SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

文字の大きさ
上 下
9 / 200
序章

009-エリアスコックのおまかせ料理

しおりを挟む
「........ふぅ」

惑星に降り立った僕は、懐かしい感覚に襲われる。
まだ転生して一週間しか経っていないけれど、ヴェリアノスはとても冷たくて、静かな場所だから、暖かいこの場所は癒しになる。
風の音が懐かしい。
木々の香りが懐かしい。

「カサンドラ、僕の血を水で割る割合はどれくらいだ?」
『貴方様の血を1、水を9の割合で1:9です』
「濃いんだな」

とりあえず、当面は周辺で果樹を見つけたので、それを加工してあの女性の食事にする。
飲み物に僕の血液をちょっとだけ入れておけば、十分な栄養素を摂取できるはずだ。
とはいえ、ずっとそれも可哀想だ。
僕の新たな趣味...ではなくて、試行錯誤に付き合ってもらおう。

「流石に米や麦の様なものは無いか」

あるのは芋類と豆類。
穀類の代わりになりそうなのは、あまり実の大きく無い芋くらいのものか。
品種改良ができないかシーシャに聞いてみよう。



水資源なども積んで、小型宇宙船で宇宙に飛び出す。
流石に単身で重力圏を突破はできないのだ。
宇宙に出たら、哨戒班のノクティラノスに食糧を渡し、自動帰還ルートを設定して僕だけ「王座の間」に戻る。
コアブロックに直接ワープができないので、苦渋の策ではあるがここに跳んでからコアブロックに移動するのだ。

「開け」

壁に向かって命じると、壁が形を変えて僕の前に道を形作る。
そこを通って、コアブロックへ向かう。
コアブロックは全ての領域に繋がるハブの様なものでもあるので、コアブロックを利用してメディカルベイへと向かう。

「起きたか?」
「......何が目的なの」

既に起きていたらしい女の人は、律儀にポッドの中で待っていた。
ポッドを開けてやると、窮屈だったらしく背を伸ばしていた。

「まずは名前を聞こうか」
「ねぇ、何が目的なの!」

目的か。
それっぽく答えておいた方が、後々役に立つだろうか?

「目的? ここは僕の領域だ、君が入ってきたのだから、捕えるのは当たり前じゃないか」
「...どうしても、仕方なかったの」
「名前を教えてくれないか?」

僕が再度聞くと、彼女は所在なさげに「...エリス」と答えた。

「それでエリス、あの船は一体なんだ?」
「あなたに答える必要がある?」
「お腹が空いているんじゃないか? 情報ももたらさない人間を生かしておく趣味はこっちにはないんだが」
「...卑怯よ!」

卑怯か?
若干心が痛むが、僕も男性的、女性的な目線でこの人を見ているわけではない。
ただ、唯一の失っても痛まない情報源だ。

「......話したら、ご飯をくれるの...?」
「ああ、情報の価値には今回は触れない。何があって、あの船でここに来たか全て話せ」
「......あの船は、盗品よ。新型の探検用の艦船...」
「そうか、食べていいぞ」

僕は抱えていた筒から、エリスのための食事を椀に盛り付ける。
適当な果実をペースト状になるまですり潰して、水と僕の体液を入れて混ぜたものだ。
味覚が鈍い僕でも正直、あまり美味しいものではないが、食事をする人間がいないので仕方がない。

「う......」
「残してもいい」
「だ、大丈夫よ」

食事としての体をギリギリ保った食事を、エリスは30分ほどかけて食べた。
味は最低、食感は最悪だが、栄養価は高い。
少なくとも、カサンドラの作ったナニカよりはマシ、程度だ。

「さあ、お前の身の上話でも聞こうか」
「あなた偉いんじゃないの? 私のつまらない話なんて聞いても仕方ないじゃない」
「少なくとも、今は暇だ」
「仕方ないわね...いいわ、もう私も死んだってことになってるでしょうから...」

悲しげにそう言うと、エリスは自分の身の上話を語ってくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。

スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。 地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!? 異世界国家サバイバル、ここに爆誕!

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...