36 / 200
シーズン1-悪夢の始まり
036-ポラノル&アドラス
しおりを挟む
紆余曲折あって、ようやくポラノルとアドラスが浮遊都市に到着した。
グレゴルは既に着いていたが、この二人には会う機会がなかった。
「こんにちは、エリアス様」
「帰って来たよ、エリアス様!」
ポラノルは何だかピエロみたいな義体で、アドラスは幼女な義体だった。
彼(彼女ら)の船体は、都市の外縁部に留めてある。
「お前たちはどうして裏切った?」
一応聞いておく。
死んだからいいや! みたいな思考だと困る。
「自分だけのアイデンティティを探しに行ったのですよ」
「えーと.....その、暇だったので、ワームホールを散歩してました!」
ポラノルの機体はフットワークが軽く、ヴェリアノスから宇宙の果てまで一瞬でワープできる。
そのうえで、義体を使って各地を旅していたらしい。
アドラスの機体は義体に見合わず超大型のメンテナンスフリー旗艦級戦艦である。
ワームホール内を旅するのに部下のレギオネル=ノクティラノス十機を連れて、自己修復を繰り返せるアドラスの機体は、数千年のお散歩には丁度良かっただろう。
「ボクのアイデンティティは結局、道化にあると思ったんです!」
「あの....その.......ワームホールの中にある星なら、好きに破壊して回ってもいいかなって......」
アドラスが怖い。
しかしながら、彼女の機体はエリガードとケルビスの機体に並ぶ強さを持っている。
唯一の弱点があるとすれば、パラダイスロストやニューエンドのような殲滅兵器を持たない事だろう。
その代わり、兵器数は割と冗談にもならない多さだ。
「アドラス、任務を与える。しばらく休んでろ」
「はいっ!!」
音速で去って行くアドラス。
それを尻目に、僕はポラノルに対面する。
「それで?」
「ボクを疑うんですかぁ? 日進月歩....じゃなく一日千秋の思いで、この日を待ってたんですよ!」
「.....そうか、それで...道化にはなれたか?」
「修行中です!」
ポラノルの処理能力は、ケルビス以下カサンドラ以上だ。
思考制限が緩い分、個性を獲得できる領域が広かったのだろう。
「僕は今人間と暮らしているんだが、その娘に芸を見せることは出来るか?」
「修行中ですが、それでもいいのでしたら構いませんよっ!」
どうやら問題ないらしい。
エリスを退屈させないための人材を、また手に入れた。
アドラスは通路を駆けていた。
自分の機体に戻るためである。
だがその時、角から出てきたエリスとぶつかってしまう。
「きゃっ!?」
「誰.....!?」
エリスはすぐに起き上がり、アドラスに手を差し伸べる。
アドラスはエリスの手を借りず、自分で起き上がった。
「ごめんなさい....」
「いいえ、怪我してないといいのだけれど....」
エリスは、謝るなりさっさと去って行ったアドラスの背を追う。
直後に、肩を叩かれ振り返る。
「あなたは.....」
「ボクはポラノル! あなたの専属道化に任命されました!」
ポラノルは見事な礼をしてみせる。
それが、あまりにも彼の外見には似合わずに、エリスは噴き出してしまった。
「....ご、ごめんなさい...おかしくて.....」
「人間の笑いには種類がありますが....あなたの笑いは好意的ですね!」
「....そう?」
その問いに、ポラノルはニヤァと意地の悪い笑みを浮かべた。
「嘲笑、苦笑、哄笑――――下品な笑いは、ヘキエキしますね」
「変わってるのね.....あ、その――――他の仲間たちに比べて、よ」
「それがボクのアイデンティティですから!!」
これ以上ないほど嬉しそうに、ポラノルは胸を張って言った。
グレゴルは既に着いていたが、この二人には会う機会がなかった。
「こんにちは、エリアス様」
「帰って来たよ、エリアス様!」
ポラノルは何だかピエロみたいな義体で、アドラスは幼女な義体だった。
彼(彼女ら)の船体は、都市の外縁部に留めてある。
「お前たちはどうして裏切った?」
一応聞いておく。
死んだからいいや! みたいな思考だと困る。
「自分だけのアイデンティティを探しに行ったのですよ」
「えーと.....その、暇だったので、ワームホールを散歩してました!」
ポラノルの機体はフットワークが軽く、ヴェリアノスから宇宙の果てまで一瞬でワープできる。
そのうえで、義体を使って各地を旅していたらしい。
アドラスの機体は義体に見合わず超大型のメンテナンスフリー旗艦級戦艦である。
ワームホール内を旅するのに部下のレギオネル=ノクティラノス十機を連れて、自己修復を繰り返せるアドラスの機体は、数千年のお散歩には丁度良かっただろう。
「ボクのアイデンティティは結局、道化にあると思ったんです!」
「あの....その.......ワームホールの中にある星なら、好きに破壊して回ってもいいかなって......」
アドラスが怖い。
しかしながら、彼女の機体はエリガードとケルビスの機体に並ぶ強さを持っている。
