46 / 200
シーズン2-エミド再侵攻
046-滅亡惑星デート
しおりを挟む
数日後。
僕はエリスと一緒に、『宝物殿』内部の惑星デートを敢行していた。
事前に降りて拠点を作っておいたので、安心してテレポートできる。
彼女は今日は、ちょっと暑い惑星に合わせてワンピーススタイルだ。
....僕は関係ないが。
「どうだ?」
「凄いところね.....」
昔はそこそこの文明が発達していたらしい星で、「青」を意味するVe’zの言葉の名前が付けられていたものの、今は滅んでしまったようで誰もいない。
自然消滅のような形で人が消えたようで、かつての都市は植物に侵食されて荒廃している。
こんなバックストーリーがありながら、特に有害そうな生物も植物もなかったので、エリスを呼んだ。
「オルトスのような国だったらしい。当時の記録媒体は全部風化してたが、記念碑が残っていた」
Ve’zの超技術は数千年の劣化をものともしないが、通常の技術体系では数千年も経てばこうなってしまう。
この星にあった国の名前は、少なくとも「カークス」「イドラ」「コー」の三種類を確認している。
全部民主主義だったらしい。
人間が統治する以上、何らかの破綻があったのだろう。
「どうして私を呼んだの?」
「丁度いいから、ここでピクニックでもしないか?」
僕は一緒に持ってきたコンテナを指差す。
自走式で、僕たちに合わせて付いて来るはずだ。
「変な趣味ね....いいけど、私も好きよ。こういうの、なんて言うんだったかしら....」
ちなみに僕らが今いるのは、半壊したオペラハウスだ。
センサーには何も映らないが、暗闇に何かが蠢いているようで少し不気味だ。
「表通りに出よう」
「ええ」
僕は触手で瓦礫を退け、エリスが通れる道を作る。
だが、エリスはそんな事をしなくても、瓦礫の上を跳びながら移動していた。
「何をしている?」
「床に落ちたら死んじゃうっていう、戯れよ」
「面白そうだ」
小学生の頃は、そういうのが好きだった時もある。
僕も彼女に合わせて、瓦礫の上に立つ。
だが、瓦礫が砕けて床に転がる羽目になった。
「下手ね」
「慣れないことはするものじゃないな」
僕は立ち上がる。
その時、ある違和感に気付いた。
僕は恥ずかしい姿をさらして、それを笑われたのに、何故か怒りが湧いてこない。
どういうことだ....?
「それにしても、笑う事はないだろう」
「ごめんなさい、エリアスって何でもできると思ってたから、驚いたのよ」
僕たちはそんなやり取りをしながら、表通りまで出る。
あちこちに放置された車輛から、経った年月が察せられるものがある。
「タイヤで車を? 随分非効率なのね」
「昔は、どこもそうだったんだろう?」
「.....オルトスじゃ、だいぶ古代よ?」
僕は地面に落ちている携帯端末を拾う。
一昔前の地球みたいに、折り畳み式だ。
スマートフォンのような革新的なものは生まれなかったらしい。
「どうして死体が無いのかしら?」
「とっくに風化したんだろう」
白骨化した人間が、完全に風化して消え去るほどの年月が経ったのだろう。
実際この表通りも、植物がアスファルトを破って生えているせいで歩きづらい。
「食事をする場所を探さないとな」
「そうね.....ちょっと虫が多いわ」
コンクリートジャングルだったようだが、今は別の意味でジャングルだ。
平均気温が27℃、平均湿度が62%だから、本当にジャングルだ。
「.....エリス、上で食べないか?」
僕は無事そうに見えるビルを見つけ、指差す。
エリスは頷くと、僕に続く。
崩落したビルの中を歩き、何故崩落しないのかを知る。
「そうか、木の根が...」
「凄いのね、樹木って」
木の枝が張り巡らされ、風化したコンクリートを補強しているのだ。
僕らは一気に屋上まで駆け上がる。
「わぁ......」
「....凄いな」
風が吹き抜ける。
植物に覆われた都市が一望できる、いい場所であった。
「遠くまで続いてるのね」
「ああ、この星全体がこんな様子だ」
人口が膨れ上がった後に弾けたのか、海すらない。
水没した地域はあるが、水は湖サイズで存在しない星だ。
「さて、食事は何か....って、ケルビス印か...」
ケルビスは最近、Ve’zの内部で「ケルビス印」というブランドを作り、加工品を売るようになった。
といっても、僕かエリスしか買わないが。
「お茶と....サンドイッチのようだな」
「私、このフレーバー好きよ」
「僕も、このサンドイッチは好きだ」
ケルビスの不慣れな様子の手作り感が、母親の作ってくれた料理を思い起こさせる。
あまり料理の得意な人間ではなかったからな。
僕らは暫し食事を楽しみ、そして帰還した。
僕はエリスと一緒に、『宝物殿』内部の惑星デートを敢行していた。
事前に降りて拠点を作っておいたので、安心してテレポートできる。
彼女は今日は、ちょっと暑い惑星に合わせてワンピーススタイルだ。
....僕は関係ないが。
「どうだ?」
「凄いところね.....」
昔はそこそこの文明が発達していたらしい星で、「青」を意味するVe’zの言葉の名前が付けられていたものの、今は滅んでしまったようで誰もいない。
自然消滅のような形で人が消えたようで、かつての都市は植物に侵食されて荒廃している。
こんなバックストーリーがありながら、特に有害そうな生物も植物もなかったので、エリスを呼んだ。
「オルトスのような国だったらしい。当時の記録媒体は全部風化してたが、記念碑が残っていた」
Ve’zの超技術は数千年の劣化をものともしないが、通常の技術体系では数千年も経てばこうなってしまう。
この星にあった国の名前は、少なくとも「カークス」「イドラ」「コー」の三種類を確認している。
全部民主主義だったらしい。
人間が統治する以上、何らかの破綻があったのだろう。
「どうして私を呼んだの?」
「丁度いいから、ここでピクニックでもしないか?」
僕は一緒に持ってきたコンテナを指差す。
自走式で、僕たちに合わせて付いて来るはずだ。
「変な趣味ね....いいけど、私も好きよ。こういうの、なんて言うんだったかしら....」
ちなみに僕らが今いるのは、半壊したオペラハウスだ。
センサーには何も映らないが、暗闇に何かが蠢いているようで少し不気味だ。
「表通りに出よう」
「ええ」
僕は触手で瓦礫を退け、エリスが通れる道を作る。
だが、エリスはそんな事をしなくても、瓦礫の上を跳びながら移動していた。
「何をしている?」
「床に落ちたら死んじゃうっていう、戯れよ」
「面白そうだ」
小学生の頃は、そういうのが好きだった時もある。
僕も彼女に合わせて、瓦礫の上に立つ。
だが、瓦礫が砕けて床に転がる羽目になった。
「下手ね」
「慣れないことはするものじゃないな」
僕は立ち上がる。
その時、ある違和感に気付いた。
僕は恥ずかしい姿をさらして、それを笑われたのに、何故か怒りが湧いてこない。
どういうことだ....?
「それにしても、笑う事はないだろう」
「ごめんなさい、エリアスって何でもできると思ってたから、驚いたのよ」
僕たちはそんなやり取りをしながら、表通りまで出る。
あちこちに放置された車輛から、経った年月が察せられるものがある。
「タイヤで車を? 随分非効率なのね」
「昔は、どこもそうだったんだろう?」
「.....オルトスじゃ、だいぶ古代よ?」
僕は地面に落ちている携帯端末を拾う。
一昔前の地球みたいに、折り畳み式だ。
スマートフォンのような革新的なものは生まれなかったらしい。
「どうして死体が無いのかしら?」
「とっくに風化したんだろう」
白骨化した人間が、完全に風化して消え去るほどの年月が経ったのだろう。
実際この表通りも、植物がアスファルトを破って生えているせいで歩きづらい。
「食事をする場所を探さないとな」
「そうね.....ちょっと虫が多いわ」
コンクリートジャングルだったようだが、今は別の意味でジャングルだ。
平均気温が27℃、平均湿度が62%だから、本当にジャングルだ。
「.....エリス、上で食べないか?」
僕は無事そうに見えるビルを見つけ、指差す。
エリスは頷くと、僕に続く。
崩落したビルの中を歩き、何故崩落しないのかを知る。
「そうか、木の根が...」
「凄いのね、樹木って」
木の枝が張り巡らされ、風化したコンクリートを補強しているのだ。
僕らは一気に屋上まで駆け上がる。
「わぁ......」
「....凄いな」
風が吹き抜ける。
植物に覆われた都市が一望できる、いい場所であった。
「遠くまで続いてるのね」
「ああ、この星全体がこんな様子だ」
人口が膨れ上がった後に弾けたのか、海すらない。
水没した地域はあるが、水は湖サイズで存在しない星だ。
「さて、食事は何か....って、ケルビス印か...」
ケルビスは最近、Ve’zの内部で「ケルビス印」というブランドを作り、加工品を売るようになった。
といっても、僕かエリスしか買わないが。
「お茶と....サンドイッチのようだな」
「私、このフレーバー好きよ」
「僕も、このサンドイッチは好きだ」
ケルビスの不慣れな様子の手作り感が、母親の作ってくれた料理を思い起こさせる。
あまり料理の得意な人間ではなかったからな。
僕らは暫し食事を楽しみ、そして帰還した。
12
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)
あおっち
SF
