SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

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シーズン2-エミド再侵攻

055-タッティラとの会話

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数日後、僕はエリワンステップのコントロールセンターを訪れた。
なにぶん急造なので、気密保持も慣性制御も行われていない。
触手を伸ばして、うまく内部を伝っていく。

『タッティラ、作業の様子はどうだ?』
『順調です!』

タッティラは、巨大なキズミのようなアイカメラを持つエクスティラノスだ。
戦闘特化では無いため、カナーティ=ノクティラノスと同様に作業用の触手を多く保持している。
一本の触手ではなく、数千本の細いケーブルが纏まって一つに見えている触手が、数十本ある。
どんな精密な作業も行えるのだ。

『現地に輸送前の資材が残ってたので、それをお借りしてます!』
『不足があれば報告しろ』
『はーい!』

カナーティが飛び回り、急ピッチで拠点の構築を進めている。
予測によれば、次に次元境界が不安定になるタイミングは四日後。
それに備えて、Ve’zの前線基地を作らなければならない。

『思えば、会うのは久々だ』
『私は戦闘特化型ではありませんから.....こういう時しか会えません』

タッティラは非武装型であり、エクスティラノスの本来の標準搭載であるニューエンド以外を持っていない。
だからヴェリアノスを離脱しなかったのだろう。

『我々は居住性を求めないため、建造は順調なのですが....これらの資源が足りません、融通できませんか?』
『......ああ、大丈夫だ』

即座に貯蔵資源リストと、資源の割り振り予定データを比較し、リスト化されていた資源を確保する。
やはり102211合金が一番よく使われるようだ。

『すまない、首都周辺の復興を願い出たタイミングで、こちらもあまり資源を確保できていない』
『いいえ! エリアス様が直々にご用意してくださった資源です、無駄なく活用していきます』
『ここはただの戦略拠点ではない。エリワンステップの.....エリスの名前を冠した、数千年ぶりのVe’zの新しい領土の最前線フロンティアだ、それを忘れるな』
『はい!』

タッティラは深く頷いた。
エリスの名前を付けてしまった以上、ここをクライアレンに戻すことはあってはならない。
既に量産が始まっているラエリスが、続々とこの星系に流れ込んできている。
それだけではなく、ギニラ=ステラギノスと呼ばれる、中位の指揮AIが開発されており、こちらは全ての集合意識に繋がっているキジラを一時的に自分に接続させて統率する個体だ。
破壊されるとポッドの状態で逃げだすことができ、優先的に狙われても問題ないようになっている。

『エミドの襲撃も鳴りを潜めた。恐らく、ここの侵攻に対策を重ねているはずだ』
『エミドには四十二大星國船団が存在しますから、そちらに招集を掛けているのかもしれません』
『そうだな』

データ上は存在するが、ノイズが多い。
詳細となると何も分からないのが、エミド四十二大星國船団だ。
....ただ、エリスの星を襲ったのは恐らくこの中の一つ。

『エリスが言っていた。空を小さい艦が埋め尽くしたと....だが、今まで会った艦艇にはそんなものはなかった』

殆どが戦艦級であり、エリスが見た小型艦はなかった。
最初は世代交代で淘汰されたのかと思っていたが、恐らく秘匿された艦隊を持っているのだろう。

『タッティラ、お前は自己犠牲についてどう思う?』
『何とも思いません。自分を誰かのために犠牲にするというのは、その時の自分の価値観次第です、他人が評するようなことではありませんから』
『そうか』

ラエリスは、第一世代型と第二世代型がいる。
第二世代型は、ラムアタックの後自爆する機能を持っているのだ。
それについて尋ねてみたのだが、AIではこういう質問に応えるのはやはり不得手のようだ。
死生観がないのだから。

『では、頼んだ』
『はい』

僕は触手を収納し、そのままアロウトへと転移した。
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