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序章
016-『決意』
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それから数日が過ぎた。
エリスをオルトス本星に移送する準備が整ったため、僕はエリスを連れて行くことにした。
「........ごめんなさい」
「大丈夫だ」
エリスと共に、僕はジェネラスの機体に乗り込む。
ジェネラス=エクスティラノス、機体に三人分くらいの収容スペースがあるエクスティラノスシリーズだ。
「ジェネラス、戻ってきてすぐ済まない」
『.....拙者は貴女様の騎士でございます、お命じになられればそこに文句などあろうはずが御座いませぬ』
AIたちはみんなカサンドラみたいな感じかと思っていたのだが、意外と自由度が高い。
ジェネラスは僕に会うなり、手のひらに接吻しようとして都市が半壊した。
どうも、騎士物語を中途半端に学習したようで、人間サイズで出来る仕草をこの巨体でやってしまうのだ。
『では、我々はワームホール跳躍を行います』
「任せる」
ジェネラスとその周囲のキャヴァリエ=ノクティラノスが、発生した特異点に飲み込まれる形で異空間へと跳躍する。
「凄いのね.....あなたたちは」
「どうだろうか、僕には分かりかねるな」
ここはジェネラスの艦内なので、あまり踏み込んだ質問には答えられない。
曖昧にごまかしておく。
「君の記憶は、消さないことにした」
「いいの?」
「......もし君が、嫌になることがあったら。....一人で僕らの領域に来い。歓迎する」
「....ええ、そうするわ」
僕らの会話を聞いたのか、ジェネラスが咳払いをする。
「どうした、ジェネラス」
『....否、もしこの領域に再訪することがあれば、拙者の弟子として師事させてはいただけませぬかと、愚行していたところでございます』
「それも、考えておけ」
『はっ』
ワームホールを抜け、僕らは通常空間へと出る。
「......通信機が復帰したわ、オルトス国内のようね....」
「ここからはあの船で行け」
「.......分かったわ、今までありがとう」
「ああ」
ジェネラスの艦船収納ベイにあった実験艦「ノステリア」にエリスは搭乗し、そのまま宇宙へと飛び出す。
『では、我々は隠蔽装置を起動します』
「ああ」
まだ帰りたくないのを察してか、ジェネラスは周囲に隠蔽装置を起動したのだ。
僕らの存在をこの次元から遠ざけ、位相を歪ませることで「そこにいるのにいない」状態を作り出すらしい。
攻撃を受けたり、近づかれるとばれてしまうカモフラージュ等とはレベルが文字通り違う。
「.........それにしても、美しい星だな」
『カサンドラの調べでは、192年前に継承者同士の激しい戦争を乗り越え、その渦中にあった青い星を永遠に守り発展させていくと誓ったそうです』
「そうなのか...」
オルトスは絶対王政らしい。
ただ、それは圧政を敷くためではなく、権力を集約させることで反乱を防ぐ目的でもあるそうだ。
『そろそろ行かれますか?』
「もう少しだけ、良いだろうか」
『王命とあれば』
僕は今まで、何かを惜しいと思った事はほとんどなかった。
それを手放さなければ得られないものがあるのなら、別に構うこともなかった。
だというのに、何故か...何故かエリスだけは少し惜しかった。
きっとこれは、砂漠の真ん中で一杯の水を見つけたのと同じだろう。
「......ジェネラス、彼女が降りて行った場所を拡大できるか?」
『そう仰られると思い、僭越ながら追跡をかけておりました。現在複数人に囲まれているようです』
「...?」
拡大解析された写真を見ると、彼女が武装された人間たちに囲まれていた。
何があったかは分からないが、恐らく窮地だろう。
「.........」
ここで飛び出していくのは簡単だが、それはVe‘zの存在を明るみに出す事になる。
慎重に動けと指示したのは僕なのに、それを無視して勝手に動くのは...
「...ッ!」
次の映像更新で、彼女が交戦状態に入るのが見えた。
いかに彼女が優秀でも、20人に囲まれてはどうしようもない。
「.........」
どうする?
ジェネラスでは彼女を巻き込んでしまう以上、僕が出るしかない。
だが、彼女一人の...
「ジェネラス、今は何も聞くな、僕を最大速度であの座標に向かって射出しろ!」
『お任せください』
直後、僕は丁重に掴まれてカタパルトにセットされ、そのままレールガンと同じ方法で射出される。
少なくとも宇宙では、精度が下がる事はあっても速度は下がらない。
反重力スラスターで姿勢制御をしながら、僕はステーションや艦船を突っ切って大気圏へと降下する。
触手でシールドを張り、摩擦で燃え上がる視界を見ながら、僕は彼女を必ず助けると誓った。
エリスをオルトス本星に移送する準備が整ったため、僕はエリスを連れて行くことにした。
「........ごめんなさい」
「大丈夫だ」
エリスと共に、僕はジェネラスの機体に乗り込む。
ジェネラス=エクスティラノス、機体に三人分くらいの収容スペースがあるエクスティラノスシリーズだ。
「ジェネラス、戻ってきてすぐ済まない」
『.....拙者は貴女様の騎士でございます、お命じになられればそこに文句などあろうはずが御座いませぬ』
AIたちはみんなカサンドラみたいな感じかと思っていたのだが、意外と自由度が高い。
ジェネラスは僕に会うなり、手のひらに接吻しようとして都市が半壊した。
どうも、騎士物語を中途半端に学習したようで、人間サイズで出来る仕草をこの巨体でやってしまうのだ。
『では、我々はワームホール跳躍を行います』
「任せる」
ジェネラスとその周囲のキャヴァリエ=ノクティラノスが、発生した特異点に飲み込まれる形で異空間へと跳躍する。
「凄いのね.....あなたたちは」
「どうだろうか、僕には分かりかねるな」
ここはジェネラスの艦内なので、あまり踏み込んだ質問には答えられない。
曖昧にごまかしておく。
「君の記憶は、消さないことにした」
「いいの?」
「......もし君が、嫌になることがあったら。....一人で僕らの領域に来い。歓迎する」
「....ええ、そうするわ」
僕らの会話を聞いたのか、ジェネラスが咳払いをする。
「どうした、ジェネラス」
『....否、もしこの領域に再訪することがあれば、拙者の弟子として師事させてはいただけませぬかと、愚行していたところでございます』
「それも、考えておけ」
『はっ』
ワームホールを抜け、僕らは通常空間へと出る。
「......通信機が復帰したわ、オルトス国内のようね....」
「ここからはあの船で行け」
「.......分かったわ、今までありがとう」
「ああ」
ジェネラスの艦船収納ベイにあった実験艦「ノステリア」にエリスは搭乗し、そのまま宇宙へと飛び出す。
『では、我々は隠蔽装置を起動します』
「ああ」
まだ帰りたくないのを察してか、ジェネラスは周囲に隠蔽装置を起動したのだ。
僕らの存在をこの次元から遠ざけ、位相を歪ませることで「そこにいるのにいない」状態を作り出すらしい。
攻撃を受けたり、近づかれるとばれてしまうカモフラージュ等とはレベルが文字通り違う。
「.........それにしても、美しい星だな」
『カサンドラの調べでは、192年前に継承者同士の激しい戦争を乗り越え、その渦中にあった青い星を永遠に守り発展させていくと誓ったそうです』
「そうなのか...」
オルトスは絶対王政らしい。
ただ、それは圧政を敷くためではなく、権力を集約させることで反乱を防ぐ目的でもあるそうだ。
『そろそろ行かれますか?』
「もう少しだけ、良いだろうか」
『王命とあれば』
僕は今まで、何かを惜しいと思った事はほとんどなかった。
それを手放さなければ得られないものがあるのなら、別に構うこともなかった。
だというのに、何故か...何故かエリスだけは少し惜しかった。
きっとこれは、砂漠の真ん中で一杯の水を見つけたのと同じだろう。
「......ジェネラス、彼女が降りて行った場所を拡大できるか?」
『そう仰られると思い、僭越ながら追跡をかけておりました。現在複数人に囲まれているようです』
「...?」
拡大解析された写真を見ると、彼女が武装された人間たちに囲まれていた。
何があったかは分からないが、恐らく窮地だろう。
「.........」
ここで飛び出していくのは簡単だが、それはVe‘zの存在を明るみに出す事になる。
慎重に動けと指示したのは僕なのに、それを無視して勝手に動くのは...
「...ッ!」
次の映像更新で、彼女が交戦状態に入るのが見えた。
いかに彼女が優秀でも、20人に囲まれてはどうしようもない。
「.........」
どうする?
ジェネラスでは彼女を巻き込んでしまう以上、僕が出るしかない。
だが、彼女一人の...
「ジェネラス、今は何も聞くな、僕を最大速度であの座標に向かって射出しろ!」
『お任せください』
直後、僕は丁重に掴まれてカタパルトにセットされ、そのままレールガンと同じ方法で射出される。
少なくとも宇宙では、精度が下がる事はあっても速度は下がらない。
反重力スラスターで姿勢制御をしながら、僕はステーションや艦船を突っ切って大気圏へと降下する。
触手でシールドを張り、摩擦で燃え上がる視界を見ながら、僕は彼女を必ず助けると誓った。
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