SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

文字の大きさ
上 下
30 / 200
シーズン1-悪夢の始まり

030-後悔

しおりを挟む
「では遠慮なく」

そう言うと、ケルビスはエリスの首に取り出した筒を押し当て、指で突き出た部分を押し込んだ。
カシュと音を立てて中身が注入され、ケルビスは筒を離した。

「.....終わったのか?」
「はい、30秒以内に体内の治癒が完了します」

呆気なく、僕は罪を犯した。
彼女の自主性を裏切ってしまったのだ。

「....これは、僕のわがままだろうな」

本当なら、彼女は望み通りこのまま死ぬ筈だった。
彼女が望んだ事ではないかもしれないが、Ve’z人になりたいとは望んでいなかったはずだ。

「私めは退出いたしましょうか?」
「....そうしてくれ、果物は.....一旦保存しろ」
「分かりました、エリアス様」

籠を持ったまま、ケルビスは消えた。
僕は、エリスの手を握る。
ベッドについていた血は、とっくの昔に消えていた。

「......エリ...ア....ス」
「....エリス!!」

エリスが目を開けて、僕の方を見た。

「まだ喋るな」

肉体の最適化が終わっていない、今動くと危険だ。
だが、僕は次の言葉で固まった。

「どうして.......撃ったの....、私の....故郷を....」
「あ....え?」

ふと、僕は艦隊がどうなったかを見た。
そして、知った。
知りたくもない結果を。

「......ガゼラークⅣを...僕が、撃った?」

故郷を失った彼女の、第二の故郷を。
よりによって、僕が.....?

「あ.......」

冷静じゃなかったとはいえ、「全てを薙ぎ払え」なんて。
どうして言ったんだ?
情報共有すれば、やってほしい事を伝えることができたはずだ。

「.......エリアス、違.....」
「......すまない」

僕は黙って、テレポートした。
エリスが何か言いかけたが、それ以上耐えられなかった。






考えなしに行動をしたのは、子供の時以来だった。
異世界に来て、混乱していたのかもしれない。

「......」

昔、母親は僕に「考える人間になりなさい」と言った。
父親は「数字だけがお前を表す」と教えてくれた。
だが、いざ人の感情に目を向けると、僕の考えは乱され、数字だけで判断できなくなった。

「.....どうすれば良かったんだ?」

そうだ、そもそも冷静に考えれば、エリスが傷付いたとしても、すぐに都市にワープすればよかった。
ケルビスは内政が忙しくないので、常に農園にいて作業をしているはずだ。
だというのに、敵を蹴散らせと言ったのは、僕の”感情”のせいだ。

「.........忘れていたな」

正直なところ、僕が恐れているのは僕自身の事ではない。
エリスにVe’zの技術を使用したことと、惑星を破壊したこと。
その両方が知られてしまった以上、もう二度と良好な関係は築けない。

「.....」

殺すしかないのか?
彼女にはクローンに意識を転送する機能はないから、殺してしまえば.....
今後の利益を考えれば、生かしておく必要はない。
だが.....

「何なんだ? この思いは....」

思えばエリスに出会ってから、変な方に思考がずれることが多かった。
そもそもエリスを取り戻したいという思いも、隠れて動くという当初の目標からは逸脱している。
だからか、排除しようと考えた時.....なんだか、抵抗めいたものを感じた。

「.......ケルビス」
『はい、エリアス様! たった今、サンプルC-022の収穫が完了しました、糖分の配合がかなり悪く、今後の品質改良が――――』
「....ケルビス、僕は今真面目に考えていることがある」
『....は、何なりとお尋ねください』
「...エリスに謝った方がいいと思うか?」

しばらく、通信の先でケルビスが黙り込む。
即座に結果の演算は出来たが、それを伝えるのを決めかねている様子だ。

『.......私めが愚考いたしますと、恐らくは謝罪、もしくは何らかの説明が必要です。殺害するのが最良ですが、貴女様のペットでありますので、私めからはこれ以外を提案することはできません』
「....そうか」

僕は頷く。
ケルビスに励まされるとは思わなかったけれど、これで決心はついた。
謝ろう、それで許されるとは思わないが。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。

スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。 地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!? 異世界国家サバイバル、ここに爆誕!

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

宇宙人へのレポート

廣瀬純一
SF
宇宙人に体を入れ替えられた大学生の男女の話

処理中です...