15 / 60
序章
015-『エリガード』
しおりを挟む
「ここがコックピットか...」
僕は操縦席に潜り込む。
操縦席というよりは、液体のような気体が充満したポッドと言った空間だ。
とは言ったものの、ここは本当に操縦「席」だ。
ここにクローン体またはアンドロイドの義体を入れ、自分の意識を船と同化させる。
それが、Ve‘z艦の操縦法なのだ。
『エリガードの乗り心地はどうですか?』
「待て、今システムを起動する」
意識をシステムとリンクし、僕...というよりはエリアス専用の旗艦級戦艦、エリガードを起動する。
《遺伝子情報を確認》
《各コアシステム起動》
《Ve’zの栄光ある未来のために》
そんな文字が視界の前に順番に表示されたのちに消え、ドックの光景が視界に入ってきた。
『システム起動が完了したら、即座に出撃してください。安全管理の都合上40秒エアロックを開けておけない仕様です』
「了解した。射線を開けろ」
『了解』
僕はエリガードを出撃させる。
滑るように宇宙空間に飛び出したエリガードは、大戦艦の方へ転進する。
《可動砲塔使用可能》
《機動砲台使用可能》
そんな表示が出るが、わざわざちまちまと削る必要はない。
時間の無駄だ。
「超兵器「パラダイスロスト」を使用する」
《パラダイスロスト起動完了》
《座標の自動入力完了》
《発射まで残り5秒》
5秒はあっという間に過ぎ去り、視界が赤で埋め尽くされる。
他の超兵器と違い赤色に変調されたパラダイスロストは、一撃で大戦艦を呑み込み、跡形もなく蒸発させる。
恐ろしい威力だ。
だが、これはまだ出力の1%以下。
『流石はエリアス様ですね、我々の「ニューエンド」単発では範囲が足りず完全に蒸発させられないあの大戦艦を一撃とは...』
「僕の力は関係ないだろう、それに引き金を引くだけで良いのは、あまりに礼儀に欠ける」
『礼儀...ですか、それは何なのですか、エリアス様?』
シーシャが言葉を拾って興味を持ったのか、尋ねてくる。
僕は答える。
『ただ引き金を引くだけなら、僕でなくともできるだろう。だからこそ、なるべく僕が引き金を引かないように立ち回るべきなんだ』
そして今回のパラダイスロスト射撃は、その布石でもある。
僕はワームホールから出現する後続を見ながら、それを実行した。
「全艦攻撃開始、エリガードはこのまま撤退する」
後続はエリガードではなく通常艦に攻撃させ、エリガードは撤退。
こうすることで、エミドにパラダイスロストが連射できる兵器ではないと教えるのだ。
実際は連射できるが、弱点の一つでもあれば詮索はしないだろう。
「ん...? 待て、これどうやって出るんだ」
意識を義体に戻したはいいが、脱出装置が起動できない。
もしかして、と思い念じてみると扉が開いた。
思念操作の箇所もあるんだな、盲点だった。
「...まったく、心が荒むな」
やっぱり戦いはダメだ。
僕は癒しを求め、エリスのもとへ歩き出すのだった。
その頃、エミドの中央部では。
ジェキドが余裕の笑みを浮かべていた。
「底が見えたか」
一度も観測されたことのない艦が姿を現し、大戦艦を葬り去った。
それは、エミド大戦艦を一撃で葬り去るほどの戦力を、Ve’z側が持たないという事であり、秘蔵の兵器を出さなければいけなかった、という意味になる。
「前線基地を吹き飛ばされたが、その程度はまた補充すればよい事だ」
ジェキドは笑う。
その時、階段を上る音が響く。
「キシナか」
「オーペルン神聖国が大聖戦を宣告いたしました」
「どこに対してだ?」
「不明です」
「調べよ、異教徒どもの同行は監視されねばならぬ」
「はい」
ジェキド以外の人間は皆、単語で名を呼ばれる。
鋼と呼ばれた男は、大階段を降りていく。
それを見送ったジェキドは、薄く笑う。
「激動の時代がやって来るだろう」
僕は操縦席に潜り込む。
操縦席というよりは、液体のような気体が充満したポッドと言った空間だ。
とは言ったものの、ここは本当に操縦「席」だ。
ここにクローン体またはアンドロイドの義体を入れ、自分の意識を船と同化させる。
それが、Ve‘z艦の操縦法なのだ。
『エリガードの乗り心地はどうですか?』
「待て、今システムを起動する」
意識をシステムとリンクし、僕...というよりはエリアス専用の旗艦級戦艦、エリガードを起動する。
《遺伝子情報を確認》
《各コアシステム起動》
《Ve’zの栄光ある未来のために》
そんな文字が視界の前に順番に表示されたのちに消え、ドックの光景が視界に入ってきた。
『システム起動が完了したら、即座に出撃してください。安全管理の都合上40秒エアロックを開けておけない仕様です』
「了解した。射線を開けろ」
『了解』
僕はエリガードを出撃させる。
滑るように宇宙空間に飛び出したエリガードは、大戦艦の方へ転進する。
《可動砲塔使用可能》
《機動砲台使用可能》
そんな表示が出るが、わざわざちまちまと削る必要はない。
時間の無駄だ。
「超兵器「パラダイスロスト」を使用する」
《パラダイスロスト起動完了》
《座標の自動入力完了》
《発射まで残り5秒》
5秒はあっという間に過ぎ去り、視界が赤で埋め尽くされる。
他の超兵器と違い赤色に変調されたパラダイスロストは、一撃で大戦艦を呑み込み、跡形もなく蒸発させる。
恐ろしい威力だ。
だが、これはまだ出力の1%以下。
『流石はエリアス様ですね、我々の「ニューエンド」単発では範囲が足りず完全に蒸発させられないあの大戦艦を一撃とは...』
「僕の力は関係ないだろう、それに引き金を引くだけで良いのは、あまりに礼儀に欠ける」
『礼儀...ですか、それは何なのですか、エリアス様?』
シーシャが言葉を拾って興味を持ったのか、尋ねてくる。
僕は答える。
『ただ引き金を引くだけなら、僕でなくともできるだろう。だからこそ、なるべく僕が引き金を引かないように立ち回るべきなんだ』
そして今回のパラダイスロスト射撃は、その布石でもある。
僕はワームホールから出現する後続を見ながら、それを実行した。
「全艦攻撃開始、エリガードはこのまま撤退する」
後続はエリガードではなく通常艦に攻撃させ、エリガードは撤退。
こうすることで、エミドにパラダイスロストが連射できる兵器ではないと教えるのだ。
実際は連射できるが、弱点の一つでもあれば詮索はしないだろう。
「ん...? 待て、これどうやって出るんだ」
意識を義体に戻したはいいが、脱出装置が起動できない。
もしかして、と思い念じてみると扉が開いた。
思念操作の箇所もあるんだな、盲点だった。
「...まったく、心が荒むな」
やっぱり戦いはダメだ。
僕は癒しを求め、エリスのもとへ歩き出すのだった。
その頃、エミドの中央部では。
ジェキドが余裕の笑みを浮かべていた。
「底が見えたか」
一度も観測されたことのない艦が姿を現し、大戦艦を葬り去った。
それは、エミド大戦艦を一撃で葬り去るほどの戦力を、Ve’z側が持たないという事であり、秘蔵の兵器を出さなければいけなかった、という意味になる。
「前線基地を吹き飛ばされたが、その程度はまた補充すればよい事だ」
ジェキドは笑う。
その時、階段を上る音が響く。
「キシナか」
「オーペルン神聖国が大聖戦を宣告いたしました」
「どこに対してだ?」
「不明です」
「調べよ、異教徒どもの同行は監視されねばならぬ」
「はい」
ジェキド以外の人間は皆、単語で名を呼ばれる。
鋼と呼ばれた男は、大階段を降りていく。
それを見送ったジェキドは、薄く笑う。
「激動の時代がやって来るだろう」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
18
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる