SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

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序章

014-交 戦

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『エミド艦隊、β-2151ワームホール内を移動中』
『予定位置のワームホールがないため、少し調査に手間取っている様です』

メッティーラとカサンドラが次々に報告してくる。
それを受け、僕は考える。
ワームホールを調査しているということは、空間特異点をすぐに見つける技術力は持っていないという事になる。

「...ケルビス」
『ハッ、如何致しましたか、エリアス様』
「相手の技術力は低い様だし、壊滅させた後そのまま痕跡を辿って逆に攻撃を仕掛けらるだろうか」

こちらの技術を使えば、帰りはワームホールで容易に帰投できる。

『成程、理解しました...やはりその考えは偉大にして深遠! 直ちに作戦計画を立案致します』
「頼りにしている」

ケルビスは今回お休みで、僕の椅子となるなどと宣言して共にいる。
彼らが乗っている機体、僕の分もあるらしいのだが、果たして乗る日は来るのだろうか?

『敵艦隊、α-1121に移動』
『メッティーラ艦隊、正常にワームホールアクセス地点に集結』
「索敵警戒」
『半径5光年状に敵影なし、ワームホール制御システム稼働中のためワームホールも確認されません』
「了解」

どうして索敵の範囲が光年(Light Years)扱いなのか。
技術力が高すぎていう事が特にない。

『敵艦隊、α-44512へ移動』
『各武装チェックOK、「ニューエンド」及びに「アルカンシエル」フィラメント点検完了、不備が出たヴィジラントエクスティラノスを一度撤退させます』
『受け取りました...整備完了、作戦地点へ直接転送します、座標を送信してください』
『座標送信完了、転送を確認』

「ニューエンド」だけはまだ見たことのない兵器だ。
カタログスペックは理解しているが、「アルカンシエル」だけで十分なんじゃないか...? と思うくらいには高い。

『敵艦隊、α-2132へ移動、こちらの制御ワームホール発見までの推定時間:562秒』
『こちらケルビス、予備艦隊の編成案をカサンドラに送信する』
『受け取った、現有戦力から判断し、エリアス様に最終決定を委託します』
「...えっ」

最終決定は僕か...
まあ、社長の様なものか。
最後に判子を押すのは僕だ。

『敵艦隊がワームホールを発見、敵艦隊の推定距離に合わせてこちらもワームホールへアクセスする』
『警備艦隊、浮遊都市周辺に展開』
「うーーーーむ...」

報告を聞き流しながら、追撃艦隊の編成を見る僕。
これでいいのは間違いないが、過剰すぎる気もする。

『ワームホール空間へ進入...接敵まで残り15秒』
『全システムオンライン、戦闘モードへ移行します』

ついに始まった。
艦隊の映像共有がなされて、ワームホールへと飛び込んだこちらの艦隊が、向こうの艦隊を待ち構えているのが見えた。

『アルカンシエル、ニューエンドをそれぞれ拡散放射』

直後、空間内を光が埋め尽くす。
サーモグラフィーや赤外線に切り替えても、圧倒的な熱量で何も見えない。
光が晴れると、メッティーラが無慈悲に報告する。

『敵艦隊、82%の消滅を確認、ニューエンドを再起動し追撃を行う』

ワームホールの出入り口は、停止はできるが後退は出来ない空間であり...敵に逃げ場などなかった。
ワームホール空間を埋め尽くす超兵器相手では、通り抜けなどできるはずがない。

『敵艦隊の100%.....つまり全滅を達成』
「よくやった、メッティーラ」
『警備艦隊を都市に収容します』
『応戦艦隊、帰投します』

カサンドラとメッティーラの艦隊が、それぞれ都市周辺に帰還していく。
そして、それとすれ違いになるように艦隊がワームホールに向けて出撃していく。
ケルビスが先導する、追撃艦隊である。

『私めにお任せください、敵の界越航跡は既に探査済みですので容易に拠点を特定できるかと思われます』

そんな自信たっぷりの言葉通り、ワームホールを辿りケルビスの艦隊はエミドの前線基地に出現する。

『全艦、「ニューエンド」及び「アルカンシエル」の発射開始』

ケルビスのアイカメラを起点とし、三つの光線が放たれる。
それらは融合して拡大し、基地の中央部をまるまる吹き飛ばした。
そこに後続のアルカンシエルが襲い掛かり、全体を蒸発させていく。

『如何ですか、エリアス様』
「待て、カサンドラ!」
『はい』

僕は気付いた。
撤退中のスカウトノクティラノスから、ワームホールの活性化が報告されていることに。

「ケルビス、それでいい。戻れ、まだ何か隠れている!」
『エリアス様の命とあらば――――撤退!』

ケルビスの艦隊は撤退を開始するが、こちらの宙域に移動中の何かを捉えるのは難しいだろう。

「メッティーラ、警備艦隊と合流して迎撃の準備を」
『ハッ!』

メッティーラの艦隊がUターンして、カサンドラから指揮権を委譲された警備艦隊と合流する。
そして、僕らが見守る前で、ワームホールからそれは現れた。

『エミドの標準的な大戦艦と想定』
『敵基地攻撃能力に優れますが、こちらのシールドを突破できない可能性が高いです』

背後にはケルビス艦隊。
こちらが被害を受けることはない。
それならば...

「カサンドラ、少し試したい事があるのだが」

僕は意を決して、カサンドラに頼み事をした。
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