25 / 200
シーズン1-悪夢の始まり
025-里帰り
しおりを挟む
「とはいえ、計画を止めるわけにはいかないからな」
僕は、四日連続で惑星を選定していた。
時間を止めた数千の惑星から、
「人間がおらず」、「豊富な鉱物/燃料資源が存在し」、「『宝物殿』から取り出しやすい」惑星を。
「......エリアス、ご飯持って来たわよ」
「ありがとう」
これでもカサンドラが絞り込んできてくれた方だ。
『宝物殿』と呼ばれる、基地の宇宙空間ではない亜空間に、Ve’zの宝物の全てがある。
かつて世界を混沌に陥れた惑星破壊兵器や、惑星を新たに創造する装置も。
だが、前者はVe’zの陥った「虚無」状態により、飽きて使われなくなり、後者は構造の欠陥が発覚し封印されたのだ。
「ねえ、エリアスは普段何をしてるの?」
「僕?」
エリスが尋ねてくる。
普段か。
何もすることのない時間は、短期睡眠をクローンの寿命を削る形で実行している。
それ以外は、惑星の様子を閲覧したり、読書をしたり、エクスティラノス達との意思疎通を図っている。
「星を眺めたり、本を読んだりしている」
「私とだいたい同じね」
「....エリスは?」
「私も同じよ! 図書館の本、凄い数よね」
「ああ、ありとあらゆる星々の、全ての国の全てのジャンルの本があるらしいからな」
Ve’zの本質はもうとっくに失われたが、初期命令は生きている。
シーシャは命令を守ったのだ。
「ねぇ、エリアス」
「どうした?」
僕が聞き返すと、背後でエリスが少し離れたのが見えた。
「私、ちょっと行きたいところがあるんだけど」
「どこだ?」
「オルトス領内の、ガゼラーク星系、その端にあるガゼラークⅣよ」
「.....」
「逃げやしないわよ! あそこに残してきた家族がいるの! 彼らに感謝と別れを告げないと」
「.....別に、後生の別れというわけではないぞ?」
「え?」
「ん?」
僕とエリスはしばらく固まった。
エリスが固まっているので、復帰も早かったが僕も黙っておく。
「........そのために、私をさらったんじゃ?」
「別に、行動まで縛る気はない。死にさえしなければ、どこに行っても、何をしても自由だ」
全ては無駄だと理解しているからこそやらないが、僕も性格が違えば、クローン体で地上に降りて、「淫蕩」「金銭欲」「怒り」.......それに並ぶ欲望を満たしていたかもしれない。
「じゃあ......人のいない星に家を建ててもいいの?」
「何故、人がいない前提なんだ?」
「......もう失うのは嫌だから、人とは関わらないわ」
「成程な」
じゃあこれが最後か。
僕はケルビスに連絡を入れる。
『ハッ、何でしょうかエリアス様』
「オルトス領内への遠征軍の指揮をメッティーラに任せる、至急連絡を入れろ。それから、現地を刺激しないよう即座に隠密可能な部隊を編成、ワームホール生成器で現地までのルートを作れ」
『お任せください! メッティーラの部隊の指揮権をジェネラスに移譲してもよろしいですか?』
「構わない」
僕はそう言うと、エリスの方を見た。
「これでいいか?」
「....一人でこっそり帰りたかったんだけれど」
「勿論、送迎は任せろ.....僕は僕で、その星を見てみたい」
「....分かったわ」
というわけで、旅行の始まりだ。
僕は、四日連続で惑星を選定していた。
時間を止めた数千の惑星から、
「人間がおらず」、「豊富な鉱物/燃料資源が存在し」、「『宝物殿』から取り出しやすい」惑星を。
「......エリアス、ご飯持って来たわよ」
「ありがとう」
これでもカサンドラが絞り込んできてくれた方だ。
『宝物殿』と呼ばれる、基地の宇宙空間ではない亜空間に、Ve’zの宝物の全てがある。
かつて世界を混沌に陥れた惑星破壊兵器や、惑星を新たに創造する装置も。
だが、前者はVe’zの陥った「虚無」状態により、飽きて使われなくなり、後者は構造の欠陥が発覚し封印されたのだ。
「ねえ、エリアスは普段何をしてるの?」
「僕?」
エリスが尋ねてくる。
普段か。
何もすることのない時間は、短期睡眠をクローンの寿命を削る形で実行している。
それ以外は、惑星の様子を閲覧したり、読書をしたり、エクスティラノス達との意思疎通を図っている。
「星を眺めたり、本を読んだりしている」
「私とだいたい同じね」
「....エリスは?」
「私も同じよ! 図書館の本、凄い数よね」
「ああ、ありとあらゆる星々の、全ての国の全てのジャンルの本があるらしいからな」
Ve’zの本質はもうとっくに失われたが、初期命令は生きている。
シーシャは命令を守ったのだ。
「ねぇ、エリアス」
「どうした?」
僕が聞き返すと、背後でエリスが少し離れたのが見えた。
「私、ちょっと行きたいところがあるんだけど」
「どこだ?」
「オルトス領内の、ガゼラーク星系、その端にあるガゼラークⅣよ」
「.....」
「逃げやしないわよ! あそこに残してきた家族がいるの! 彼らに感謝と別れを告げないと」
「.....別に、後生の別れというわけではないぞ?」
「え?」
「ん?」
僕とエリスはしばらく固まった。
エリスが固まっているので、復帰も早かったが僕も黙っておく。
「........そのために、私をさらったんじゃ?」
「別に、行動まで縛る気はない。死にさえしなければ、どこに行っても、何をしても自由だ」
全ては無駄だと理解しているからこそやらないが、僕も性格が違えば、クローン体で地上に降りて、「淫蕩」「金銭欲」「怒り」.......それに並ぶ欲望を満たしていたかもしれない。
「じゃあ......人のいない星に家を建ててもいいの?」
「何故、人がいない前提なんだ?」
「......もう失うのは嫌だから、人とは関わらないわ」
「成程な」
じゃあこれが最後か。
僕はケルビスに連絡を入れる。
『ハッ、何でしょうかエリアス様』
「オルトス領内への遠征軍の指揮をメッティーラに任せる、至急連絡を入れろ。それから、現地を刺激しないよう即座に隠密可能な部隊を編成、ワームホール生成器で現地までのルートを作れ」
『お任せください! メッティーラの部隊の指揮権をジェネラスに移譲してもよろしいですか?』
「構わない」
僕はそう言うと、エリスの方を見た。
「これでいいか?」
「....一人でこっそり帰りたかったんだけれど」
「勿論、送迎は任せろ.....僕は僕で、その星を見てみたい」
「....分かったわ」
というわけで、旅行の始まりだ。
11
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
Reboot ~AIに管理を任せたVRMMOが反旗を翻したので運営と力を合わせて攻略します~
霧氷こあ
SF
フルダイブMMORPGのクローズドβテストに参加した三人が、システム統括のAI『アイリス』によって閉じ込められた。
それを助けるためログインしたクロノスだったが、アイリスの妨害によりレベル1に……!?
見兼ねたシステム設計者で運営である『イヴ』がハイエルフの姿を借りて仮想空間に入り込む。だがそこはすでに、AIが統治する恐ろしくも残酷な世界だった。
「ここは現実であって、現実ではないの」
自我を持ち始めた混沌とした世界、乖離していく紅の世界。相反する二つを結ぶ少年と少女を描いたSFファンタジー。
【なろう430万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ
海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。
衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。
絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。
ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。
大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。
はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?
小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。
カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

転生先は美少女パイロットが乗るロボットのAIでした。
美作美琴
ファンタジー
いじめられっ子の少年、瑞基(みずき)は事故死して女神に出会う。
彼女は瑞基を転生させようとするが瑞基はかたくなに拒否。
理由は人間に転生してまたいじめられるのが嫌だから。
しかし実績の為どうしても瑞基を転生させたい女神は瑞基にある提案をする。
それは瑞基を人間ではないもの……科学技術が進歩した世界のAIに転生させるというものだった。
異世界転生はファンタジー世界に転生するだけに在らず……異例のロボ転生、刮目してみよ!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる