SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

文字の大きさ
上 下
27 / 200
シーズン1-悪夢の始まり

027-観光

しおりを挟む
「これ、ください」
「あいよ、美人な姉ちゃん」

僕は適当なフィンガーフードを購入すると、大通りを歩き始めた。
ここがエリスの育った町らしく、田舎と言いつつ前世の街並みに近い雰囲気を漂わせている。

「お婆さん、そこの......ピロエットルを頂戴」
「はいよ、4MSCだよ」
「ありがとう」

買い物はするのが楽しいのであって、別にほしいわけではない。
何でも製造できるVe’z技術であれば、こんなスノードームなんて簡単に作れる。

「.....」

それにしても、何の肉だ?
原生生物なのだろうが、鶏肉を揚げた料理に近い印象を抱くものだった。
気が付けば、全て口の中だが。

「これ、ください」

とりあえず、情報が必要だ。
僕は暇そうにしている青果屋を訪れ、リンゴとイチゴの中間のような何かを購入する。

「外から来たんですが、この町に観光名所などはありますか?」
「おお、わざわざこんな田舎に.....誇れるもんはないですけど、地元で有名な場所なら、いくつか教えられますよ」

僕は紙のメモという新鮮なものを渡される。
そこには、街の名所が記述されていた。

「ここは、どういう街なのだろう」

外界との接続はほぼ遮断されていて、街のインフラや食糧などは高度な科学技術でカバーされている。
最初に訪れたモニュメントは、古い機械の部品の一部のように見えた。
錆び果てているものの、その構造が表す意味は何となく理解できた。

「......成程、入植者の街だったのか」

最初にこの惑星に降り立った人間達の街だったのだ。
今でこそ、遠く離れた場所が首都だが、ここに住む人間達は、かつての開拓者たちの思いを汲んで生きているのだろう。

「.........」

特に感想もないので、次の場所へと向かう。
次の場所は、街の資料館だった。
開墾当時からの資料などが展示されていて、発達した保存技術と、その様々な物品に刻まれた確かな年季を見て楽しむことができた。

「そろそろ帰るか?」

夕陽が沈み始めたので、僕はエリスに通信を繋ぐ。
だが、繋がらなかった。

「....?」

繋がらないという事は、彼女が取り込み中の可能性がある。
僕は、彼女の実家だという場所へ、急ぎ足で向かう。

「何も無ければいいが」

彼女の実家は、大きなガレージを持つ古い家だった。
都市と比べると、どうしても古さが目立つ。
チャイムを鳴らすと、老婆が出てきた。

「何でしょう?」
「僕の連れがそちらに伺ったのですが、エリスといいます」

そう言った瞬間、老婆のバイタルサインが微妙に変化する。
何か隠しているな。

「はて......エリスさんですか、知りませんね」
「そうですか....では」

僕は頭を下げてから、別の場所を探すために踵を返した。
直後、銃声が響く。

「......何のつもりだ?」
「連れがいたとは思わなかったよ。でもねぇ.....探されるとちと困るのさぁ」
「婆さん、処理は終わったかい?」
「ええ」

.........こいつら、よりにもよってエリスに何かしたな?

「.....そうか」

僕は目を閉じる。
直後、意識はエリアスにスイッチされた。

『夫婦を無力化しろ』
「.....」

エリアスが動く。
瞬時に夫婦を気絶させ、勝手に目を閉じて僕を復帰させた。
........他人の家に押し入るのは気が引けるが、エリスに何かされていたならとんでもない事だ。
僕は夫婦を引きずって、家の中へと入る。
鍵を閉め、家中を探し回る。

「いないか」

地下室まで漁ったが、エリスの姿はない。
だが、夫婦の携帯端末をハッキングして、ログを読み込むと答えは出た。

「TRINITY.に売ったのか」

碌でもない奴らだな。
まあ、別に構わない。

「.....メッティーラ?」
『はい』
「これからTRINITY.支部に殴り込むので、救出後の回収を頼む」
『分かりました』

.......権力か、実にくだらない。
人から奪って何が楽しい?

「返してもらうぞ、僕の大切な人を――――」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

異世界に転生したのにスキルも貰えずに吸血鬼に拉致されてロボットを修理しろってどういうことなのか

ピモラス
ファンタジー
自動車工場で働くケンはいつも通りに仕事を終えて、帰りのバスのなかでうたた寝をしていた。 目を覚ますと、見知らぬ草原の真っ只中だった。 なんとか民家を見つけ、助けを求めたのだが、兵士を呼ばれて投獄されてしまう。 そこへ返り血に染まった吸血鬼が襲撃に現れ、ケンを誘拐する。 その目的は「ロボットを修理しろ」とのことだった・・・

クマ男くんのいる生活

笹椰かな
SF
一人暮らしをしている極度の人見知り会社員・珠美。彼女が家に戻り、「ただいまー」と言うと「おかえりー」と返ってくる。それは決して珠美の幻聴ではなく、人類の叡智によって生み出された玩具から聞こえてきた声なのであった。

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

ベル・エポック

しんたろう
SF
この作品は自然界でこれからの自分のいい進歩の理想を考えてみました。 これからこの理想、目指してほしいですね。これから個人的通してほしい法案とかもです。 21世紀でこれからにも負けていないよさのある時代を考えてみました。 負けたほうの仕事しかない人とか奥さんもいない人の人生の人もいるから、 そうゆう人でも幸せになれる社会を考えました。 力学や科学の進歩でもない、 人間的に素晴らしい文化の、障害者とかもいない、 僕の考える、人間の要項を満たしたこれからの時代をテーマに、 負の事がない、僕の考えた21世紀やこれからの個人的に目指したい素晴らしい時代の現実でできると思う想像の理想の日常です。 約束のグリーンランドは競争も格差もない人間の向いている世界の理想。 21世紀民主ルネサンス作品とか(笑) もうありませんがおためし投稿版のサイトで小泉総理か福田総理の頃のだいぶん前に書いた作品ですが、修正でリメイク版です。保存もかねて載せました。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

処理中です...