27 / 180
シーズン1-悪夢の始まり
027-観光
しおりを挟む
「これ、ください」
「あいよ、美人な姉ちゃん」
僕は適当なフィンガーフードを購入すると、大通りを歩き始めた。
ここがエリスの育った町らしく、田舎と言いつつ前世の街並みに近い雰囲気を漂わせている。
「お婆さん、そこの......ピロエットルを頂戴」
「はいよ、4MSCだよ」
「ありがとう」
買い物はするのが楽しいのであって、別にほしいわけではない。
何でも製造できるVe’z技術であれば、こんなスノードームなんて簡単に作れる。
「.....」
それにしても、何の肉だ?
原生生物なのだろうが、鶏肉を揚げた料理に近い印象を抱くものだった。
気が付けば、全て口の中だが。
「これ、ください」
とりあえず、情報が必要だ。
僕は暇そうにしている青果屋を訪れ、リンゴとイチゴの中間のような何かを購入する。
「外から来たんですが、この町に観光名所などはありますか?」
「おお、わざわざこんな田舎に.....誇れるもんはないですけど、地元で有名な場所なら、いくつか教えられますよ」
僕は紙のメモという新鮮なものを渡される。
そこには、街の名所が記述されていた。
「ここは、どういう街なのだろう」
外界との接続はほぼ遮断されていて、街のインフラや食糧などは高度な科学技術でカバーされている。
最初に訪れたモニュメントは、古い機械の部品の一部のように見えた。
錆び果てているものの、その構造が表す意味は何となく理解できた。
「......成程、入植者の街だったのか」
最初にこの惑星に降り立った人間達の街だったのだ。
今でこそ、遠く離れた場所が首都だが、ここに住む人間達は、かつての開拓者たちの思いを汲んで生きているのだろう。
「.........」
特に感想もないので、次の場所へと向かう。
次の場所は、街の資料館だった。
開墾当時からの資料などが展示されていて、発達した保存技術と、その様々な物品に刻まれた確かな年季を見て楽しむことができた。
「そろそろ帰るか?」
夕陽が沈み始めたので、僕はエリスに通信を繋ぐ。
だが、繋がらなかった。
「....?」
繋がらないという事は、彼女が取り込み中の可能性がある。
僕は、彼女の実家だという場所へ、急ぎ足で向かう。
「何も無ければいいが」
彼女の実家は、大きなガレージを持つ古い家だった。
都市と比べると、どうしても古さが目立つ。
チャイムを鳴らすと、老婆が出てきた。
「何でしょう?」
「僕の連れがそちらに伺ったのですが、エリスといいます」
そう言った瞬間、老婆のバイタルサインが微妙に変化する。
何か隠しているな。
「はて......エリスさんですか、知りませんね」
「そうですか....では」
僕は頭を下げてから、別の場所を探すために踵を返した。
直後、銃声が響く。
「......何のつもりだ?」
「連れがいたとは思わなかったよ。でもねぇ.....探されるとちと困るのさぁ」
「婆さん、処理は終わったかい?」
「ええ」
.........こいつら、よりにもよってエリスに何かしたな?
「.....そうか」
僕は目を閉じる。
直後、意識はエリアスにスイッチされた。
『夫婦を無力化しろ』
「.....」
エリアスが動く。
瞬時に夫婦を気絶させ、勝手に目を閉じて僕を復帰させた。
........他人の家に押し入るのは気が引けるが、エリスに何かされていたならとんでもない事だ。
僕は夫婦を引きずって、家の中へと入る。
鍵を閉め、家中を探し回る。
「いないか」
地下室まで漁ったが、エリスの姿はない。
だが、夫婦の携帯端末をハッキングして、ログを読み込むと答えは出た。
「TRINITY.に売ったのか」
碌でもない奴らだな。
まあ、別に構わない。
「.....メッティーラ?」
『はい』
「これからTRINITY.支部に殴り込むので、救出後の回収を頼む」
『分かりました』
.......権力か、実にくだらない。
人から奪って何が楽しい?
「返してもらうぞ、僕の大切な人を――――」
「あいよ、美人な姉ちゃん」
僕は適当なフィンガーフードを購入すると、大通りを歩き始めた。
ここがエリスの育った町らしく、田舎と言いつつ前世の街並みに近い雰囲気を漂わせている。
「お婆さん、そこの......ピロエットルを頂戴」
「はいよ、4MSCだよ」
「ありがとう」
買い物はするのが楽しいのであって、別にほしいわけではない。
何でも製造できるVe’z技術であれば、こんなスノードームなんて簡単に作れる。
「.....」
それにしても、何の肉だ?
原生生物なのだろうが、鶏肉を揚げた料理に近い印象を抱くものだった。
気が付けば、全て口の中だが。
「これ、ください」
とりあえず、情報が必要だ。
僕は暇そうにしている青果屋を訪れ、リンゴとイチゴの中間のような何かを購入する。
「外から来たんですが、この町に観光名所などはありますか?」
「おお、わざわざこんな田舎に.....誇れるもんはないですけど、地元で有名な場所なら、いくつか教えられますよ」
僕は紙のメモという新鮮なものを渡される。
そこには、街の名所が記述されていた。
「ここは、どういう街なのだろう」
外界との接続はほぼ遮断されていて、街のインフラや食糧などは高度な科学技術でカバーされている。
最初に訪れたモニュメントは、古い機械の部品の一部のように見えた。
錆び果てているものの、その構造が表す意味は何となく理解できた。
「......成程、入植者の街だったのか」
最初にこの惑星に降り立った人間達の街だったのだ。
今でこそ、遠く離れた場所が首都だが、ここに住む人間達は、かつての開拓者たちの思いを汲んで生きているのだろう。
「.........」
特に感想もないので、次の場所へと向かう。
次の場所は、街の資料館だった。
開墾当時からの資料などが展示されていて、発達した保存技術と、その様々な物品に刻まれた確かな年季を見て楽しむことができた。
「そろそろ帰るか?」
夕陽が沈み始めたので、僕はエリスに通信を繋ぐ。
だが、繋がらなかった。
「....?」
繋がらないという事は、彼女が取り込み中の可能性がある。
僕は、彼女の実家だという場所へ、急ぎ足で向かう。
「何も無ければいいが」
彼女の実家は、大きなガレージを持つ古い家だった。
都市と比べると、どうしても古さが目立つ。
チャイムを鳴らすと、老婆が出てきた。
「何でしょう?」
「僕の連れがそちらに伺ったのですが、エリスといいます」
そう言った瞬間、老婆のバイタルサインが微妙に変化する。
何か隠しているな。
「はて......エリスさんですか、知りませんね」
「そうですか....では」
僕は頭を下げてから、別の場所を探すために踵を返した。
直後、銃声が響く。
「......何のつもりだ?」
「連れがいたとは思わなかったよ。でもねぇ.....探されるとちと困るのさぁ」
「婆さん、処理は終わったかい?」
「ええ」
.........こいつら、よりにもよってエリスに何かしたな?
「.....そうか」
僕は目を閉じる。
直後、意識はエリアスにスイッチされた。
『夫婦を無力化しろ』
「.....」
エリアスが動く。
瞬時に夫婦を気絶させ、勝手に目を閉じて僕を復帰させた。
........他人の家に押し入るのは気が引けるが、エリスに何かされていたならとんでもない事だ。
僕は夫婦を引きずって、家の中へと入る。
鍵を閉め、家中を探し回る。
「いないか」
地下室まで漁ったが、エリスの姿はない。
だが、夫婦の携帯端末をハッキングして、ログを読み込むと答えは出た。
「TRINITY.に売ったのか」
碌でもない奴らだな。
まあ、別に構わない。
「.....メッティーラ?」
『はい』
「これからTRINITY.支部に殴り込むので、救出後の回収を頼む」
『分かりました』
.......権力か、実にくだらない。
人から奪って何が楽しい?
「返してもらうぞ、僕の大切な人を――――」
12
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜
華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日
この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。
札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。
渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。
この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。
一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。
そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。
この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。
この作品はフィクションです。
実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。
―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――
EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ――
とある別の歴史を歩んだ世界。
その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。
第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる――
大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。
そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。
そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。
そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。
そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。
果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。
未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する――
注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。
注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。
注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。
注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。
注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる