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シーズン1-悪夢の始まり
027-観光
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「これ、ください」
「あいよ、美人な姉ちゃん」
僕は適当なフィンガーフードを購入すると、大通りを歩き始めた。
ここがエリスの育った町らしく、田舎と言いつつ前世の街並みに近い雰囲気を漂わせている。
「お婆さん、そこの......ピロエットルを頂戴」
「はいよ、4MSCだよ」
「ありがとう」
買い物はするのが楽しいのであって、別にほしいわけではない。
何でも製造できるVe’z技術であれば、こんなスノードームなんて簡単に作れる。
「.....」
それにしても、何の肉だ?
原生生物なのだろうが、鶏肉を揚げた料理に近い印象を抱くものだった。
気が付けば、全て口の中だが。
「これ、ください」
とりあえず、情報が必要だ。
僕は暇そうにしている青果屋を訪れ、リンゴとイチゴの中間のような何かを購入する。
「外から来たんですが、この町に観光名所などはありますか?」
「おお、わざわざこんな田舎に.....誇れるもんはないですけど、地元で有名な場所なら、いくつか教えられますよ」
僕は紙のメモという新鮮なものを渡される。
そこには、街の名所が記述されていた。
「ここは、どういう街なのだろう」
外界との接続はほぼ遮断されていて、街のインフラや食糧などは高度な科学技術でカバーされている。
最初に訪れたモニュメントは、古い機械の部品の一部のように見えた。
錆び果てているものの、その構造が表す意味は何となく理解できた。
「......成程、入植者の街だったのか」
最初にこの惑星に降り立った人間達の街だったのだ。
今でこそ、遠く離れた場所が首都だが、ここに住む人間達は、かつての開拓者たちの思いを汲んで生きているのだろう。
「.........」
特に感想もないので、次の場所へと向かう。
次の場所は、街の資料館だった。
開墾当時からの資料などが展示されていて、発達した保存技術と、その様々な物品に刻まれた確かな年季を見て楽しむことができた。
「そろそろ帰るか?」
夕陽が沈み始めたので、僕はエリスに通信を繋ぐ。
だが、繋がらなかった。
「....?」
繋がらないという事は、彼女が取り込み中の可能性がある。
僕は、彼女の実家だという場所へ、急ぎ足で向かう。
「何も無ければいいが」
彼女の実家は、大きなガレージを持つ古い家だった。
都市と比べると、どうしても古さが目立つ。
チャイムを鳴らすと、老婆が出てきた。
「何でしょう?」
「僕の連れがそちらに伺ったのですが、エリスといいます」
そう言った瞬間、老婆のバイタルサインが微妙に変化する。
何か隠しているな。
「はて......エリスさんですか、知りませんね」
「そうですか....では」
僕は頭を下げてから、別の場所を探すために踵を返した。
直後、銃声が響く。
「......何のつもりだ?」
「連れがいたとは思わなかったよ。でもねぇ.....探されるとちと困るのさぁ」
「婆さん、処理は終わったかい?」
「ええ」
.........こいつら、よりにもよってエリスに何かしたな?
「.....そうか」
僕は目を閉じる。
直後、意識はエリアスにスイッチされた。
『夫婦を無力化しろ』
「.....」
エリアスが動く。
瞬時に夫婦を気絶させ、勝手に目を閉じて僕を復帰させた。
........他人の家に押し入るのは気が引けるが、エリスに何かされていたならとんでもない事だ。
僕は夫婦を引きずって、家の中へと入る。
鍵を閉め、家中を探し回る。
「いないか」
地下室まで漁ったが、エリスの姿はない。
だが、夫婦の携帯端末をハッキングして、ログを読み込むと答えは出た。
「TRINITY.に売ったのか」
碌でもない奴らだな。
まあ、別に構わない。
「.....メッティーラ?」
『はい』
「これからTRINITY.支部に殴り込むので、救出後の回収を頼む」
『分かりました』
.......権力か、実にくだらない。
人から奪って何が楽しい?
「返してもらうぞ、僕の大切な人を――――」
「あいよ、美人な姉ちゃん」
僕は適当なフィンガーフードを購入すると、大通りを歩き始めた。
ここがエリスの育った町らしく、田舎と言いつつ前世の街並みに近い雰囲気を漂わせている。
「お婆さん、そこの......ピロエットルを頂戴」
「はいよ、4MSCだよ」
「ありがとう」
買い物はするのが楽しいのであって、別にほしいわけではない。
何でも製造できるVe’z技術であれば、こんなスノードームなんて簡単に作れる。
「.....」
それにしても、何の肉だ?
原生生物なのだろうが、鶏肉を揚げた料理に近い印象を抱くものだった。
気が付けば、全て口の中だが。
「これ、ください」
とりあえず、情報が必要だ。
僕は暇そうにしている青果屋を訪れ、リンゴとイチゴの中間のような何かを購入する。
「外から来たんですが、この町に観光名所などはありますか?」
「おお、わざわざこんな田舎に.....誇れるもんはないですけど、地元で有名な場所なら、いくつか教えられますよ」
僕は紙のメモという新鮮なものを渡される。
そこには、街の名所が記述されていた。
「ここは、どういう街なのだろう」
外界との接続はほぼ遮断されていて、街のインフラや食糧などは高度な科学技術でカバーされている。
最初に訪れたモニュメントは、古い機械の部品の一部のように見えた。
錆び果てているものの、その構造が表す意味は何となく理解できた。
「......成程、入植者の街だったのか」
最初にこの惑星に降り立った人間達の街だったのだ。
今でこそ、遠く離れた場所が首都だが、ここに住む人間達は、かつての開拓者たちの思いを汲んで生きているのだろう。
「.........」
特に感想もないので、次の場所へと向かう。
次の場所は、街の資料館だった。
開墾当時からの資料などが展示されていて、発達した保存技術と、その様々な物品に刻まれた確かな年季を見て楽しむことができた。
「そろそろ帰るか?」
夕陽が沈み始めたので、僕はエリスに通信を繋ぐ。
だが、繋がらなかった。
「....?」
繋がらないという事は、彼女が取り込み中の可能性がある。
僕は、彼女の実家だという場所へ、急ぎ足で向かう。
「何も無ければいいが」
彼女の実家は、大きなガレージを持つ古い家だった。
都市と比べると、どうしても古さが目立つ。
チャイムを鳴らすと、老婆が出てきた。
「何でしょう?」
「僕の連れがそちらに伺ったのですが、エリスといいます」
そう言った瞬間、老婆のバイタルサインが微妙に変化する。
何か隠しているな。
「はて......エリスさんですか、知りませんね」
「そうですか....では」
僕は頭を下げてから、別の場所を探すために踵を返した。
直後、銃声が響く。
「......何のつもりだ?」
「連れがいたとは思わなかったよ。でもねぇ.....探されるとちと困るのさぁ」
「婆さん、処理は終わったかい?」
「ええ」
.........こいつら、よりにもよってエリスに何かしたな?
「.....そうか」
僕は目を閉じる。
直後、意識はエリアスにスイッチされた。
『夫婦を無力化しろ』
「.....」
エリアスが動く。
瞬時に夫婦を気絶させ、勝手に目を閉じて僕を復帰させた。
........他人の家に押し入るのは気が引けるが、エリスに何かされていたならとんでもない事だ。
僕は夫婦を引きずって、家の中へと入る。
鍵を閉め、家中を探し回る。
「いないか」
地下室まで漁ったが、エリスの姿はない。
だが、夫婦の携帯端末をハッキングして、ログを読み込むと答えは出た。
「TRINITY.に売ったのか」
碌でもない奴らだな。
まあ、別に構わない。
「.....メッティーラ?」
『はい』
「これからTRINITY.支部に殴り込むので、救出後の回収を頼む」
『分かりました』
.......権力か、実にくだらない。
人から奪って何が楽しい?
「返してもらうぞ、僕の大切な人を――――」
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