上 下
13 / 180
序章

013-エミド接近

しおりを挟む
「.........物言わぬ者どもが動いた、か」

エミド。
ワームホール内から現れ、瞬く間に一つの銀河を支配下に置いた文明。
その奥深くにて、一人の男が呟いた。

「惑星C-113322付近で大規模な戦闘活動を確認。残骸は全て回収されましたが、エネルギーの残滓から超兵器が使われたものと予測」
「放ってはおけぬ、これは宇宙のバランスを乱す行為だ」

エミドの目的とは何か?
それは、意思を持たない民の頂点に立つこの男...自らを上位存在の端末と僭称するジェキド・イーシャティブの定める基準に従い、この宇宙のバランスを公平に保つ事。
かの星がエミドを攻撃した際、その攻撃にはエミドからサルベージングされた技術が利用されていた。
それ故に、二度と広まらぬよう星を焦土と化させたのだ。
バランスを崩さぬ様。

「いかがなされますか?」
「やつらの首都ヴェリアノスへと艦隊を派遣するのだ、様子見で小型艦艇200隻程度で良い」

ジェキドにとっては、自らの民などリソースと同様なのだ。
エミドの正式名称は、エミド統合体。
国民全てが自由意志を持たずに、エミドに従う、人間でありながら虫のコロニーの様な社会構造。
それ故に、見誤っていたのだ。
技術面では勝るとも劣らないレベルなのに対し、とある点でVe‘zには決して及ばない事に。






『エリアス様、偵察に出させていたスカウトノクティラノスから情報が入りました。ワームホール内の連続空間内を、こちらの座標に向けて移動中のエミド艦隊を発見した模様』
「そうか」

僕はどうすればいい?
そう思うと、目の前...というか網膜スクリーンに情報が出る。

「...ワームホール制御でヴェリアノス周辺のワームホールを閉じ、一点に収束させろ。エミドはワームホールについての知識は深いが、制御するまでの技術は持たない事が事前の情報では確認されている」

言い切るとほぼ同時に、ケルビスが喋り始める。

『成程、流石はエリアス様、敵を一点に集め、一気に滅ぼす.........しかし、わざと計画に穴を作る事で、我々を試されているのですね!』

ん?
計画に穴なんて...

「...では、その穴とは何か? それを埋めるためにはどうするか、示してみよ」
『ハッ、エリアス様。私めは、ワームホールから脱出した直後、敵が散開した場合に超兵器「ニューエンド」では対処が難しいと愚行いたしました』
「......僕の予想通りか」

全くわからなかったが、とりあえず敵が広がると直線的な攻撃では意味がないらしい。
あれは面制圧を目的とした兵器ではないからだ。

『そこで私めは、エリアス様がポーラライズ収束粒子フィールドジェネレータを使用し、包囲陣形にて敵艦隊を殲滅するとお考えになられているのかと思いました』
「そ、そうだ...その通r」
『ですが! それではあまりに非効率です。到底、エリアス様のような賢き御方の発想ではない』

ちょっとイイと思ったのだが。
まだ足りないらしい。

『簡単な事でした、エリアス様は最初から答えを示しておられたのですよ!』
「えっ!?」
『なっ!?』

カサンドラの声に僕の声がかき消される。
その場にいたシーシャ、メッティーラ、将軍枠のメティス=エクスティラノスまでが驚いていた。

『エリアス様はこの会議場に入る際に、敷居に躓かれました。あらゆる知性体の頂点に立つお方であるエリアス様がその様なミスを犯すはずがない...そう、これは私めに新たな叡智を授けてくださったのと同義...そう、広がる前に入り口という一方通行の場所で迎え撃つ事こそが、作戦の本懐だったのですよ!』

な、何だって。
確かにワームホールの入り口は一極化されていて、入った方から出る方にしか動けない。
だが、それを利用して迎え撃つとは。
凄い発想だ...僕じゃ無理だった。

「そ...その通りだケルビス。僕の試験には合格だ。だが実戦で通じるかな、なにしろ僕には指揮の経験が無いのだから」
『ならばこのケルビスに...』
『待ちなさい』

メッティーラがケルビスの声を遮る。

『艦隊を動かすのはこの私なのですから、試運転的な意義も込めて、このメッティーラこそが指揮官に相応しいかと存じます』

触手で恭しく礼をしながらメッティーラがこっちに話しかけてくる。
僕としては作戦指揮はどちらでもいいんだが、ここはあまりエリアスの記憶にないメッティーラを起用しよう。

「メッティーラ、君はまだ指揮経験が少ない」
『でしょう、ね...』
「行ってくれるか、君の経験を積むという点で、この迎撃戦は重要だ。ケルビスは後続の防衛艦隊の指揮を執れ」
『ハッ、仰せのままに』

ケルビスはアイカメラを瞼...アーマーで覆って礼の代わりとする。
大丈夫だろうか、人ではないとわかっているが、不満を抱いたりなどはしていないだろうか?
不安が膨らむ中、静かなる戦いは幕を開ける。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜

華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日  この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。  札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。  渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。  この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。  一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。  そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。 この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。 この作品はフィクションです。 実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。

体内内蔵スマホ

廣瀬純一
SF
体に内蔵されたスマホのチップのバグで男女の体が入れ替わる話

―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――

EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ―― とある別の歴史を歩んだ世界。 その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。 第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる―― 大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。 そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。 そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。 そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。 そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。 果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。 未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する―― 注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。 注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。 注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。 注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。 注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

未来への転送

廣瀬純一
SF
未来に転送された男女の体が入れ替わる話

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

入れ替われるイメクラ

廣瀬純一
SF
男女の体が入れ替わるイメクラの話

処理中です...