SF世界に転生したら人類どころか人外で人類史の空白だった件~人間じゃないけど超優秀な配下を従えてます~

黴男

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序章

005-惑星観察

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結論から言うと、カサンドラの料理はあまり美味しいものではなかった。
AIに味を学習させる発想がなかったのかもしれない。

「…そもそも、この体が味わう感覚に慣れていなかったか」

味覚とは、使わなければ弱まっていく類の感覚だ。
エリアスの体は食事を必要としないので、食事を欲する僕の記憶が悪さをしているのだ。

「いつか、買い出しに行ってみるか」

この星系にはないが、鉱脈エリアの鉱石でも売って、人間の食事を手に入れよう。
そのためにはまず、僕が外出する手段を探さないといけないが。
こんな目立つ容姿を放っておくのはまずい。

「まずはファーストコンタクトが必要だな」

だが、Ve’zはこの世界では好意的に見られてはいない。
端的に言えば、ナイフを持ったまま近付くものだけを攻撃する、顔も名前もわからない人…の様な扱いを受けている。
そんな中、僕が大手を振って現れて挨拶をしたらどうなるか。
多分、現れた星ごと吹き飛ばしてくれるだろう。

「続々と復旧作業が始まっているし、僕もそろそろ何かしないといけないんだけど…」

指示から三日も経っていないにも関わらず、既に全体の32%が帰還を終了している。
タッティラのところで改造を受けて、荒廃したヴェリアノスの復旧作業を始めた。
今はこの浮遊都市しか無事なものは残っていないが、色々復旧すればこの技術を何かに活かせる。
……待てよ、何に活かすのだろうか。

「………」

考えてもわからない。
これは、僕が自分で答えを出すべき「命題」だ。
Ve‘z人が滅んだ理由は、きっと停滞にある。
ならば僕は同じ轍は踏まない、何が起こっても進み続ける。

「命題探しに疲れて同じことにならなければいいが」

コアブロックにはカサンドラも介入できないので、僕の部屋はいつもここだ。
愚痴部屋とも呼んでいる。
配下たちは皆優秀で、言うことがない。
だから、完全でありながら不完全である僕が余計にコンプレックスを抱く事になってしまう。

「…遠くの星でも見るか」

一応まだ生きている施設のセンサーを使って、遠くの星系の監視はできる。
最近の娯楽はそれだけだ。
コンソールを操作する必要はなく、僕のお気に入りの星の光景が映し出される。

「……」

地球そっくりな星だ。
偵察を出してみたところちゃんと文明があって、日本と同じくらいの技術水準だけど平和らしい。
それがとても懐かしくて、宝石箱の中の金剛石の様だった。

『エリアス様、その星に何があるのですか?』
「…大した理由はないが、少しだけ気に入っただけだ。…手出しは無用だ」
『わかりました』

カサンドラの駆動音が遠ざかっていく。
コアブロックを出ると、カサンドラは必ず話しかけてくる。
僕が視界に入っていない時間がとても不安なのかもしれない。

「…いや、そんな訳はないか」

カサンドラ達AIは感情を持たない。
持ったとしても、それは自分たちの行動とは切り離されたもので、俯瞰する視点でのみ適応されるものだ。
不安などと、そんな邪魔な感情は持たないだろう。

「………ん?」

ふと、視線を惑星の映像に戻す。
惑星とセンサーの間に、何が黒いものが映っている。
ズームしてみると、何かの船の様だった。
明らかに、あの星の技術ではない。

『如何されましたか、エリアス様!?』
「いや、何でもない…ただ、アレが目障りだと思っただけだ。宝石についた埃みたいで」

僕はつい、そんな事を言ってしまった。
心労が溜まっていたのもあって、その発言が何を引き起こすかも考えていなかったのだ。

『早急に処理いたします』

視線でも変えてくれるのだろうか。
僕はそんな都合のいい想像をしていた。
だが…それはあまりにも、都合の良すぎる妄想であった。
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