SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

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シーズン1-悪夢の始まり

039-ゆったり過ごす一日

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というわけで、アドラス・ケルビス・メッティーラの三人は大戦果を挙げた。
だが、まだ手放しで喜べる事態ではない。

「ただでさえエミドと交戦するかもしれない状況で、オルトスに目を付けられましたね」
「それって、何か問題なの?」
「問題ですね」

三人は義体の状態になり、ケルビスの農園を訪れていた。
果物を収穫している横で、メッティーラは堆肥を作り、アドラスは葉に付いた虫を取っていた。

「主は我々に集合し、アロウトを復興せよと命じられましたからね」
「つまり.....命令が守れないかもしれないって事!?」
「いいえ、エリアス様は無理な事は仰りませんから....きっと我々を試しているのでしょう」

メッティーラは出来た堆肥を分量に分けて、ケルビスから情報共有で教えられた場所に運ぶ。
アドラスは次の葉っぱの列に移り、ふと口にする。

「....ケルビス、この行為に意味はあるのかな?」
「勿論です。虫を放置すれば、葉が食い荒らされてしまいますから」

ケルビスは収穫した果物の選別作業を始める。
その横で、メッティーラは畑への散水を始める。

「ところでケルビス、この作業は大分非効率的だと思うのですが――――」
「おっとメッティーラ、エリアス様がお褒めになられたこのひと手間を、非効率と切って捨てるのは早計じゃないかね?」
「そうでしたか....申し訳ない」

ケルビスは傷のないものだけを籠に入れ、傷ありのものを圧搾機械にいれてハンドルを回す。
ついでにいえば、この圧搾機械も、ケルビスのDIYである。

「エリアス様は「非効率を愛し、人間のように時間を浪費する事こそ、Ve’zの二度目の滅びを回避する手段である」と仰いました」
「成程......私も何か初めてみましょうか」

メッティーラは自分の機体のメンテナンスを全部自分でやってみるか....と考える。
それを横で聞いていたアドラスは、自分の超巨大な機体を使って出来ることを考えていた。






「人間というものは不思議ですね」

温泉に身体を浸したメッティーラは、体内部の温度上昇を確認しながら呟く。
彼女らには寒暖の概念が無いので、風呂で体を温めるという発想には至らず、疲れることもないので温泉浴という発想もなく、汚れは全て自動分解なので体を洗うという発想すらないのだ。

「エリス様は人間でしたね」
「エリアス様と通じるところがあるそうで、エリアス様と仲睦まじく湯に浸かっていたようですね」

その横で、浴槽で泳ぐアドラスがいた。
彼女は思考が短絡的なので、時間の無駄な使い方を未だに考えている。

「ん? ケルビス、メッティーラ、アドラスじゃないか」

その時、三人の耳に声が届く。
全員がそちらを向くと、服を脱いだエリアスが立っていた。

「おお! エリアス様.....私めの裸体はあまりにも醜い故に――――」
「裸体....? まあ、待て」

テレポートしようとするケルビスだったが、エリアスはそれを止める。
ケルビスは特に反論せず、湯船に戻る。

「風呂はみんなで入るものだ」
「新たな知見ですね、感謝の至り――――」
「またシーシャが羨ましがるでしょうね」

エリアスは併設された洗い場で、湯を汲んで身体に掛ける。
それを見て、メッティーラが納得したような顔をする。

「何のためのスペースかと思っていましたが、そのような使い方をするのですね」
「これはローカルルールだが、場所によっては体を洗ってから入らないと殺されるぞ」

エリアスは至極真面目に忠告した。
本人の経験から来る真面目な忠告である。

「なんと......どのような文献にあったのか、私めに教えてはくださりませんか?」
「文献というよりは...まあ、後々わかるだろう」

エリアスは答えに困り、誤魔化した。
またそれを見た三人が、勘違いをする事も忘れて――――
しかし、次から三人が湯を浴びてから入浴するようになったので、エリアス的には良かったのだが。
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