脈々と続く宇宙の無数の文明。その中でより高度に発展した高高度文明があった。その文明の流通、移動を支え光速を超えて遥か彼方の銀河や銀河内を瞬時に移動できるジャンプ技術。それを可能にしたジャンプ血清。
その血清は生体(人間)へのダメージをコントロールする血清、ワクチンなのだ。そのジャンプ血清をめぐり遥か大昔、大銀河戦争が起こり多くの高高度文明が滅びた。
その生き残りの文明が新たに見つけた地、ネイジェア星域。私達、天の川銀河の反対の宙域だった。そこで再び高高度文明が栄えたが、再びジャンプ血清供給に陰りが。天の川銀河レベルで再び紛争が勃発しかけていた。
そして紛争の火種は地球へ。
その地球では強大な軍事組織、中華帝国連邦、通称「AXIS」とそれに対抗する為、日本を中心とした加盟国軍組織「シーラス」が対峙していたのだ。
近未来の地球と太古から続くネイジェア星域皇国との交流、天然ジャンプ血清保持者の椎葉清らが居る日本と、高高度文明異星人(シーラス皇国)の末裔、マズル家のポーランド家族を描いたSF大河小説「メジャー・インフラトン」の前章譚、7部作。
第1部「太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!」。
ジャンプ血清は保持者の傷ついた体を異例のスピードで回復させた。また血清のオリジナル保持者(ゼロ・スターター)は、独自の能力を飛躍的に引き上げる事が出来たのだ。
第2次大戦時、無敵兵士と言われた舩坂弘氏をモデルに御舩大(ミフネヒロシ)の無敵ふりと、近代世界のジャンプ血清保持者、椎葉きよし(通称:お子ちゃまきよし)の現在と過去。
ジャンプ血清の力、そして人類の未来をかけた壮大な戦いが、いま、始まる――。
彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。
本格的な戦闘シーンもあり、面白い場面も増えます。
是非、ご覧あれ。
※加筆や修正が予告なしにあります。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
【なろう430万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ
海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。
衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。
絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。
ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。
大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。
はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?
小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。
カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。
Reboot ~AIに管理を任せたVRMMOが反旗を翻したので運営と力を合わせて攻略します~
霧氷こあ
SF
フルダイブMMORPGのクローズドβテストに参加した三人が、システム統括のAI『アイリス』によって閉じ込められた。
それを助けるためログインしたクロノスだったが、アイリスの妨害によりレベル1に……!?
見兼ねたシステム設計者で運営である『イヴ』がハイエルフの姿を借りて仮想空間に入り込む。だがそこはすでに、AIが統治する恐ろしくも残酷な世界だった。
「ここは現実であって、現実ではないの」
自我を持ち始めた混沌とした世界、乖離していく紅の世界。相反する二つを結ぶ少年と少女を描いたSFファンタジー。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
異世界に転生したのにスキルも貰えずに吸血鬼に拉致されてロボットを修理しろってどういうことなのか
ピモラス
ファンタジー
自動車工場で働くケンはいつも通りに仕事を終えて、帰りのバスのなかでうたた寝をしていた。
目を覚ますと、見知らぬ草原の真っ只中だった。
なんとか民家を見つけ、助けを求めたのだが、兵士を呼ばれて投獄されてしまう。
そこへ返り血に染まった吸血鬼が襲撃に現れ、ケンを誘拐する。
その目的は「ロボットを修理しろ」とのことだった・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる