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シーズン2-エミド再侵攻
054-完璧ゆえの過ち
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というわけで、流しそうめんの会場が完成した。
水だけはわざわざ水車を繋げて汲み上げているが、構造部分は殆ど手作りだ。
接合部分が漏れないようにするのが大変だった。
「さて、では...謹んで、流しソーメン大会を開会させて頂きましょう!」
そうめんの材料である謎の植物に目をつけ、実際に作ったのはケルビスである。
なので彼を称えて、司会役を命じておいた。
「まずはルールを説明いたします」
ケルビスは、虫が付かない機構のカゴに入れた、大量の麺を手で仰ぐ。
「ここに大量の麺がありますが、参加者の皆様には、これを競い合って取ってもらいます! ただし、取りすぎてはダメだとのエリアス様からの御命令です。消化ユニットに収まる量を予測して取ること、というわけです!」
エクスティラノス達も、最近は食べることに興味を持ったようで、消化ユニットと味覚回路を取り付けていた。
「制限時間は60分、各自配られた器具でのみ、掬う事が可能との事です!」
流石に手掴みは絵面が悪いので、全員にトングを配った。
幅が広く、麺を引っ掛けるのに特化した形状だ。
食べる時は、この世界にもあるフォークで絡めて頂くようだ。
「では、始め!」
その時、ケルビスの横から見慣れない男が出てくる。
恐らく、キジラ=ノクティラノスの義体だ。
キジラはカゴから麺を掬うと、水流に流した。
.....一番手前で、それを、メッティーラが奪い取った。
「済まないエリス、これはどうも、二人でするべき行事だったな....」
「いえっ、いいのよ...こういうのは、雰囲気を楽しむものでしょう?」
その後、何度か麺が流されるが、忖度されて全部こちらに流れてきた。
次はレーンを一つではなく複数に分岐させなければいけないな。
「それにしても、生水をそのまま飲んで大丈夫かしら」
「その身体は半分Ve’zのものだから、細菌程度で体調を崩すことはないはずだ」
事前に自分で汚水を飲んでみたので、間違いない。
少なくとも生水程度で病気になったり、胃腸の異常をきたす事はない。
「流石に僕らではこの量は食べきれないな」
『おっと、失礼いたしました』
その時、僕の呟きを拾ったカサンドラが、量を調節するように掬い始めた。
それを見たエクスティラノス達も、それに同調する。
「.....ふふ」
エリスがそれを見て、笑いをこぼした。
僕は彼女が笑ってくれてよかった、と少しだけ安堵する。
「しかし、水質が良いな」
手付かずの川から引いた水だというのに、その水は澄んでいた。
掬った麺を、麺つゆに付けて食べる。
「....それにしても、これはどこの国の味付けなの? 薄いけど、何だか深い味だわ」
「僕にも分からない、どこか閉じた星の調味料だとは分かっているんだがな」
麺つゆは似たような調味料を混ぜて僕が自作した。
まだ味覚が戻らないので、自信が無かったが....しかし、美味しいのであれば試行錯誤の甲斐があったというものだ。
「......私、ずっと人と関わらないでいたから...みんなでこうやって、楽しんでご飯を食べるのは久々ね」
「そうか」
僕も何だか、こういうアクティビティを他人と行うのは久々のような気がする。
前世を含めても、殆ど参加していない。
「これから増やしていけばいい」
「そうね!」
その時、エリスは何を思ったか、僕の顔の前に麺を突き出してきた。
「...何の真似だ?」
「ちょっと余ったけど、お腹いっぱいなのよ」
「......そうか」
少々マナーに欠けるが、僕は突き出された麵を、口に入れた。
飲み込んでから、前世でこういう行為をする事をなんというか、暫し考えた。
ついぞ思い出せなかったので、その日は疑似睡眠に入るまで、それについて考えたのであった。
水だけはわざわざ水車を繋げて汲み上げているが、構造部分は殆ど手作りだ。
接合部分が漏れないようにするのが大変だった。
「さて、では...謹んで、流しソーメン大会を開会させて頂きましょう!」
そうめんの材料である謎の植物に目をつけ、実際に作ったのはケルビスである。
なので彼を称えて、司会役を命じておいた。
「まずはルールを説明いたします」
ケルビスは、虫が付かない機構のカゴに入れた、大量の麺を手で仰ぐ。
「ここに大量の麺がありますが、参加者の皆様には、これを競い合って取ってもらいます! ただし、取りすぎてはダメだとのエリアス様からの御命令です。消化ユニットに収まる量を予測して取ること、というわけです!」
エクスティラノス達も、最近は食べることに興味を持ったようで、消化ユニットと味覚回路を取り付けていた。
「制限時間は60分、各自配られた器具でのみ、掬う事が可能との事です!」
流石に手掴みは絵面が悪いので、全員にトングを配った。
幅が広く、麺を引っ掛けるのに特化した形状だ。
食べる時は、この世界にもあるフォークで絡めて頂くようだ。
「では、始め!」
その時、ケルビスの横から見慣れない男が出てくる。
恐らく、キジラ=ノクティラノスの義体だ。
キジラはカゴから麺を掬うと、水流に流した。
.....一番手前で、それを、メッティーラが奪い取った。
「済まないエリス、これはどうも、二人でするべき行事だったな....」
「いえっ、いいのよ...こういうのは、雰囲気を楽しむものでしょう?」
その後、何度か麺が流されるが、忖度されて全部こちらに流れてきた。
次はレーンを一つではなく複数に分岐させなければいけないな。
「それにしても、生水をそのまま飲んで大丈夫かしら」
「その身体は半分Ve’zのものだから、細菌程度で体調を崩すことはないはずだ」
事前に自分で汚水を飲んでみたので、間違いない。
少なくとも生水程度で病気になったり、胃腸の異常をきたす事はない。
「流石に僕らではこの量は食べきれないな」
『おっと、失礼いたしました』
その時、僕の呟きを拾ったカサンドラが、量を調節するように掬い始めた。
それを見たエクスティラノス達も、それに同調する。
「.....ふふ」
エリスがそれを見て、笑いをこぼした。
僕は彼女が笑ってくれてよかった、と少しだけ安堵する。
「しかし、水質が良いな」
手付かずの川から引いた水だというのに、その水は澄んでいた。
掬った麺を、麺つゆに付けて食べる。
「....それにしても、これはどこの国の味付けなの? 薄いけど、何だか深い味だわ」
「僕にも分からない、どこか閉じた星の調味料だとは分かっているんだがな」
麺つゆは似たような調味料を混ぜて僕が自作した。
まだ味覚が戻らないので、自信が無かったが....しかし、美味しいのであれば試行錯誤の甲斐があったというものだ。
「......私、ずっと人と関わらないでいたから...みんなでこうやって、楽しんでご飯を食べるのは久々ね」
「そうか」
僕も何だか、こういうアクティビティを他人と行うのは久々のような気がする。
前世を含めても、殆ど参加していない。
「これから増やしていけばいい」
「そうね!」
その時、エリスは何を思ったか、僕の顔の前に麺を突き出してきた。
「...何の真似だ?」
「ちょっと余ったけど、お腹いっぱいなのよ」
「......そうか」
少々マナーに欠けるが、僕は突き出された麵を、口に入れた。
飲み込んでから、前世でこういう行為をする事をなんというか、暫し考えた。
ついぞ思い出せなかったので、その日は疑似睡眠に入るまで、それについて考えたのであった。
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