唯一の弱点があるとすれば、パラダイスロストやニューエンドのような殲滅兵器を持たない事だろう。
その代わり、兵器数は割と冗談にもならない多さだ。
「アドラス、任務を与える。しばらく休んでろ」
「はいっ!!」
音速で去って行くアドラス。
それを尻目に、僕はポラノルに対面する。
「それで?」
「ボクを疑うんですかぁ? 日進月歩....じゃなく一日千秋の思いで、この日を待ってたんですよ!」
「.....そうか、それで...道化にはなれたか?」
「修行中です!」
ポラノルの処理能力は、ケルビス以下カサンドラ以上だ。
思考制限が緩い分、個性を獲得できる領域が広かったのだろう。
「僕は今人間と暮らしているんだが、その娘に芸を見せることは出来るか?」
「修行中ですが、それでもいいのでしたら構いませんよっ!」
どうやら問題ないらしい。
エリスを退屈させないための人材を、また手に入れた。
アドラスは通路を駆けていた。
自分の機体に戻るためである。
だがその時、角から出てきたエリスとぶつかってしまう。
「きゃっ!?」
「誰.....!?」
エリスはすぐに起き上がり、アドラスに手を差し伸べる。
アドラスはエリスの手を借りず、自分で起き上がった。
「ごめんなさい....」
「いいえ、怪我してないといいのだけれど....」
エリスは、謝るなりさっさと去って行ったアドラスの背を追う。
直後に、肩を叩かれ振り返る。
「あなたは.....」
「ボクはポラノル! あなたの専属道化に任命されました!」
ポラノルは見事な礼をしてみせる。
それが、あまりにも彼の外見には似合わずに、エリスは噴き出してしまった。
「....ご、ごめんなさい...おかしくて.....」
「人間の笑いには種類がありますが....あなたの笑いは好意的ですね!」
「....そう?」
その問いに、ポラノルはニヤァと意地の悪い笑みを浮かべた。
「嘲笑、苦笑、哄笑――――下品な笑いは、ヘキエキしますね」
「変わってるのね.....あ、その――――他の仲間たちに比べて、よ」
「それがボクのアイデンティティですから!!」
これ以上ないほど嬉しそうに、ポラノルは胸を張って言った。
12
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
【SF短編】エリオの方舟
ミカ塚原
SF
地球全土を襲った二一世紀の「大破局」から、約二〇〇年後の世界。少年エリオ・マーキュリーは世界で施行された「異常才覚者矯正法」に基づいて、大洋に浮かぶ孤島の矯正施設に収容された。無為な労働と意識の矯正を強いられる日々の中で、女性教官リネットとの出会いが、エリオを自らの選択へ導いてゆく。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
Reboot ~AIに管理を任せたVRMMOが反旗を翻したので運営と力を合わせて攻略します~
霧氷こあ
SF
フルダイブMMORPGのクローズドβテストに参加した三人が、システム統括のAI『アイリス』によって閉じ込められた。
それを助けるためログインしたクロノスだったが、アイリスの妨害によりレベル1に……!?
見兼ねたシステム設計者で運営である『イヴ』がハイエルフの姿を借りて仮想空間に入り込む。だがそこはすでに、AIが統治する恐ろしくも残酷な世界だった。
「ここは現実であって、現実ではないの」
自我を持ち始めた混沌とした世界、乖離していく紅の世界。相反する二つを結ぶ少年と少女を描いたSFファンタジー。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

転生先は美少女パイロットが乗るロボットのAIでした。
美作美琴
ファンタジー
いじめられっ子の少年、瑞基(みずき)は事故死して女神に出会う。
彼女は瑞基を転生させようとするが瑞基はかたくなに拒否。
理由は人間に転生してまたいじめられるのが嫌だから。
しかし実績の為どうしても瑞基を転生させたい女神は瑞基にある提案をする。
それは瑞基を人間ではないもの……科学技術が進歩した世界のAIに転生させるというものだった。
異世界転生はファンタジー世界に転生するだけに在らず……異例のロボ転生、刮目してみよ!!
異世界に転生したのにスキルも貰えずに吸血鬼に拉致されてロボットを修理しろってどういうことなのか
ピモラス
ファンタジー
自動車工場で働くケンはいつも通りに仕事を終えて、帰りのバスのなかでうたた寝をしていた。
目を覚ますと、見知らぬ草原の真っ只中だった。
なんとか民家を見つけ、助けを求めたのだが、兵士を呼ばれて投獄されてしまう。
そこへ返り血に染まった吸血鬼が襲撃に現れ、ケンを誘拐する。
その目的は「ロボットを修理しろ」とのことだった・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる