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シーズン2-エミド再侵攻
056-クライアレン/エリワンステップ防衛戦・開幕
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「ただいま参上いたしました」
エミド本城。
ジェキドの前で跪く女がいた。
キシナではない。
「第二十一船団長アディナです」
「第十五船団長グンドです」
「待っていたぞ。さあ、船団を率い、クライアレンを奪還せよ」
「「はっ!」」
二人は去って行く。
ジェキドにとっては、都合のいい玩具であるキシナではなく、イレギュラーの種を孕んだ船団長に対しては丁重に接する理由もなかった。
「いいのですか? 作戦の説明などは....」
「いらぬよ、そのための抑制レベルの低下なのだからな」
ジェキドは苦々し気に呟く。
抑制レベルを下げた人間を、それが強さになっているとはいえ放置するのは、彼にとってはそれほどに面倒な事であった。
「それよりもキシナよ」
「はい」
「今回の戦いを、どう見る?」
「問題なく勝てるかと。四十二大星國船団が出たうえ、クライアレンはエミドの領土です。負ける要素がありません」
「そうではない、感情の問題だ」
「.....すみません、分かりません」
「そうか」
ジェキドは悔しそうに視線を戻した。
それを、キシナは僅かに生まれた違和感を感じながら見つめるのであった。
そして。
ワームホールが出現し、エミド艦隊がエリワンステップへと侵入してきた。
『アディナ、お前は本隊と交戦せよ』
『では、偉大なる塔の奪還はお任せします』
『そうしよう』
第二十一船団は即座に探知したVe’zの本隊と、第十五船団はコントロールタワーへとワープする。
『敵艦隊接近』
『ニューエンド、アルカンシエル一斉射』
飛んできた敵艦隊に、回避不能の必殺の一撃が襲い掛かる。
『バカめが』
それを見て、グンドは嗤った。
直後、グンドの乗る艦、ラドジェリアから光の波が放たれる。
波は当たった艦を発光させ、それが全体に拡散したところで、そこにアルカンシエルとニューエンドが直撃した。
『我らを侮ったな?』
そして、光の残滓の中から、エミド艦隊が姿を現した。
前面に展開していたシュヴァリエ=ノクティラノスに、三門のP.O.Dを照射して攻撃する。
シュヴァリエは十二本の触手で連続攻撃を仕掛け、次々とエミド艦を撃沈していく。
だが、シールドは確実に消耗しており、ワームホールからは続々とエミド艦が現れていた。
『ラエリスを出撃させる』
そして、Ve’z艦隊の後部にいた空母アータスから、数十のラエリスが出撃する。
だが、エミド側も負けじと、後方部の母艦を展開する。
『我等もまた、小さな相手の殲滅を得意とするのだよ!』
母艦から展開されたのは、クーラスと呼ばれる、P.O.Dを搭載した艦載機である。
だが、その実態はドローンと変わりがない。
内部の人間は艦に搭載されているモノとは異なり、”整備”されることはない。
それ故に、それを示すかのように、発進した機体の幾つかは停止し、後続の機体に跳ね飛ばされてどこか遠くへと飛んでいく。
洗脳処理に対抗する人間や、”規律”を守らずに秩序を乱した星の生き残りの末路であった。
「.......あんなものまであるとはな」
そして、それを見ていたエリアスは、拳を握りしめた。
戻れなかったエリスと同じ船に乗っていた人間達。
彼らはきっと、その中の一人なのかもしれないと。
「ケルビス――――殲滅せよ」
『お任せください』
エリアスの命に、ケルビスは――――当然であると、答えたのであった。
エミド本城。
ジェキドの前で跪く女がいた。
キシナではない。
「第二十一船団長アディナです」
「第十五船団長グンドです」
「待っていたぞ。さあ、船団を率い、クライアレンを奪還せよ」
「「はっ!」」
二人は去って行く。
ジェキドにとっては、都合のいい玩具であるキシナではなく、イレギュラーの種を孕んだ船団長に対しては丁重に接する理由もなかった。
「いいのですか? 作戦の説明などは....」
「いらぬよ、そのための抑制レベルの低下なのだからな」
ジェキドは苦々し気に呟く。
抑制レベルを下げた人間を、それが強さになっているとはいえ放置するのは、彼にとってはそれほどに面倒な事であった。
「それよりもキシナよ」
「はい」
「今回の戦いを、どう見る?」
「問題なく勝てるかと。四十二大星國船団が出たうえ、クライアレンはエミドの領土です。負ける要素がありません」
「そうではない、感情の問題だ」
「.....すみません、分かりません」
「そうか」
ジェキドは悔しそうに視線を戻した。
それを、キシナは僅かに生まれた違和感を感じながら見つめるのであった。
そして。
ワームホールが出現し、エミド艦隊がエリワンステップへと侵入してきた。
『アディナ、お前は本隊と交戦せよ』
『では、偉大なる塔の奪還はお任せします』
『そうしよう』
第二十一船団は即座に探知したVe’zの本隊と、第十五船団はコントロールタワーへとワープする。
『敵艦隊接近』
『ニューエンド、アルカンシエル一斉射』
飛んできた敵艦隊に、回避不能の必殺の一撃が襲い掛かる。
『バカめが』
それを見て、グンドは嗤った。
直後、グンドの乗る艦、ラドジェリアから光の波が放たれる。
波は当たった艦を発光させ、それが全体に拡散したところで、そこにアルカンシエルとニューエンドが直撃した。
『我らを侮ったな?』
そして、光の残滓の中から、エミド艦隊が姿を現した。
前面に展開していたシュヴァリエ=ノクティラノスに、三門のP.O.Dを照射して攻撃する。
シュヴァリエは十二本の触手で連続攻撃を仕掛け、次々とエミド艦を撃沈していく。
だが、シールドは確実に消耗しており、ワームホールからは続々とエミド艦が現れていた。
『ラエリスを出撃させる』
そして、Ve’z艦隊の後部にいた空母アータスから、数十のラエリスが出撃する。
だが、エミド側も負けじと、後方部の母艦を展開する。
『我等もまた、小さな相手の殲滅を得意とするのだよ!』
母艦から展開されたのは、クーラスと呼ばれる、P.O.Dを搭載した艦載機である。
だが、その実態はドローンと変わりがない。
内部の人間は艦に搭載されているモノとは異なり、”整備”されることはない。
それ故に、それを示すかのように、発進した機体の幾つかは停止し、後続の機体に跳ね飛ばされてどこか遠くへと飛んでいく。
洗脳処理に対抗する人間や、”規律”を守らずに秩序を乱した星の生き残りの末路であった。
「.......あんなものまであるとはな」
そして、それを見ていたエリアスは、拳を握りしめた。
戻れなかったエリスと同じ船に乗っていた人間達。
彼らはきっと、その中の一人なのかもしれないと。
「ケルビス――――殲滅せよ」
『お任せください』
エリアスの命に、ケルビスは――――当然であると、答えたのであった。
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