15 / 180
序章
015-『エリガード』
しおりを挟む
「ここがコックピットか...」
僕は操縦席に潜り込む。
操縦席というよりは、液体のような気体が充満したポッドと言った空間だ。
とは言ったものの、ここは本当に操縦「席」だ。
ここにクローン体またはアンドロイドの義体を入れ、自分の意識を船と同化させる。
それが、Ve‘z艦の操縦法なのだ。
『エリガードの乗り心地はどうですか?』
「待て、今システムを起動する」
意識をシステムとリンクし、僕...というよりはエリアス専用の旗艦級戦艦、エリガードを起動する。
《遺伝子情報を確認》
《各コアシステム起動》
《Ve’zの栄光ある未来のために》
そんな文字が視界の前に順番に表示されたのちに消え、ドックの光景が視界に入ってきた。
『システム起動が完了したら、即座に出撃してください。安全管理の都合上40秒エアロックを開けておけない仕様です』
「了解した。射線を開けろ」
『了解』
僕はエリガードを出撃させる。
滑るように宇宙空間に飛び出したエリガードは、大戦艦の方へ転進する。
《可動砲塔使用可能》
《機動砲台使用可能》
そんな表示が出るが、わざわざちまちまと削る必要はない。
時間の無駄だ。
「超兵器「パラダイスロスト」を使用する」
《パラダイスロスト起動完了》
《座標の自動入力完了》
《発射まで残り5秒》
5秒はあっという間に過ぎ去り、視界が赤で埋め尽くされる。
他の超兵器と違い赤色に変調されたパラダイスロストは、一撃で大戦艦を呑み込み、跡形もなく蒸発させる。
恐ろしい威力だ。
だが、これはまだ出力の1%以下。
『流石はエリアス様ですね、我々の「ニューエンド」単発では範囲が足りず完全に蒸発させられないあの大戦艦を一撃とは...』
「僕の力は関係ないだろう、それに引き金を引くだけで良いのは、あまりに礼儀に欠ける」
『礼儀...ですか、それは何なのですか、エリアス様?』
シーシャが言葉を拾って興味を持ったのか、尋ねてくる。
僕は答える。
『ただ引き金を引くだけなら、僕でなくともできるだろう。だからこそ、なるべく僕が引き金を引かないように立ち回るべきなんだ』
そして今回のパラダイスロスト射撃は、その布石でもある。
僕はワームホールから出現する後続を見ながら、それを実行した。
「全艦攻撃開始、エリガードはこのまま撤退する」
後続はエリガードではなく通常艦に攻撃させ、エリガードは撤退。
こうすることで、エミドにパラダイスロストが連射できる兵器ではないと教えるのだ。
実際は連射できるが、弱点の一つでもあれば詮索はしないだろう。
「ん...? 待て、これどうやって出るんだ」
意識を義体に戻したはいいが、脱出装置が起動できない。
もしかして、と思い念じてみると扉が開いた。
思念操作の箇所もあるんだな、盲点だった。
「...まったく、心が荒むな」
やっぱり戦いはダメだ。
僕は癒しを求め、エリスのもとへ歩き出すのだった。
その頃、エミドの中央部では。
ジェキドが余裕の笑みを浮かべていた。
「底が見えたか」
一度も観測されたことのない艦が姿を現し、大戦艦を葬り去った。
それは、エミド大戦艦を一撃で葬り去るほどの戦力を、Ve’z側が持たないという事であり、秘蔵の兵器を出さなければいけなかった、という意味になる。
「前線基地を吹き飛ばされたが、その程度はまた補充すればよい事だ」
ジェキドは笑う。
その時、階段を上る音が響く。
「キシナか」
「オーペルン神聖国が大聖戦を宣告いたしました」
「どこに対してだ?」
「不明です」
「調べよ、異教徒どもの同行は監視されねばならぬ」
「はい」
ジェキド以外の人間は皆、単語で名を呼ばれる。
鋼と呼ばれた男は、大階段を降りていく。
それを見送ったジェキドは、薄く笑う。
「激動の時代がやって来るだろう」
僕は操縦席に潜り込む。
操縦席というよりは、液体のような気体が充満したポッドと言った空間だ。
とは言ったものの、ここは本当に操縦「席」だ。
ここにクローン体またはアンドロイドの義体を入れ、自分の意識を船と同化させる。
それが、Ve‘z艦の操縦法なのだ。
『エリガードの乗り心地はどうですか?』
「待て、今システムを起動する」
意識をシステムとリンクし、僕...というよりはエリアス専用の旗艦級戦艦、エリガードを起動する。
《遺伝子情報を確認》
《各コアシステム起動》
《Ve’zの栄光ある未来のために》
そんな文字が視界の前に順番に表示されたのちに消え、ドックの光景が視界に入ってきた。
『システム起動が完了したら、即座に出撃してください。安全管理の都合上40秒エアロックを開けておけない仕様です』
「了解した。射線を開けろ」
『了解』
僕はエリガードを出撃させる。
滑るように宇宙空間に飛び出したエリガードは、大戦艦の方へ転進する。
《可動砲塔使用可能》
《機動砲台使用可能》
そんな表示が出るが、わざわざちまちまと削る必要はない。
時間の無駄だ。
「超兵器「パラダイスロスト」を使用する」
《パラダイスロスト起動完了》
《座標の自動入力完了》
《発射まで残り5秒》
5秒はあっという間に過ぎ去り、視界が赤で埋め尽くされる。
他の超兵器と違い赤色に変調されたパラダイスロストは、一撃で大戦艦を呑み込み、跡形もなく蒸発させる。
恐ろしい威力だ。
だが、これはまだ出力の1%以下。
『流石はエリアス様ですね、我々の「ニューエンド」単発では範囲が足りず完全に蒸発させられないあの大戦艦を一撃とは...』
「僕の力は関係ないだろう、それに引き金を引くだけで良いのは、あまりに礼儀に欠ける」
『礼儀...ですか、それは何なのですか、エリアス様?』
シーシャが言葉を拾って興味を持ったのか、尋ねてくる。
僕は答える。
『ただ引き金を引くだけなら、僕でなくともできるだろう。だからこそ、なるべく僕が引き金を引かないように立ち回るべきなんだ』
そして今回のパラダイスロスト射撃は、その布石でもある。
僕はワームホールから出現する後続を見ながら、それを実行した。
「全艦攻撃開始、エリガードはこのまま撤退する」
後続はエリガードではなく通常艦に攻撃させ、エリガードは撤退。
こうすることで、エミドにパラダイスロストが連射できる兵器ではないと教えるのだ。
実際は連射できるが、弱点の一つでもあれば詮索はしないだろう。
「ん...? 待て、これどうやって出るんだ」
意識を義体に戻したはいいが、脱出装置が起動できない。
もしかして、と思い念じてみると扉が開いた。
思念操作の箇所もあるんだな、盲点だった。
「...まったく、心が荒むな」
やっぱり戦いはダメだ。
僕は癒しを求め、エリスのもとへ歩き出すのだった。
その頃、エミドの中央部では。
ジェキドが余裕の笑みを浮かべていた。
「底が見えたか」
一度も観測されたことのない艦が姿を現し、大戦艦を葬り去った。
それは、エミド大戦艦を一撃で葬り去るほどの戦力を、Ve’z側が持たないという事であり、秘蔵の兵器を出さなければいけなかった、という意味になる。
「前線基地を吹き飛ばされたが、その程度はまた補充すればよい事だ」
ジェキドは笑う。
その時、階段を上る音が響く。
「キシナか」
「オーペルン神聖国が大聖戦を宣告いたしました」
「どこに対してだ?」
「不明です」
「調べよ、異教徒どもの同行は監視されねばならぬ」
「はい」
ジェキド以外の人間は皆、単語で名を呼ばれる。
鋼と呼ばれた男は、大階段を降りていく。
それを見送ったジェキドは、薄く笑う。
「激動の時代がやって来るだろう」
16
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜
華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日
この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。
札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。
渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。
この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。
一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。
そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。
この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。
この作品はフィクションです。
実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。
―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――
EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ――
とある別の歴史を歩んだ世界。
その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。
第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる――
大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。
そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。
そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。
そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。
そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。
果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。
未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する――
注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。
注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。
注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。
注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。
注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
最強のコミュ障探索者、Sランクモンスターから美少女配信者を助けてバズりたおす~でも人前で喋るとか無理なのでコラボ配信は断固お断りします!~
尾藤みそぎ
ファンタジー
陰キャのコミュ障女子高生、灰戸亜紀は人見知りが過ぎるあまりソロでのダンジョン探索をライフワークにしている変わり者。そんな彼女は、ダンジョンの出現に呼応して「プライムアビリティ」に覚醒した希少な特級探索者の1人でもあった。
ある日、亜紀はダンジョンの中層に突如現れたSランクモンスターのサラマンドラに襲われている探索者と遭遇する。
亜紀は人助けと思って、サラマンドラを一撃で撃破し探索者を救出。
ところが、襲われていたのは探索者兼インフルエンサーとして知られる水無瀬しずくで。しかも、救出の様子はすべて生配信されてしまっていた!?
そして配信された動画がバズりまくる中、偶然にも同じ学校の生徒だった水無瀬しずくがお礼に現れたことで、亜紀は瞬く間に身バレしてしまう。
さらには、ダンジョン管理局に目をつけられて依頼が舞い込んだり、水無瀬しずくからコラボ配信を持ちかけられたり。
コミュ障を極めてひっそりと生活していた亜紀の日常はガラリと様相を変えて行く!
はたして表舞台に立たされてしまった亜紀は安らぎのぼっちライフを守り抜くことができるのか!?
悠久の機甲歩兵
竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。
※現在毎日更新中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる