15 / 200
序章
015-『エリガード』
しおりを挟む
「ここがコックピットか...」
僕は操縦席に潜り込む。
操縦席というよりは、液体のような気体が充満したポッドと言った空間だ。
とは言ったものの、ここは本当に操縦「席」だ。
ここにクローン体またはアンドロイドの義体を入れ、自分の意識を船と同化させる。
それが、Ve‘z艦の操縦法なのだ。
『エリガードの乗り心地はどうですか?』
「待て、今システムを起動する」
意識をシステムとリンクし、僕...というよりはエリアス専用の旗艦級戦艦、エリガードを起動する。
《遺伝子情報を確認》
《各コアシステム起動》
《Ve’zの栄光ある未来のために》
そんな文字が視界の前に順番に表示されたのちに消え、ドックの光景が視界に入ってきた。
『システム起動が完了したら、即座に出撃してください。安全管理の都合上40秒エアロックを開けておけない仕様です』
「了解した。射線を開けろ」
『了解』
僕はエリガードを出撃させる。
滑るように宇宙空間に飛び出したエリガードは、大戦艦の方へ転進する。
《可動砲塔使用可能》
《機動砲台使用可能》
そんな表示が出るが、わざわざちまちまと削る必要はない。
時間の無駄だ。
「超兵器「パラダイスロスト」を使用する」
《パラダイスロスト起動完了》
《座標の自動入力完了》
《発射まで残り5秒》
5秒はあっという間に過ぎ去り、視界が赤で埋め尽くされる。
他の超兵器と違い赤色に変調されたパラダイスロストは、一撃で大戦艦を呑み込み、跡形もなく蒸発させる。
恐ろしい威力だ。
だが、これはまだ出力の1%以下。
『流石はエリアス様ですね、我々の「ニューエンド」単発では範囲が足りず完全に蒸発させられないあの大戦艦を一撃とは...』
「僕の力は関係ないだろう、それに引き金を引くだけで良いのは、あまりに礼儀に欠ける」
『礼儀...ですか、それは何なのですか、エリアス様?』
シーシャが言葉を拾って興味を持ったのか、尋ねてくる。
僕は答える。
『ただ引き金を引くだけなら、僕でなくともできるだろう。だからこそ、なるべく僕が引き金を引かないように立ち回るべきなんだ』
そして今回のパラダイスロスト射撃は、その布石でもある。
僕はワームホールから出現する後続を見ながら、それを実行した。
「全艦攻撃開始、エリガードはこのまま撤退する」
後続はエリガードではなく通常艦に攻撃させ、エリガードは撤退。
こうすることで、エミドにパラダイスロストが連射できる兵器ではないと教えるのだ。
実際は連射できるが、弱点の一つでもあれば詮索はしないだろう。
「ん...? 待て、これどうやって出るんだ」
意識を義体に戻したはいいが、脱出装置が起動できない。
もしかして、と思い念じてみると扉が開いた。
思念操作の箇所もあるんだな、盲点だった。
「...まったく、心が荒むな」
やっぱり戦いはダメだ。
僕は癒しを求め、エリスのもとへ歩き出すのだった。
その頃、エミドの中央部では。
ジェキドが余裕の笑みを浮かべていた。
「底が見えたか」
一度も観測されたことのない艦が姿を現し、大戦艦を葬り去った。
それは、エミド大戦艦を一撃で葬り去るほどの戦力を、Ve’z側が持たないという事であり、秘蔵の兵器を出さなければいけなかった、という意味になる。
「前線基地を吹き飛ばされたが、その程度はまた補充すればよい事だ」
ジェキドは笑う。
その時、階段を上る音が響く。
「キシナか」
「オーペルン神聖国が大聖戦を宣告いたしました」
「どこに対してだ?」
「不明です」
「調べよ、異教徒どもの同行は監視されねばならぬ」
「はい」
ジェキド以外の人間は皆、単語で名を呼ばれる。
鋼と呼ばれた男は、大階段を降りていく。
それを見送ったジェキドは、薄く笑う。
「激動の時代がやって来るだろう」
僕は操縦席に潜り込む。
操縦席というよりは、液体のような気体が充満したポッドと言った空間だ。
とは言ったものの、ここは本当に操縦「席」だ。
ここにクローン体またはアンドロイドの義体を入れ、自分の意識を船と同化させる。
それが、Ve‘z艦の操縦法なのだ。
『エリガードの乗り心地はどうですか?』
「待て、今システムを起動する」
意識をシステムとリンクし、僕...というよりはエリアス専用の旗艦級戦艦、エリガードを起動する。
《遺伝子情報を確認》
《各コアシステム起動》
《Ve’zの栄光ある未来のために》
そんな文字が視界の前に順番に表示されたのちに消え、ドックの光景が視界に入ってきた。
『システム起動が完了したら、即座に出撃してください。安全管理の都合上40秒エアロックを開けておけない仕様です』
「了解した。射線を開けろ」
『了解』
僕はエリガードを出撃させる。
滑るように宇宙空間に飛び出したエリガードは、大戦艦の方へ転進する。
《可動砲塔使用可能》
《機動砲台使用可能》
そんな表示が出るが、わざわざちまちまと削る必要はない。
時間の無駄だ。
「超兵器「パラダイスロスト」を使用する」
《パラダイスロスト起動完了》
《座標の自動入力完了》
《発射まで残り5秒》
5秒はあっという間に過ぎ去り、視界が赤で埋め尽くされる。
他の超兵器と違い赤色に変調されたパラダイスロストは、一撃で大戦艦を呑み込み、跡形もなく蒸発させる。
恐ろしい威力だ。
だが、これはまだ出力の1%以下。
『流石はエリアス様ですね、我々の「ニューエンド」単発では範囲が足りず完全に蒸発させられないあの大戦艦を一撃とは...』
「僕の力は関係ないだろう、それに引き金を引くだけで良いのは、あまりに礼儀に欠ける」
『礼儀...ですか、それは何なのですか、エリアス様?』
シーシャが言葉を拾って興味を持ったのか、尋ねてくる。
僕は答える。
『ただ引き金を引くだけなら、僕でなくともできるだろう。だからこそ、なるべく僕が引き金を引かないように立ち回るべきなんだ』
そして今回のパラダイスロスト射撃は、その布石でもある。
僕はワームホールから出現する後続を見ながら、それを実行した。
「全艦攻撃開始、エリガードはこのまま撤退する」
後続はエリガードではなく通常艦に攻撃させ、エリガードは撤退。
こうすることで、エミドにパラダイスロストが連射できる兵器ではないと教えるのだ。
実際は連射できるが、弱点の一つでもあれば詮索はしないだろう。
「ん...? 待て、これどうやって出るんだ」
意識を義体に戻したはいいが、脱出装置が起動できない。
もしかして、と思い念じてみると扉が開いた。
思念操作の箇所もあるんだな、盲点だった。
「...まったく、心が荒むな」
やっぱり戦いはダメだ。
僕は癒しを求め、エリスのもとへ歩き出すのだった。
その頃、エミドの中央部では。
ジェキドが余裕の笑みを浮かべていた。
「底が見えたか」
一度も観測されたことのない艦が姿を現し、大戦艦を葬り去った。
それは、エミド大戦艦を一撃で葬り去るほどの戦力を、Ve’z側が持たないという事であり、秘蔵の兵器を出さなければいけなかった、という意味になる。
「前線基地を吹き飛ばされたが、その程度はまた補充すればよい事だ」
ジェキドは笑う。
その時、階段を上る音が響く。
「キシナか」
「オーペルン神聖国が大聖戦を宣告いたしました」
「どこに対してだ?」
「不明です」
「調べよ、異教徒どもの同行は監視されねばならぬ」
「はい」
ジェキド以外の人間は皆、単語で名を呼ばれる。
鋼と呼ばれた男は、大階段を降りていく。
それを見送ったジェキドは、薄く笑う。
「激動の時代がやって来るだろう」
16
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。
――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。
スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。
地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!?
異世界国家サバイバル、ここに爆誕!

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる