20 / 200
序章
020-プレリュード
しおりを挟む
「..........」
僕は、静かに目を開ける。
『クローンの正常な起動を確認。おはようございます、エリアス様』
「ああ」
起き上がってカプセルから出る。
カサンドラから衣服を受け取り、身につける。
それで、「再起動」試験は終了した。
「前のクローンは色々と不完全だったからな」
正確には、「再起動することを前提としていない」クローンだったのだ。
エリアス=アルティノスは自害したのだから。
『前回のテストを経て、必要な機能をいくつか足しておきました』
「ありがとう」
生地に衝撃・エネルギー耐性のための特殊繊維が編み込まれているようだ。
僕の肌と振れている間は、表面に偏向シールドを展開するようにもなっている。
「過剰じゃないか?」
『はい、ですが.....その』
「もう一人で突っ込んだりはしない」
『.......その言葉だけでも、嬉しい限りです』
僕は都市の外に出る。
外縁部はもうすっかり完成し、浮遊都市を守る三重のシールドの範囲と効果を増幅している。
「エリアス!」
「エリスか」
その時、エリスが駆けてくる。
僕はエリスの手を取り、共に都市の外縁部に向かう。
彼女と出会った場所に。
「本当に良かったのか?」
「ええ。私は.....私に、知恵のリンゴは要らないもの」
「そうか」
エリスはVe’z化手術を受けなかった。
ジェネラスが残念がっていたが、人間の身でも彼女の身体能力は高い。
「必要になるかは分からないが、Ve’z式格闘術を履修しておけ」
「ええ、そうするわ」
エリスはそう言って頷く。
「そういえば.....食事はどうしていたんだ?」
僕が再起動試験をしている間、彼女は空腹だったはずだ。
あの食事も確か完食したはずだ。
「それについては私めが。エネルギーパックをお渡ししました」
「ケルビスか」
ケルビスのアンドロイド体が、ゆっくりとこちらに向かってくる。
その手には、銀色のパックが握られている。
「エリアス様も頂かれますか?」
「やめておきなさい、美味しいものじゃないわ」
「知っている」
エリアスの記憶が教えてくれる。
中身は青白く発光する真四角のブロックで、そこそこ硬い上に無味無臭だ。
しかし栄養はある、所謂僕らの血液と似たようなパターンである。
「ケルビス、十二暴君の帰還はどうだ?」
「現在は、アドラス、ポラノル、グレゴルとの連絡が取れており、早急に帰還される模様です。後のケイトリン、シュマル、ナルとの連絡は依然として取れません」
「そうか」
十二暴君とは、「エクスティラノス」系列の名を持つ十二体のAI機体を、僕が纏めて総称としてつけた名前だ。
ティラノスは、暴君という意味もある。
だから、ドイツ語でつけてみた。
前世の”友達”に知られたら、社会的に死ぬだろうが....まあ、それを知る者はもういない。
「ナルはもともとそういうヤツだからな」
「お恥ずかしい限りです」
ナル=ラストティラノスは、所謂最後の騎士的な変わったAIで、本当の緊急時にならなければ出てこないだろう。
独自の指揮系統と中規模の艦隊を率いていて、最後のエリアスの記憶では、人間側に取り入って組織を持っていたはずだ。
「まあ..........なんだ、ここはそういう組織なんでな、慣れろエリス」
「ええ....きっと、あなたがあなただから、”そういう組織”なのよ、エリアス」
「........?」
エリスの言葉の意図を測ることができず、僕は一日中考え続けるのであった。
こうして、僕たちの物語の序章は終わった。
だが、これは、新たな始まりに過ぎなかった。
僕の知らない、この宇宙を繋ぐ物語。
その終わりへと紡がれる大いなる流れ。
壮大な終焉への、静かなプレリュードでしかなかったのだ。
僕は、静かに目を開ける。
『クローンの正常な起動を確認。おはようございます、エリアス様』
「ああ」
起き上がってカプセルから出る。
カサンドラから衣服を受け取り、身につける。
それで、「再起動」試験は終了した。
「前のクローンは色々と不完全だったからな」
正確には、「再起動することを前提としていない」クローンだったのだ。
エリアス=アルティノスは自害したのだから。
『前回のテストを経て、必要な機能をいくつか足しておきました』
「ありがとう」
生地に衝撃・エネルギー耐性のための特殊繊維が編み込まれているようだ。
僕の肌と振れている間は、表面に偏向シールドを展開するようにもなっている。
「過剰じゃないか?」
『はい、ですが.....その』
「もう一人で突っ込んだりはしない」
『.......その言葉だけでも、嬉しい限りです』
僕は都市の外に出る。
外縁部はもうすっかり完成し、浮遊都市を守る三重のシールドの範囲と効果を増幅している。
「エリアス!」
「エリスか」
その時、エリスが駆けてくる。
僕はエリスの手を取り、共に都市の外縁部に向かう。
彼女と出会った場所に。
「本当に良かったのか?」
「ええ。私は.....私に、知恵のリンゴは要らないもの」
「そうか」
エリスはVe’z化手術を受けなかった。
ジェネラスが残念がっていたが、人間の身でも彼女の身体能力は高い。
「必要になるかは分からないが、Ve’z式格闘術を履修しておけ」
「ええ、そうするわ」
エリスはそう言って頷く。
「そういえば.....食事はどうしていたんだ?」
僕が再起動試験をしている間、彼女は空腹だったはずだ。
あの食事も確か完食したはずだ。
「それについては私めが。エネルギーパックをお渡ししました」
「ケルビスか」
ケルビスのアンドロイド体が、ゆっくりとこちらに向かってくる。
その手には、銀色のパックが握られている。
「エリアス様も頂かれますか?」
「やめておきなさい、美味しいものじゃないわ」
「知っている」
エリアスの記憶が教えてくれる。
中身は青白く発光する真四角のブロックで、そこそこ硬い上に無味無臭だ。
しかし栄養はある、所謂僕らの血液と似たようなパターンである。
「ケルビス、十二暴君の帰還はどうだ?」
「現在は、アドラス、ポラノル、グレゴルとの連絡が取れており、早急に帰還される模様です。後のケイトリン、シュマル、ナルとの連絡は依然として取れません」
「そうか」
十二暴君とは、「エクスティラノス」系列の名を持つ十二体のAI機体を、僕が纏めて総称としてつけた名前だ。
ティラノスは、暴君という意味もある。
だから、ドイツ語でつけてみた。
前世の”友達”に知られたら、社会的に死ぬだろうが....まあ、それを知る者はもういない。
「ナルはもともとそういうヤツだからな」
「お恥ずかしい限りです」
ナル=ラストティラノスは、所謂最後の騎士的な変わったAIで、本当の緊急時にならなければ出てこないだろう。
独自の指揮系統と中規模の艦隊を率いていて、最後のエリアスの記憶では、人間側に取り入って組織を持っていたはずだ。
「まあ..........なんだ、ここはそういう組織なんでな、慣れろエリス」
「ええ....きっと、あなたがあなただから、”そういう組織”なのよ、エリアス」
「........?」
エリスの言葉の意図を測ることができず、僕は一日中考え続けるのであった。
こうして、僕たちの物語の序章は終わった。
だが、これは、新たな始まりに過ぎなかった。
僕の知らない、この宇宙を繋ぐ物語。
その終わりへと紡がれる大いなる流れ。
壮大な終焉への、静かなプレリュードでしかなかったのだ。
13
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。
――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。
スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。
地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!?
異世界国家サバイバル、ここに爆誕!

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる