐおおお――――』

そして。
ついに、グンドの乗る艦のエネルギー総量が、10%を切った。

『ケルビス、まだか!?』
『喜劇には、タイミングが重要ですからね――――行きます!』

直後、ブラックホールが消失する。
それと同時に、第十五船団を覆っていた光が消失する。

『........見誤った、か!』

それを見越してチャージされていたニューエンドとアルカンシエルに貫かれ、第十五船団は全滅した。
旗艦が火を噴いて爆散するのを見ていたアドラスはほっと安堵の息を漏らした。
繋がっていた演算領域がパージされ、思考のキャッシュが消えていく。

『エリアス様....しっかりやれてましたか?』
『ああ、充分だ』

その通信を、出口のワームホールの残骸付近で聞いていたケルビスは、

『ヤレヤレ、私は今回は手柄無しというわけだね』

と呟いたのであった。
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