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序章
009-エリアスコックのおまかせ料理
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「........ふぅ」
惑星に降り立った僕は、懐かしい感覚に襲われる。
まだ転生して一週間しか経っていないけれど、ヴェリアノスはとても冷たくて、静かな場所だから、暖かいこの場所は癒しになる。
風の音が懐かしい。
木々の香りが懐かしい。
「カサンドラ、僕の血を水で割る割合はどれくらいだ?」
『貴方様の血を1、水を9の割合で1:9です』
「濃いんだな」
とりあえず、当面は周辺で果樹を見つけたので、それを加工してあの女性の食事にする。
飲み物に僕の血液をちょっとだけ入れておけば、十分な栄養素を摂取できるはずだ。
とはいえ、ずっとそれも可哀想だ。
僕の新たな趣味...ではなくて、試行錯誤に付き合ってもらおう。
「流石に米や麦の様なものは無いか」
あるのは芋類と豆類。
穀類の代わりになりそうなのは、あまり実の大きく無い芋くらいのものか。
品種改良ができないかシーシャに聞いてみよう。
水資源なども積んで、小型宇宙船で宇宙に飛び出す。
流石に単身で重力圏を突破はできないのだ。
宇宙に出たら、哨戒班のノクティラノスに食糧を渡し、自動帰還ルートを設定して僕だけ「王座の間」に戻る。
コアブロックに直接ワープができないので、苦渋の策ではあるがここに跳んでからコアブロックに移動するのだ。
「開け」
壁に向かって命じると、壁が形を変えて僕の前に道を形作る。
そこを通って、コアブロックへ向かう。
コアブロックは全ての領域に繋がるハブの様なものでもあるので、コアブロックを利用してメディカルベイへと向かう。
「起きたか?」
「......何が目的なの」
既に起きていたらしい女の人は、律儀にポッドの中で待っていた。
ポッドを開けてやると、窮屈だったらしく背を伸ばしていた。
「まずは名前を聞こうか」
「ねぇ、何が目的なの!」
目的か。
それっぽく答えておいた方が、後々役に立つだろうか?
「目的? ここは僕の領域だ、君が入ってきたのだから、捕えるのは当たり前じゃないか」
「...どうしても、仕方なかったの」
「名前を教えてくれないか?」
僕が再度聞くと、彼女は所在なさげに「...エリス」と答えた。
「それでエリス、あの船は一体なんだ?」
「あなたに答える必要がある?」
「お腹が空いているんじゃないか? 情報ももたらさない人間を生かしておく趣味はこっちにはないんだが」
「...卑怯よ!」
卑怯か?
若干心が痛むが、僕も男性的、女性的な目線でこの人を見ているわけではない。
ただ、唯一の失っても痛まない情報源だ。
「......話したら、ご飯をくれるの...?」
「ああ、情報の価値には今回は触れない。何があって、あの船でここに来たか全て話せ」
「......あの船は、盗品よ。新型の探検用の艦船...」
「そうか、食べていいぞ」
僕は抱えていた筒から、エリスのための食事を椀に盛り付ける。
適当な果実をペースト状になるまですり潰して、水と僕の体液を入れて混ぜたものだ。
味覚が鈍い僕でも正直、あまり美味しいものではないが、食事をする人間がいないので仕方がない。
「う......」
「残してもいい」
「だ、大丈夫よ」
食事としての体をギリギリ保った食事を、エリスは30分ほどかけて食べた。
味は最低、食感は最悪だが、栄養価は高い。
少なくとも、カサンドラの作ったナニカよりはマシ、程度だ。
「さあ、お前の身の上話でも聞こうか」
「あなた偉いんじゃないの? 私のつまらない話なんて聞いても仕方ないじゃない」
「少なくとも、今は暇だ」
「仕方ないわね...いいわ、もう私も死んだってことになってるでしょうから...」
悲しげにそう言うと、エリスは自分の身の上話を語ってくれた。
惑星に降り立った僕は、懐かしい感覚に襲われる。
まだ転生して一週間しか経っていないけれど、ヴェリアノスはとても冷たくて、静かな場所だから、暖かいこの場所は癒しになる。
風の音が懐かしい。
木々の香りが懐かしい。
「カサンドラ、僕の血を水で割る割合はどれくらいだ?」
『貴方様の血を1、水を9の割合で1:9です』
「濃いんだな」
とりあえず、当面は周辺で果樹を見つけたので、それを加工してあの女性の食事にする。
飲み物に僕の血液をちょっとだけ入れておけば、十分な栄養素を摂取できるはずだ。
とはいえ、ずっとそれも可哀想だ。
僕の新たな趣味...ではなくて、試行錯誤に付き合ってもらおう。
「流石に米や麦の様なものは無いか」
あるのは芋類と豆類。
穀類の代わりになりそうなのは、あまり実の大きく無い芋くらいのものか。
品種改良ができないかシーシャに聞いてみよう。
水資源なども積んで、小型宇宙船で宇宙に飛び出す。
流石に単身で重力圏を突破はできないのだ。
宇宙に出たら、哨戒班のノクティラノスに食糧を渡し、自動帰還ルートを設定して僕だけ「王座の間」に戻る。
コアブロックに直接ワープができないので、苦渋の策ではあるがここに跳んでからコアブロックに移動するのだ。
「開け」
壁に向かって命じると、壁が形を変えて僕の前に道を形作る。
そこを通って、コアブロックへ向かう。
コアブロックは全ての領域に繋がるハブの様なものでもあるので、コアブロックを利用してメディカルベイへと向かう。
「起きたか?」
「......何が目的なの」
既に起きていたらしい女の人は、律儀にポッドの中で待っていた。
ポッドを開けてやると、窮屈だったらしく背を伸ばしていた。
「まずは名前を聞こうか」
「ねぇ、何が目的なの!」
目的か。
それっぽく答えておいた方が、後々役に立つだろうか?
「目的? ここは僕の領域だ、君が入ってきたのだから、捕えるのは当たり前じゃないか」
「...どうしても、仕方なかったの」
「名前を教えてくれないか?」
僕が再度聞くと、彼女は所在なさげに「...エリス」と答えた。
「それでエリス、あの船は一体なんだ?」
「あなたに答える必要がある?」
「お腹が空いているんじゃないか? 情報ももたらさない人間を生かしておく趣味はこっちにはないんだが」
「...卑怯よ!」
卑怯か?
若干心が痛むが、僕も男性的、女性的な目線でこの人を見ているわけではない。
ただ、唯一の失っても痛まない情報源だ。
「......話したら、ご飯をくれるの...?」
「ああ、情報の価値には今回は触れない。何があって、あの船でここに来たか全て話せ」
「......あの船は、盗品よ。新型の探検用の艦船...」
「そうか、食べていいぞ」
僕は抱えていた筒から、エリスのための食事を椀に盛り付ける。
適当な果実をペースト状になるまですり潰して、水と僕の体液を入れて混ぜたものだ。
味覚が鈍い僕でも正直、あまり美味しいものではないが、食事をする人間がいないので仕方がない。
「う......」
「残してもいい」
「だ、大丈夫よ」
食事としての体をギリギリ保った食事を、エリスは30分ほどかけて食べた。
味は最低、食感は最悪だが、栄養価は高い。
少なくとも、カサンドラの作ったナニカよりはマシ、程度だ。
「さあ、お前の身の上話でも聞こうか」
「あなた偉いんじゃないの? 私のつまらない話なんて聞いても仕方ないじゃない」
「少なくとも、今は暇だ」
「仕方ないわね...いいわ、もう私も死んだってことになってるでしょうから...」
悲しげにそう言うと、エリスは自分の身の上話を語ってくれた。
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